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動画・音声・インタラクティブ性などで織り成す新スタイルのマンガ制作日記

吾妻ひでお 日記三部作

2007-04-29 23:55:44 | Weblog

私のパソコンの周辺には、最近読んだマンガやら小説やらが雑然と積み上げられています。そして作業の合間に一度読んだ本をまたパラパラと見たりするのですが、その中で一番多く手にとるものが吾妻ひでおさんの【失踪日記】です。

失踪日記は、どういうわけか何度読んでもあきないんですよね。
一冊で何度も楽しめるお得な本?だと思います。

なぜあきないか...

たぶん、自殺未遂(山の斜面を利用した首吊り)をしたり、ホームレスになった
り、アル中になりオヤジ狩りにあったあげく精神病院に入院という悲惨な体験を
ギャグマンガのオブラートに包んでリアルさを和らげた結果、スルメのように
噛めば噛むほど味が出る作品になったのでは?

しかし吾妻さんはからだ丈夫ですよね。
11月の寒風に吹きさらされながら、むしろと穴だらけのシートにくるまって
寝ていたら、雨がザーザー降ってきたりして...うひょー寒そう!

不審者として警察に逮捕され、奥さんが迎えにこられてからのことはマンガに
描かれていませんが、きっとギャグにくるむことも不可能だったのでしょうね。

さて、失踪日記に引き続き【うつうつひでお日記】を読みました(だいぶ前
の話しですが)。

こちらは失踪日記のように波乱万丈な内容ではありません。
『食って、読書して、寝て、タバコ吸って、食って、ウンコして、寝て、食って
寝た。』という内容です。

でも、その地味な日常をさすがは吾妻さん、上手に描いてます。
お得意のかわいい女の子の画をところどころにちりばめながら、突如バーベルで
筋トレを始め『何になりたいんだ俺?』とつぶやく吾妻氏。

それから私が印象的だったのは、吾妻さんが他の漫画家の画をさかんに模写していることです。

普通は?若いころおもしろいマンガに出合って、自分もこういうマンガを描きた
いと思ったときに模写したりしますが、ある程度自分のタッチが固まってくると
模写を卒業するというパターンが多いと思うのですが。

模写はべつに若いときの専売特許ではないわけですし、常に新しい発見をもたら
してくれる手っ取り早い作業だとあらためて思い出させてもらった次第です。

続いて日記三部作の第三弾【逃亡日記】について。

こちらはマンガの部分は『受賞する私』と『あとがきな私』の計13ページだけで、
あとは失踪時代やアル中時代などについて吾妻さんがインタビュー形式で答えて
いくものです。

裏話や制作秘話が好きな私にとっては興味深い内容でした。吾妻さんが最も影響を受けた手塚治虫さんや石の森章太郎さんのことや、漫画派対劇画派の対立について等おもしろかったです。

以上三部作を読んだ結果、私が知っている漫画家の中で生い立ち~週刊誌時代~失踪~アル中病棟~復活までその人生を一番よく知っている漫画家が吾妻ひでおさんということになりました。


【時空マジシャン】オープニング制作中1

2007-04-23 00:03:52 | Weblog

なんと今年も早や三分の一が過ぎようとしています。
今年はスタートダッシュでWebcomicをドドドッと進めようと思っていたのに...

【時空マジシャン】のオープニングムービーを制作中でしたが、その後制作時間
が思うようにとれず制作日記であるこのブログもぽつりぽつりとしか書けなく
なってしまいました。

オープニングムービーは中途半端なものを公開しても見苦しいので、完成して
からと思っていましたが、このままだと夏になってしまいそうな雰囲気なので
今日はとりあえず出来ているところまでアップロードしました。

占い師がタロットカードをシャッフルしているムービーです。

ただ延々とシャッフルしているだけなのであまりおもしろくありませんが、この
ようなかたちでこまめに途中経過をお見せしていこうと思います。

ループさせているのでいつまでたっても終わりません。
適当なところで別のページへ行くなり切り上げてください。

こうやってループを見ているとフリッカー(ちらつき)が目立ちますね。

先ほどアルファー値などを調節してみたり、色々試してみたのですがどうもこれ
以上はちらつきが消えません。

手の画像(腕も含む)がけっこうでかいサイズなので、しかも両手なのでこのよ
うな動きをさせるとなかなか難しいようです。

こんど時間があるときフレーム数をダーッと増やして、フレームレートも倍に
してみたりためしてみたいと思います。

時間をみつけてはタロットの画像を作ったり、シャッフルさせてみたりと
コツコツやってはいるのですが思うように進みません。

でもちょっとひまがあるとマンガ読んでたりするんですけどね...


ブラックジャックによろしく

2007-04-12 23:13:19 | Weblog

それにしても上の画は...いくら医療ものだからってナースと注射器?
それしか思い浮かばないんすか?

