Webcomic.tv

動画・音声・インタラクティブ性などで織り成す新スタイルのマンガ制作日記

アイデンティティの目覚め(iBooks Author制作日記33)

2013-05-27 19:46:01 | iPad版制作日記

雄作:「よし!」

ナナと雄作(同時に):「かんぺき!!」

上の画像で、ナナと雄作の父娘が同時に「かんぺき!!」と言ってますが、何が完璧なんでしょう!? ナナが作ったかぼちゃパンに雄作がアドバイスして、完璧なかぼちゃパンのレシピができました。

それにしても先ほどまであんなに怒っていた父・雄作。いつのまにかナナのペースに乗せられたか?

iPad版電子コミック【ナナのかぼちゃパン】の制作は、じわじわと進んでいます。国会の牛歩戦術ならぬ、牛歩制作。

さて進捗状況はこれくらいにして......って、こんだけかい(^ω^;)。

実は、今日は『あれを書こう!』というネタが頭にありまして。最近、グローバル化とアイデンティティというような内容の記事をときどき目にします。

自分にとってのアイデンティティを考えると必ずある出来事を想い出すんですが、それはニューヨークでのある体験です。

ニューヨークに行ったときのことは、2年くらい前に書いた【iPad版:作戦変更です】というブログにチラッと出てきます。(今、その時のブログをさがし出すのに20分もかかってしまいました。そろそろデータベースで記事を管理しないと...)

そのブログの続きです。数日タイムズスクエア周辺をうろついた後、グリニッジビレッジ近辺のホテルに移り、ソーホーやイーストビレッジを散策しました。

グリニッジビレッジのホテルはちょっと宿代が高かったんですけど、居心地が良かったのでそのまま滞在してたらだんだん懐がさみしくなってきて(当たり前ですよね)、帰りのチケット代を別にするとあと何日滞在できるかという状況。

でもまだまだニューヨークを味わいたかったので、日本料理店で短期間アルバイトすることにしました。ホール係で1ヶ月程働いて、ちょっと懐が暖かくなったのでホッと一息です。

あの当時は仕事を変わる時期で、日本に帰って仕事を始めたら次はいつニューヨークに来れるかなんて分からなかったので、出来る限り滞在するつもりでしたね。

ニューヨークの散策が一段落すると、次はクリエイティブ・ワークがしたくなりました。散策中に路上で針金細工のようなものや似顔絵などを売っているのを見て、自分もやってみようというわけです。

そういえば地下鉄に乗っているとき、ある駅で地下鉄専門(?)のストリート・ミュージシャンが乗り込んできて、いきなりギターをかき鳴らしながら一曲歌って、次の駅に着くや否や帽子を差し出して乗客に小銭を要求したんだけど誰も投げ入れなかったんですよね。

そのミュージシャンは、捨て台詞を残してドアが閉まる寸前に飛び出して行きましたけど、あまりにも歌も演奏もおそまつでした。

でもそんな体験さえも自分にとってはニューヨークらしさが感じられて、刺激を受けたものです。

たしか紀伊国屋書店で購入したんだと思うんですが、色紙のような厚手の紙と、墨汁だったか黒インクだったかそれとも水彩絵の具の黒だったか定かではありませんが用意して、水墨画風の絵を描きました。

今だったらたぶんマンガを浮世絵風にデザインして描くかもしれません。でもそのときはほとんど迷うことなく墨汁か黒絵の具で水墨画風の絵を描きました。そして朱色で落款も押して。

自分の姿、つまり和風の醤油顔の男が、水墨画風絵画を路上で並べて売っている姿を斜め上空から俯瞰して眺めていたのかもしれません。今だったら浮世絵風タッチを強調してより日本人を主張していたでしょうけど。

今思えば、ニューヨークで日本人のアイデンティティを無意識のうちに発揮し始めた瞬間でした。

今日のブログではまとまりそうも無いので、後半は次回に。





3DCGとペンタブの融合(iBooks Author制作日記32)

