goo blog サービス終了のお知らせ 

雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

私は18歳 何処へ行ったらいいの

2015-11-08 15:35:05 | 昨日の風 今日の風

私は18歳 何処へ行ったらいいの (昨日の風 今日の風 №31)

 誕生日が来れば、私は18歳。高校を卒業したら何処に行ったらいいの?

 児童養護施設は種々の理由(親と死別、遺棄、劣悪な家庭環境、虐待)により親と暮らすことができない児童を入所させ、自立のための援助を行う。

 入所対象者は満一歳から18歳未満までの幼児及び児童だ。

支援が必要かどうかではなく、一定の年齢に達したことで支援が終わってしまう。

つまり、最悪の場合、

帰る家や親がいなくても満18歳になれば児童養護施設や里親の家庭から出ていかなければならない。

        

 親の援助を受けられない。

住む家もない。

自立へ向けての支援もこの時点で終わってしまう。

就職にしても「住み込み」や「寮」のある職場を選ばざるを得ない。

保証人がいなければ入居さえできないからだ。 

 アパートや携帯電話を契約する際、親のかわりに法人の代表者が、契約書に署名することもある。

民法の規定で未成年者は保護者の同意がなければ契約行為ができないからだ。

こうした場合、金銭的なトラブルが発生したときなどその責任の負担は、契約代行者らにかかってくる。

例外的に児童養護施設や里親家庭に在籍は、20歳まで延長できるが、

多くの場合高校卒業までで援助は打ち切られてしまう。 

            

 厚労省の資料では、昨年3月に高校を卒業した児童養護施の子どもたち1721人のうち、4月以降も施設に残ったのは231人で、わずか13パーセントにとどまる。

 

 18歳から成人までの2年間は「福祉の空白」と言われる。

児童福祉法では適用外になり、一方未成年のため大人として扱われず、

生活に必要な契約行為など自分でおこなうことができない。

そのため劣悪な生活環境の親元に戻らざるを得ないケースも多い。

 

 この「福祉の空白」を埋めるため、

選挙権同様、18歳を大人とすることで、

一定の解決を目指す考え方もあり、

厚労省の有識者委員会で「児童福祉法 年齢引き上げ議論」が活発化し、

年内には社会的養護のあり方について報告書をまとめる動きがある。

 

 福祉の谷間であえぐ、自立困難な未成年者の支援の継続が一刻も早く実現することを願う。     (2015.11.8記)


最後のお別れ・ご冥福を祈る

2015-11-03 23:25:57 | ことの葉散歩道

最後のお別れ・ご冥福を祈る  ことの葉散歩道(14)

 

 死後の硬直が消えて筋肉がゆるみ、おだやかな顔になってかすかに笑っているようだとさえ言うが、それはあくまでも意志のない死顔で、死のやすらぎの中に静かに置かせてやるべきではないのか。

 「死顔」吉村昭著 短編集所収「二人」より

  高齢の兄の葬儀に参列し、読経が終わると最後のお別れである。

棺のふたが開けられ、嗚咽や忍び泣きの中、親族たちが次々に棺の中の死者に花を添える。

旅たちに備え、遺体を花で覆いつくす。

遺族にとっては新たな悲しみが湧いてくる時でもある。

 

 「お別れを……」葬儀社の若い男が近寄ってきて、私たちをうながした。私は、無言でうなずいたままその場を動かず、妻も私のかたわらに立っていた。

 そうしながら、作中の私は冒頭のようなことを密かに思い、斎場に妻と二人立ちつくすのである。

 

 葬儀場で式を行うようになってから久しいが、

いつごろからこんな習慣ができたのか。

出棺に際し棺のふたを取り、遺体に花を添える。

遺族にとっては、新たに悲しみがこみあげ、辛いひとときである。

しかも、参列者が大勢いるなかでの儀式である。

できれば人前で涙を見せたくない場面だ。

 

 

 遺族にとって悲しみがこみあげて来る場面が三度ある。

通夜に臨み湯かんをし、故人を棺に納める「納棺」のとき、

出棺前に故人に「花を添える」とき、

最後に窯のふたが開き棺が暗くあいた穴の中に入っていく瞬間。

 

 

死のやすらぎの中に静かに置かせてやるべきではないのか。

 

 

 最近の葬儀では、「皆さんもお花をどうぞ」と一般参列者にも呼びかけることが一般的だ。

声がかかれば席を立ち、ぞろぞろと棺に向かい、故人に花を手向ける。

 

 

 私は物言わぬ個人の顔を拝むのが嫌で、

親族の葬儀以外で花を手向けたことはない。

故人と遺族との最後のお別れを一般席から静かに見守り、ご冥福を祈りたい。                

 

                               (2015.11.03記)