だって点滴装置や心電図計などのCGではシリアスすぎるし、元祖ブラックジャッ
クらしき人と齋藤先生(ブラックジャックによろしくの主人公)らしき人が
向かい合っている画にしようかとも思ったんですが、大変そうなので断念。

ちなみに注射器はZippoさん、髪はKozaburoさんのモデリングデータを使わせていただきました。

というわけで今日は、ブラックジャックによろしく(佐藤秀峰作)というヘビーな劇画を取り上げてみました。

なぜヘビーかというとこの作品は読み手もかなりの気力・体力をもって向かい合
わなければならない内容ですよね。

私の感想は『すごい!』の一言です。
よくもまあここまで患者の身になり、医師の立場になり自分を追い込んで描ける
ものだなあ、と思います。

どうすればここまで命がけの最前線(患者にとっても治療する側にとっても)に
肉薄できるのか...と不思議にさえ思うわけです。
普通は自分や家族など大切な人が重大な病気になって初めて、その世界にいやおう無くどっぷりつかっていくことになるのではないでしょうか...

ちょっとやそっとの取材ではすぐに底が知れてしまうでしょうし、実際にその
病気で苦しんでいる人々にとっては読むに堪えない浅い作品になってしまう
はずです。

たとえば私が何かの病気で入院した場合、私なりの入院日記のようなものは描け
ると思います。(おもしろいかどうかは別ですが)
しかしそれはあくまでも自分自身が体験した病気と治療の範囲の話だけです...
...たぶん。

でもこのブラックジャックによろしくの場合は次々に大変な題材を取り上げてその病気に肉薄していくわけですから、ちょっと考えただけでも並大抵のことではありません。
作者の佐藤秀峰氏の消耗ぶりは大変なものだと想像がつきます...

よくテレビ番組で心臓の大手術や癌の最先端治療など最前線で活躍するカリスマ
医師を取り上げ、そのゴッドハンドぶりを紹介しているドキュメンタリーが
ありますが、あの医師たちは自分の生活をなげうって患者の治療に取り組んでいるように思えます。
というかそうでなければ不可能なくらい壮絶な日々ですよね。

佐藤秀峰氏もその医師たちと同じような使命感に突き動かされて、このブラック
ジャックによろしくを描いているのでは...(あくまでも私の想像ですが)

このブラックジャックによろしくを読んで齋藤医師のような医者になりたいと
いう若手の医師や医学部の学生が増えるのではないか...増えてほしい。

そんなことを考えさせられる作品だと思います。


劇画バガボンド

2007-04-03 22:29:33 | Weblog

3月2日のブログで映画バガボンドについて書いたので、今日は劇画バガボンドのことを書こうかと思います。いわずと知れた井上雄彦氏の人気劇画ですね。

私は雑誌ではなくて単行本でバガボンドを読んでます(いや~、いつのまにか
マンガ雑誌派から単行本派になっちゃいました)

私の机の横に雑然と積み上げられた本の山にバガボンドの20巻目が見えてまして、その帯に『俊速の3800万部突破』と書いてあります。
最新巻の25巻の帯には累計部数のことは書いてないですが、いったいどこまで
伸びるんでしょうか...その人気の秘密は?

もちろん画は上手いし、武蔵をはじめ小次郎や吉岡清十郎・伝七郎兄弟等の
キャラクターも魅力的に描かれています。でもそれ以上に主人公以外の登場人物
つまり脇役の人生の描写に井上雄彦マンガの特徴と人気の秘密がある!
と私は思ってます。

昔のマンガは脇役の人生にあまりスポットライトは当てませんでしたよね。

特に勧善懲悪ものが主流だった時代は、いきなり強くてかっこ良い正義の味方の
ヒーローが何が何でもとにかく悪いギャング団や悪代官をやっつけるという物語
が多かったのではないでしょうか。
つまり悪役には人生もへったくれもなくただ悪ければよかったわけです。
正義は勝つということが言いたかったわけですから。

次に、スポーツ根性ものが受ける時代になると登場するやいなや最初からスーパ
ーマンという主人公ではなく、血のにじむような努力の結果ライバルを倒すとい
う努力型ヒーローが台頭してきます。
ライバルや脇役の人生もそれなりに描かれていたと思いますが、あくまでも主人
公をおびやかす存在としてその強さや怖さを表現したいがためのものでした。

そしていよいよ主人公だけでなくライバルや脇役の人生にも踏み込んで、その
生き様を描くことにより物語全体に深みを与える時代がやってきました。

以上、私Shigの独断と偏見による異様に単純化した漫画史でした。

井上雄彦という漫画家は脇役の人生に踏み込んで描く描き方が半端ではないですよね。

佐々木小次郎は武蔵の最大のライバルですから、その人物像をしっかりと描く
必要があるわけですが、まるで主人公を武蔵から小次郎に切り替えたかのごとく
幼少期から青年期までをじっくりとかなり長い間に渡って描き続けたのには驚か
されました。

そして小次郎の前に立ちふさがった強敵、猪谷巨雲の人物像もしっかりと描かれ
ていたし、さらに小次郎に一撃で倒される間垣市三の子供時代のエピソードまで
とり上げてその人生に踏み込んでいました。

このように主人公とライバルそれぞれの人生を読者に見せて十分に感情移入を
させたうえで、命がけの激突が生み出す感動こそ井上雄彦マンガの魅力なのではないでしょうか。

それにしても吉岡清十郎の斬られっぷりはすごかった...