2013-05-17 19:43:06 | iPad版制作日記

前回のストーリーボードに沿って本編を制作中です。

雄作の「お仕置きタイム」を無事切り抜けた(?)ナナ。ナナの秘密基地と化したロフトで、父と娘がかぼちゃパンをより美味しくするための作戦会議をしているシーン。

あとはコツコツ作るだけで、真新しいテクニックとか知ってると得するTipsも特にありません。

以前は使いこなしてないというか使う機会が無かったペンタブのIntuosは、現在では完全に制作工程に組み入れられているので無くてはならない戦力になっています。

自分は基本的に3DCGベースで画像を作るので、手描き派の人のようにはIntuosを活用していませんでした。ではなぜIntuosを購入したか? IntuosとComicStudioを制作に導入すれば、間違いなく自分の電子コミック制作にプラスになる、『導入して良かった!』となるに決まっていると信じて疑わなかったんですよね。

ところがあにはからんや予想外の結果。制作のプラスになる、という以前に自分の制作工程に入り込む余地がありませんでした。

ComicStudioを起動すると、マンガの原稿用紙を模した画面が表れます。そこにペンタブで下描きやペン入れをしていけば、マンガ原稿が完成します。ペンで線がうまく引けなくて失敗しても何度でもやり直しできるし、スクリーントーンも使い放題です。

ペンタブの性能も筆圧を感知して抑揚をつけられるし、ついにここまできたかというぐらいに確かにすばらしいんですけど、あくまでも紙とペンで描くマンガ原稿をPC上で出来るというものなんですね。

自分が描くマルチメディアを駆使して構築していくスタイルのマンガには、うまく取り込めませんでした。

もちろんそれは導入以前に分かっていたことです。でもComicStudioは、デジタルコミック制作用の新しいツール。一方、私が作りたい電子コミックもデジタルならではの新しいスタイルのもの。両者の間には当然いろいろと共通点や刺激を受ける要素があるだろうと考えていました。

でもそうじゃなかったんですね( ̄∇ ̄;)。どの作業にどのように使いたい、ということを明確にして導入すべきでした。値段も安いものじゃなかったし。

その後も何とかして自分の電子コミック制作の工程に取り込みたいとたびたびトライしたんですが、ちょっと使っては放置 → 埃が溜まるという状況が続きました。

ところが【ナナのかぼちゃパン】の制作をきっかけにIntuosの出番がやってきました。

【ナナのかぼちゃパン】は素朴なストーリーなので、ツルッとした3DCGの質感は合わないと思い、セル画調の質感が良いんじゃないかと試行錯誤。その結果、上のようなタッチの画にたどりつきました。

普通のフォトリアルなレンダリング画像に比べると、キャラやストーリーの表現をしやすい強い画になったと思います。

3DCGの画像は、元となるモデリングデータのポーズを変えたり、表情などのパラメータを設定して画を生成します。一方手描きの画はその都度白紙にゼロから描いていくわけです。やっぱりゼロから描画したもののほうが、新たな多くの情報を含んでいるんでしょうね。

3DCGの画像はポーズを変えて新たにレンダリングしても、情報量が少ないなと感じることがしばしばあって、なんとかしたいと思ってました。

ところが今回セル画調になって、その問題が解決した、とまではいきませんがかなり改善することができたようです。

まず、3DCGで普通にフォトリアルにレンダリングした画像をClipStudioに読み込みます。そしてペンタブで手描きでその画像を補正・修正。つまりここでついにIntuosの出番がきました。

3DCG画像を手描きのペンタブで修正するなんて変な感じですが、多少きたなくなってもかまわないのでガシガシ描き直します。ここで3DCGの情報に手描きの情報が加わって豊富な情報量になるわけです。

さてそのきれいな3DCG画像にきれいじゃない手描きが加わった変な画像を、フォトショップなどで開いてセル画調にレタッチします。この段階で手描きによる手垢もなくなってしまい、デジタル演算的にきれいに整列したピクセルに手描きの味が加わって自分好みの画が完成です。

というわけで現在のセル画調のスタイルは、手数はかかるけど【ナナのかぼちゃパン】にマッチしたタッチになったし、制作工程にペンタブを加えることも出来ました。

一枚のタブローを描くのならばいくら手間がかかっても良いのですが、ストーリーをアニメや音声を使って描き、さらにはインタラクティブな仕掛けもしたいのであれば、この手法は厳しいですね。

