乗泉寺でご奉公させていただいてたころは、首都圏の各地の受持をいただきました。
学生時代の思い出の場所などが担当地区になることもよくありました。
その一つが日野市の七生です。
なつかしい道。路地を入って二股を右に進むと、思い出の場所がある。
平成13年。13年ぶりに訪れたその二股を、この時は左に進んでお教化のご奉公に行きました。
平成18年。こんどは恩師のご親戚を訪ねて、またまた七生を訪れました。
そして、この時の訪問先もまた、なつかしの路地でした。
「この路地にはご縁がある。」そう思いました。
20歳の記憶が蘇ります。なつかしい匂いがします。
恩師のご親戚は、この路地の二股を左に進んで、さらに急勾配を駆け上がった坂の上にお住まいです。
この辺りはよく映画などのロケ地になるそうで、なるほど、絶景がひろがっています。
坂の上から反対側に降りようとすれば途中、高幡の団地群や帝京大学を通り過ぎ、野猿街道に至ります。
野猿街道は、小高い丘陵と丘陵の谷間を走る、この地域の主要道路の一つです。
七生の側から降りれば、右折して多摩センターや南大沢へ。
左折すると多摩川にかかる四谷橋を渡って、中央道の、国立府中インター、国道20号に至ります。
野猿街道を突っ切ると上り坂になり、落川の丘陵に乗泉寺の多摩親会場があります。
平成13年、ボクはこの多摩親会場の担当をさせていただきました。
そしてこの年は日慶上人ご遷化の年となり、ボクの、乗泉寺ご奉公の最終年度となりました。
平成14年から常住寺に帰山し、現在までご奉公。
そして先月、ご縁あってふたたび、この七生の地を訪れました。
町の景色は全くかわってしまい、27年の歳月が過ぎたことを感じさせられました。
かって知ったる路地でさえ、道を忘れており、入り組んだ岐路の連続では危うく迷子になるようでした。
今回は、大奥様の弟、故・小山光久氏のご家内が亡くなり、葬儀のあとで喪主のご自宅をたずねたのです。
なつかしさのあまり、クルマで近所を流していてたどり着いたのが、まっすぐにのびた、みごとな坂道でした。
中学生の時に夢中になってみた映画のロケ地に似ています。おそらく同じ地域なのでしょう。
目を閉じると、学生時代のたくさんの思い出が蘇ります。ご縁のある土地。なつかしく切ない香り。
時空を超えた心地です。
でも、深遠な因縁を感じて感傷に浸りながら頭に浮かぶことと言えば、
「さて、明日もがんばるか」とご奉公のこと、そして、家族の顔でした。
明日に向かって力つよく歩いていこう。下り坂をいっきに突っ走るかのように。つよく。そして早く。
思い出から元気をもらいました。