ある日、明朝の寒参詣準備を終えて、夕方うたたねをしていた。
そこへ一番下のチビがやってきて、目を覚ませとばかりに話しかけてくる。
「これ、もんちゃん!!」 しかめっ面で、何やら訴えてくる。
「なあに?ゆかちゃんどうしたの?」
「これ!もんちゃんがおとうさんにわたしてって!!」
「もんちゃん?」
「そう!もんちゃん!!」
見ると【ウチの布教区で所持しているICレコーダー】を、手に握っている。
東京中央布教区の寒参詣交流で拝聴するための激励を、ここに録音して下さいと
板橋の御導師に渡したモノである。
「これ?お導師が自分でもんちゃんって言ったの?」
「そう!もんちゃん!!」
覚えた名前を忘れないように必死なのか?
顔が「はてなマークの付いたようなしかめっ面」をしている。
親を介さずに知り合った、初めての人。「もんちゃん」
なんでも、境内で自転車に乗って遊んでいた時にお見えになったみたいで、
いっしょに遊んで下さったばかりか、自転車の片づけまでさせてしまったらしい。
恐るべし、我が娘。
しかし、よほどインパクトがあったのか?
夜にはお母さんともんちゃんの話題になり、二人で盛り上がったそうである。
続きはまだある。
その二日後、裕香がなにやら新聞を読んで興奮していた。
佛立新聞である。
ゆびを指しながら、
「ほら!もんちゃん!!」
「ここにも!」
「ほら!これももんちゃん!!」
……。恐るべし。
ちなみに、お越し頂いた夜には、板橋へお酒を届けて御礼とお詫びを申し上げました。
もんちゃん…、いやお導師さま、ホントすいませんでした。
自らもんちゃんと名乗り、あっという間に子どもの心を掴んでしまう。
この日、なんだか無性に有り難くて、おもわず目頭が熱くなったのは何故でしょう。