改善せねば...。




メイキングの魅力(iBooks Author制作日記31)

2013-05-09 17:58:04 | iPad版制作日記

さあ、やっとストーリーボードの11ページ目です。

前ページの内容量が他ページの2~3ページ分のサイズに膨らんでしまい、えらく時間がかかってしまいました。内容的に途中で分割しにくかったんですよね。

アニメもナナや雄作の微妙な表情の変化のような地味なものばかりで、ちょっとストレスが溜まり気味です。ジャンプして手裏剣を投げるようなシーンは作っていて『いや~、作った作った。満足じゃ。』という感じでスカッとするんですけどね(* ̄∇ ̄*)b。でもそんなシーンは絶対出てこないし。

各ページによって、長さというか内容量に差ができるのもまぁ仕方ないかと...。当初は同じくらいのサイズに揃えるつもりでしたけど、メリハリがあるほうがおもしろいんじゃないかと都合よく解釈してます。

ノートに雑に描いてあるスケッチを少しきれいに描き直したのが、上の画像。ストーリーボードといっても、iPadを縦にしたときに表示される補足コンテンツとして読者にお見せする画なのでマンガのネームほどラフではいけません。

といってペン入れするほどカッチリ描き込んでしまうと、ストーリーボードならではのメイキングの雰囲気が飛んでしまうので、適度なラフさが残っているところで止めます。

自分はメイキング(制作過程や舞台裏エピソードなど)が好きなので、iPad縦向き時にストーリーボードが表示されることに違和感は無いし、『おっ、なるほど!...縦向きにすると制作過程のコンテンツが観られるのか』と思うわけです。

一方、メイキングに興味がない人にとっては、最終的な完成品だけ観たいわけで、制作過程の中途半端なものは必要ないしじゃまなだけですよね。

う~ん、たしかに雑できれいじゃないものや四苦八苦してる舞台裏よりも、きれいに磨き上げられて完成された自信作の方が一般的に魅力的であるには違いありません。

でもきれいに塗装して散らかっていた道具などを片付けてしまうと、見たかったいろいろな情報も隠蔽されてしまいます。

すばらしく完成されたシーンも、最初の試作時には「ええっ、最初はこんな感じだったのか...」とその落差にちょっと驚くかもしれません。でもそこには発想の原点などがさらけだされていて、作者の制作時の思考まで感じとれることがあります。メイキングの魅力はそんなところにあるんじゃないでしょうか。

いつも一分の隙も無く完璧にメイクしてびしっときまったファッションの女性が、すっぴんにラフな格好で油断しているときに出くわすと、けっこう感動したりします。ショックを受けるときもあるけど。

ちょっと例えが違ったかな(^ω^;)。でも着飾った完成姿ではなく、素材が見える舞台裏という意味では違ってませんよね。

最近YouTubeでオールディーズ・ミュージックをよく聴いてます。ビートルズのデモ・バージョンなども聴くことができるんですが、バンドの各パートがまだ揃ってない状態での試し録りみたいな素朴なサウンドが良いんですよ~♪。

ミキシングで各トラックのバランスをとってない状態なので、完成バージョンでは隠れてしまう各素材がよく見えて、『こっちの方がいいじゃん。』と思うことさえあるほどです。

メイキング好きにとっては良い時代になったものです。

「iBooks Author」は、iPad横向きで観るコンテンツが基本で、縦向き時は補足的なコンテンツを表示するようになっているようです。なので今回の【ナナのかぼちゃパン】は、縦向き時にストーリーボードを表示するようにしましたが、次回作は別のアイデアがあればそれを試してみるかもしれません。

雄作:「ちょっと味が単調だな...メースかなんか加えて味に深みを出すか」

ナナ:「なるほど! さすがパパ!」

前ページまでの緊張感はどこへやら。親子で和やかな雰囲気。

はたして父・雄作のおしおきはナナに通じたのでしょうか?

このページは、コマ表示しないで全画面表示だけで試してみようと思ってます。