*特別下品週間終了!
*下品要注意!食事中厳禁!
予想以上に儲けているのか、
某高層ビルの最上階にある事務所には、
受付に二人もの美女がいた。
私はこれでも常識人なので、
事前にアポイントをとり、
時間前に行くと、
かなり広い応接室に通された。
受付の女とはまた違う、
上品で長身で、かつ、見るからにスタイルのいい美人秘書が、
高級そうな蓋付きの湯飲み茶碗にお茶
を出してくれると、
丁寧に頭を下げて部屋を出ていった。
部屋は何故か異様なニオイがしたが、
それが彼らのトレードマークの一つのひとつである
と私は思った。
そして、
そっくりな顔で、
不細工な太った双子が時間ちょうどに現れた。
私は手持ちの30万円入りの封筒をを差し出すと、
いきなり土下座した。
二人は少しだけびっくりしていた。
私の顔が異常にやつれていたせいかもしれない。
「失礼は承知です。
33年前の伝説のあの事件の本当の真実を教えてください」
私は下を向いたまま、
そう懇願した。
「なんだ。
そんなことか。
あれはおもちゃだよ、
この金は受け取らない。
さっさとお引き取りを」
と、
テレビでよく見ている言葉遣いが生意気な弟の方が
そう言った。
しかし、
「かおむ、
もう下がっていいだすよ。
僕が後は対応するだすからな」
兄の方が弟にそれだけ言うと、
さらに、
「さあ、そこに座るだすよ。
そんなかっこじゃ話しできないだすよ」
兄の方が、
独特の言葉で、
優しく私に声をかけてくれた。
「兄貴、まさか」
「かおむ、
さっきも言っただすがもう下がるだす。
ああ、
それから大事な話しなので、
お茶はもう交換に来なくていい、
と秘書に言っておくだすよ」
兄に強く言われて
私のことをうさんくさい目で睨んでいた弟も、
おとなしく応接室を出て行った。
私は、
自分が考えたこと
を正直にすべて兄の方に話した。
「そうだすか。
でも、詰めが甘いだすな。
僕らのような探偵にはなれないだすな」
と、
兄の方は笑いながら言うと、
白い紙を差し出した、
33年前のことは一切口外しません。
万一、口外した場合は違約金として
3000万円支払います
との内容がそこには書かれていた。
私はそんな大金は持ってなかったが、
言われるまま書いて、拇印を押した。
「じゃあ、
このお金は預かっておくだすよ」
と、
兄の方は私が差し出した30万入りの封筒を
中身も確認せず、
いかにも高そうなスーツの胸ポケットにしまうと、
「人もクソも移動していない。
そこまで気がついたのはたいしたもんだすよ」
「それは合っているのですか?」
「それしかないだすな。
おもちゃじゃないとしたならだすがな」
「やっぱりおもちゃだったんですか?」
「違うだすよ」
「じゃあ?」
「椅子だすよ。
椅子を動かした。
それだけだす」
「でも、落書きは?」
「そこが盲点だっただすよ」
「盲点?」
「椅子は、
1度だけ移動したのではなく、
2度移動したかもしれないだすよ」
「ああ」
私は、
あまりにも単純なので腰を抜かしたと共に、
そうだとすると、
計画的な犯罪いやアレということになるので、
思わず、確認しようとしたとき、
「ああ、
言いたいことはわかっているだすが、
もう訊かないでいいだすよ。
いいだすか!
計画的ないたずらだったんだすが、
アレ自体は本物ではなく、
あくまでもおもちゃだったんだすよ。
いいだすな!
わかっただすな!」
兄の方が
そう語気を強めてはっきり言うと、
ポケットから
さっき私が差し出した30万円の入った封筒
をそっくりそのまま差し出して、
「安いだすが口止め料だす。
これで、
オタクもゆっくり眠れるだすな」
自分の用意した金が口止め料?
なんか得したような損したような気分だか、
よくわからなかったが、
私は、
何故、
彼が名探偵と称されるのか、
少しだけわかった気がした。
(臭)
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