ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 40ページ目 女性ソムリエとの出会い 

2012-01-18 21:08:12 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【40ページ】


「まだ新米なので、先輩のソムリエに早く追いつきたいと思って!」

「熱心に勉強するのも大切ですが、今日はワインを楽しんで飲みませんか?」

「はい、そうします!」

良子は、にっこり笑って答えた。

「珍しいスロヴェニアのワインを飲んでいたところですが、一杯いかかですか?」

「スロヴェニアのワイン? 初めてだわ!」

「私も今日初めて飲んだのです。マスター、田辺さんにスロヴェニアのワインを!」

マスターは、ワイングラスを取り出し、和音のスロヴァニアのボトルから注いだ。

「白ワイン用の土着ブドウ品種のレブラです」

良子は、グラスを手に取り、目を閉じ香りを嗅いだ。

「わっ、ミカン畑やお花畑のイメージが交互に浮かぶ!」

香りを嗅いだ後、良子はレブラを一口含んだ。

「ボルーム感のある果実味に驚きだわ!」

彼女は、さらに一口飲んだ。

「でもこの果実味をしっかりした酸味が押さえ調和のとれたワインに仕上がり、

白にしては、ボリューム感のある味わいね。」

良子は、いつものソムリエのくせが出た。

和音は、良子のテイスティングの様子をにこやかに見ていた。

「あら、今日はワインを楽しむと言ったばかりなのに・・・」

「マスター、田辺さんがワインを楽しみたいと言っているよ!あのワインを

飲ませてあげて」

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 39ページ目 女性ソムリエとの出会い

2012-01-16 20:45:45 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【39ページ】


「ええ」

良子が答えると、マスターは和音の隣の席を手の平で示した。

男性の隣の席を勧められて、良子は戸惑った。

それに気づいたマスターは、良子にそっと耳打ちした。

「彼は、フランスの有名なシャトーのオーナー達と親交があるのですよ!

面白い話も聞けると思います。」

「ええ、わかったわ!」


 良子は和音に近づき、声をかけた。

「隣の席にお邪魔してもいいかしら?」

「美人でワイン好きの女性の申し出を断る人はいないでしょう」

和音は笑いながら返事をした。

「どうぞ!」

「田辺と申します」

良子は自己紹介をすると、和音の隣に座った。

「和音です。よろしく!」

「和音さん? どのような字ですか?」

「和楽器の和に音楽の音です。先祖は、紀州の殿様に使える和楽器奏者

だったようです。田辺さんはソムリエだそうですね?」

「はい、フレンチレストランのマリーナヴィレッジでソムリエをやっています。」

「いつも奥の席で、熱心にワインのテイスティングをしていますね?」

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 38ページ目 女性ソムリエとの出会い

2012-01-15 20:05:01 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【38ページ】


 田辺 良子は、店内のオオカミグッズを眺めながら、

「またグッズの種類が増えたみたい」と呟いた。

そして奥のショットバーへのドアを開いた。

「美紀さん、こんばんわ!」

「今夜は、早いのね!」

「ええ、早番だったの」

良子は、美紀との挨拶を済ませると、マスターに話しかけた。

「マスター、こんばんわ!」

「やあ、いらっしゃい!」

マスターは、ワインのラベルを取り出し、良子に手渡した。

「これ、昨夜テイスティングしたワインのラベル!」

「いつもすみません」

良子は、マスターに頭を下げた。

「マスターのお陰で、テイスティングノートが充実してきたわ!」

良子は、バッグからラベル剥がしのシートを取り出し、

「お手数ですが、又ラベルの取り置きをお願いします。」

「わかった!」

マスターは、少し申し訳なさそうな顔をしながら、

「今夜は、予約の団体が入っていて、いつもの奥のテーブル席が空いてないのです。

カウンター席でもいいですか?」

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 37ページ目 女性ソムリエとの出会い

2012-01-14 23:15:55 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【37ページ】

「赤と白どちらにしますか?」

「マスターのお奨めは?」

「スロヴェニアの年間ワイン総生産量の内約65%は白ワインが占めています。

白ワイン用の土着品種のレブラはいかかですか?」

「レブラ?」

「はい、軽やかな柑橘系の香りや花の香りを楽しめます。酸味はしっかりしてますが、

軽快なワインになるそうです。」

マスターは、土着品種レブラから造られるワインの特徴を説明した。

そして、取り出して和音に見せたのは、『バグエリー・レブラ2008年』の上級ワイン

であった。

「それをボトルでいただくよ」

マスターの坂場は、バグエリー・レブラ2008年を抜栓し、グラスに注いだ。

「どうぞ!」

「おいしいワインだ!マスターのレブラの説明と違って、白にしてはボリューム感

のある味わいだね?」

「レブラの中でも上級ワインですから」


 モニターテレビの上についているライトが光った!

店内に人が入って来ると、センサーで反応するのであった。

モニターテレビを確認すると、田辺 良子が映っていた。

「良子さんは、早番だったのね」美紀が胸の中で言った。



※マスターの土着品種レブラの特徴の説明は、My Wine Club2012年

春号の記事を参考にさせていただきました。

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 36ページ目 女性ソムリエとの出会い

2012-01-13 22:31:29 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【36ページ】


 「和さん、いらっしゃい!」マスターの坂場が挨拶した。

「やあ!」

和音が返事をしながら、テーブル席を見ると、予約席の立て札が置かれていた。

「今日は、予約客が多いみたいだね? 新しい看板の効果?」

「いえ、常連の丸山さんが仲間とのワイン会だそうです。」


 和音は、いつものカウンターの席に座ると、紙袋からワインを取り出しマスターに

手渡した。

「この店の常連客に飲ませてあげて!」

「これは、シャトー・ムートン・ロートシルト2,003年ですね?」

このワインのラベルは、貴族風の男性が椅子に座っているデザインだった。

「2003年は、今では入手困難になっていると聞きますよ。ほんとにいいの?」

「いいよ! 最初にいつもテイスティングしながらワインの勉強している女性のソムリエ

に飲ませてあげて!」

「はい、そうします。」

「今日のお奨めのワインは?」

「1991年に誕生したスロヴェニアのワインはいかがですか?」

「珍しいワインだね?」

「品質を守るために大量生産せず、大半が自国消費のため、世界市場にあまり

出回らない希少なワインです。」

マスターは、自慢げに話した。