ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき ファースト(改訂) 29ページ目 若手天才ソムリエシュヴァリエ来日

2012-01-06 23:18:40 | ワインバーでのひととき1改訂四話 完
【29ページ】


 「ルヴォル大使、メドック地区格付け1級には、五大シャトーの筆頭と言われる

シャトー・ラフィット・ロートシルトや男性的でスケールの大きな

シャトー・ラトゥールがあり、」

和音が大使に話しかけた後、シュヴァリエが話を続けた。

「そして文豪ヘミングウェイが愛したシャトー・マルゴーやメドック地区と

クラーヴ地区、このふたつの地区の格付けを持っているシャトー・オー・ブリオンも

あります。それなのになぜシャトー・ムートン・ロートシルトが一番のお気に入り

なのですか?」


 「なぜだと思う?」

ルヴォル大使は、逆にシュヴァリエに質問した。

「名だたる芸術家が彩る美しい絵のラベルが魅力的だからですか?」

「いや!」ルヴォル大使は、否定した。

「私が尊敬するのは、気概のある人物だ!

大使の仕事では、例え本国の命令でも自分の信念に反する時は、拒否しなければ

ならない時がある!」


「日本人でそんな大使がいましたよ!」

和音が言うと、

「杉原氏のことだね?私の最も尊敬する外交官のひとりだ!」

「杉原氏ってどのような方ですか?」

初めてその名前を聞いたシュヴァリエは、大使に訊ねた。