そろそろロスタイムに入ろうかという終盤、チェルシーの選手たちは気落ちしているように見えた。
まったく、思うような攻撃の形が作れず、リバプールを脅かすことができなかったからだ。リバプールにとっては思惑通りの展開だったろう。
前半で先制し、追加点は奪えなかったものの、アウェーゴールもない。リスクを犯し、何が何でも追加点を取りに行く、という戦い方はしなかった。スタンフォードブリッジでは、勝てなくても引き分けで決勝に進めるのだから。
あと数分で第一幕が終わり、リバプール有利が決まる寸前に、それは起こった。
左サイド深く、攻め込まれ、ボールが中に放りこまれる。
ゴール前は2対2。低いボールがーセに向かって飛んできた。
リーセはヘッドで対応しようと低い体勢をとった。チェルシーの選手が詰めたが、届きそうにない。
しかし、なんと、ボールはゴールネットに突き刺さった。リーセのヘッドしたボールだ。なんということだろう。
よりによってリーセに対して、フットボールの神様は残酷な仕打ちをする。負傷したファビオアウレリオに手で触れ、慰めてからピッチに入るという仕草が、リーセの人柄を物語っていた。
本当はファビオアウレリオとのローテーションで欲求不満ぎみだろうに、フォアザチームに徹しているリーセ。選手たちが、かわるがわるリーセの肩を叩きにくる。誰もリーセを責める気になどなれない。でも落胆も隠せない。
何というドラマだろう。
[リバプール×チェルシー 1-1 CL準決勝-1]