私のパソコンの周辺には、最近読んだマンガやら小説やらが雑然と積み上げられています。そして作業の合間に一度読んだ本をまたパラパラと見たりするのですが、その中で一番多く手にとるものが吾妻ひでおさんの【失踪日記】です。
失踪日記は、どういうわけか何度読んでもあきないんですよね。
一冊で何度も楽しめるお得な本?だと思います。
なぜあきないか...
たぶん、自殺未遂(山の斜面を利用した首吊り)をしたり、ホームレスになった
り、アル中になりオヤジ狩りにあったあげく精神病院に入院という悲惨な体験を
ギャグマンガのオブラートに包んでリアルさを和らげた結果、スルメのように
噛めば噛むほど味が出る作品になったのでは?
しかし吾妻さんはからだ丈夫ですよね。
11月の寒風に吹きさらされながら、むしろと穴だらけのシートにくるまって
寝ていたら、雨がザーザー降ってきたりして...うひょー寒そう!
不審者として警察に逮捕され、奥さんが迎えにこられてからのことはマンガに
描かれていませんが、きっとギャグにくるむことも不可能だったのでしょうね。
さて、失踪日記に引き続き【うつうつひでお日記】を読みました(だいぶ前
の話しですが)。
こちらは失踪日記のように波乱万丈な内容ではありません。
『食って、読書して、寝て、タバコ吸って、食って、ウンコして、寝て、食って
寝た。』という内容です。
でも、その地味な日常をさすがは吾妻さん、上手に描いてます。
お得意のかわいい女の子の画をところどころにちりばめながら、突如バーベルで
筋トレを始め『何になりたいんだ俺?』とつぶやく吾妻氏。
それから私が印象的だったのは、吾妻さんが他の漫画家の画をさかんに模写していることです。
普通は?若いころおもしろいマンガに出合って、自分もこういうマンガを描きた
いと思ったときに模写したりしますが、ある程度自分のタッチが固まってくると
模写を卒業するというパターンが多いと思うのですが。
模写はべつに若いときの専売特許ではないわけですし、常に新しい発見をもたら
してくれる手っ取り早い作業だとあらためて思い出させてもらった次第です。
続いて日記三部作の第三弾【逃亡日記】について。
こちらはマンガの部分は『受賞する私』と『あとがきな私』の計13ページだけで、
あとは失踪時代やアル中時代などについて吾妻さんがインタビュー形式で答えて
いくものです。
裏話や制作秘話が好きな私にとっては興味深い内容でした。吾妻さんが最も影響を受けた手塚治虫さんや石の森章太郎さんのことや、漫画派対劇画派の対立について等おもしろかったです。
以上三部作を読んだ結果、私が知っている漫画家の中で生い立ち~週刊誌時代~失踪~アル中病棟~復活までその人生を一番よく知っている漫画家が吾妻ひでおさんということになりました。