ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 31ページ目 若手天才ソムリエシュヴァリエ来日  

2012-01-08 20:07:36 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【31ページ】


 和音もメドック地区のワインの格付けの話に加わった。

「しかし、このランクづけは大騒動になり、波乱ぶくみだった。」

ルヴォル大使が言うと、シュヴァリエが頷いた。

「何を根拠に格付けするのか難しかったでしょう。」

「当時の売買価格や、シャトーの名声などで決めたらしいが当然不満を抱く人も

出てくる。そんな中、シャトー・ムートン・ロートシルトは、メドックの格付けで

二級にされてしまった。」

「その時の有名な言葉が『されど我はムートンなり』ですね?」和音が言うと、

「そう、ムートンは、格付けの評価に左右されないという信念だ!」

ルヴォル大使は、顎に手をやり、思い出すように考えた。

「シャトー・ムートン・ロートシルトは、なんと118年後の1973年に一級への

昇格が認められるのだが、その時の名文句が『されどムートンは変わらず』だ!」


 シュヴァリエは、判ったという顔をした。

「私がシャトー・ムートン・ロートシルトが一番好きな訳がわかったかね?」

ルヴォル大使は、シュヴァリエに向かって言った。

「はい、アートなラベルの美しさではなく、ムートンの領主の信念や気概に対して

評価されているのですね?」

「そうだ!」

ルヴォル大使は、シャトー・ムートン・ロートシルトが空になり、料理もなくなった

のを確認した。


 「今夜は、和さんとシュヴァリエのお陰で本当に楽しいワイン会になった!

ありがとう!」ルヴォル大使は二人に礼を言った。