『隠蔽捜査』 今野敏

2012年04月25日 22時15分42秒 | 読書
春の陽気を飛び越した



「竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲は“変人”という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。警察小説の歴史を変えた、吉川英治文学新人賞受賞作。 」(BOOKデータベースより)


主人公の竜崎は警察庁長官官房総務課長で警視正である。上から警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、(巡査長、)巡査となってるので、けっこうなエリート。踊る大捜査線の室井さんが警視正。まあでも、竜崎は46歳、室井さんは34歳で一度警視監的仕事についてるから(実際はあり得ないらしい)、そうでもないか。w
竜崎は東大卒のキャリア採用で、今まで順調にキャリアアップしていったが、家族のことは嫁にまかせっきりで全く省みない。
竜崎は、「自分は国家を守り、妻は家庭を守る」ということを本気で思っているのであり、自分の出世というより、国家を守るためには権限が必要だから出世するという思考回路をもつ、稀有(?)なキャリア。
有名私立大学に合格した息子には、東大以外は大学じゃないといい浪人させるといった、俗世間離れしたようなことを平気で言うところからも、職場などでは変人と呼ばれている。

そんな竜崎の家庭で起きた事件と、警察社会でのスキャンダルへの対応を描いた作品。


実際の官僚社会、警察社会を知らないから何とも言えないところがあるんだけど、こうも簡単に正論が通るのかなぁと疑問に思うところが多くあった。
竜崎が言うことはとっても正論なんだけど、実際の社会ではそうもいかないことばかり。
ちょっと事なかれ主義的なストーリーということは否めないかな。

ただし、疑問に思うのはこれくらい。
それ以外はとても楽しめる内容でした。


あんまりこれ以上紹介すると中身に触れてきちゃうから書けないのが残念。
個人的な思いかもしれないけど、やっぱり警察小説が好きです。

★★★★☆

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十六歳の女子高生・早坂凛は、怪我でバレーボール部を退部、不登校になってしまう。ある日、川沿いの自転車道で元競輪選手・瀧口に出会い、スポーツバイクの解放感を知る。もっと速く、どこまでも走りたい。休学以来初めて凛が見つけた、生きる目標だった。競輪選手を目指す青年、競輪場に半世紀以上も通う老爺、安アパートの老貴婦人など、それぞれに心の傷を負った仲間たちと、世界最速の証「虹色ジャージ」を目指す闘いが始まる。凛は遙かな地平線の虹をつかむことができるのか?自転車競技を通じて、一度は挫折した人々の成長と再生を描く、スポーツ小説の傑作。 (BOOKデータベースより)