雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

海に消えた対馬丸 学童疎開船の悲劇 ⑧ 沈んでゆく疎開船

2023-08-20 06:30:00 | ニュースの声

海に消えた対馬丸 学童疎開船の悲劇 ⑧沈んでゆく疎開船
 わずか12分で対馬丸は、悪石島海域の海底に沈んだ。1944年8月22日22時23分ごろ。
海水は冷たく、すさまじい水圧がかかってきた。
沈んでいく対馬丸に伴って、大きな渦が起こり、体が激しい勢いで回転し始めた。
「船が沈没したらなるべく早く船から遠くに逃げろ」と、
疎開船の不安を煽るような注意はされなかった。
ただただ大人たちの「逃げろ!
」という叫びに、
子どもたちは船倉から狭い階段を、甲板にに向かって必死で登って行った。
傾いた甲板に出て、「海に飛び込め!」という大人たちの声に、
暗い海面を見てしり込みする児童もいる。
恐怖にすくみ、甲板に座り込んでしまう児童は、
大人たちに抱きかかえられ、暗くうねる海に放り込まれた。

 闇の世界に埋もれながら、意識が遠のいていく。
……どれほどの時間が経過したのか、
自分の体が仰向けに浮いているのに気付いた。
船は跡形もなく、
海面には小さな渦がところどころにできている。
対馬丸沈没の名残の渦だ。
周囲を見回した。
海面は浮遊物に満ちていて、孟宗竹、ドア、木片、畳などに交じって
救命衣をつけている人の体も浮いていた。
傍らの体に触れてみた。
が、その体には頭部がなく、改めて周囲の人々の体を見つめなおしてみると、
救命衣をつけた死体ばかりであった。
と、作家・吉村昭は対馬丸事件を扱った「他人の城」の中で表現しています。
沈没する船の引き起こす渦に巻き込まれ、
海底に引きずり込まれ溺死したのでしょう。

 船の爆風で救命ボートは転覆し、
生存者は台風襲来の中、孟宗竹で編んだ筏で漂流しながら救助を待った。
漂流は、風雨、三角波、真水への渇望、周辺を泳ぐフカへの恐怖、
錯覚や幻聴との戦いでもあった。
           対馬丸沈没 語り部の平良恵子さんが29日、88歳で死去されました。
             疎開船「対馬丸」の生存者で、語り部として長年活躍されていました。
             9歳だった1944年8月、国の疎開方針に伴い沖縄から長崎に向かうため乗船した
             対馬丸が米潜水艦の攻撃を受けて沈没。平良さんは筏で6日間漂流した後、流れ
                着いた無人島で救出された。沈没事件には箝口令(かんこうれい)が引かれ戦後になっ
                                               ても語れない生存者がいるなか、平良さんは早くから語り部として体験を伝え                                                   る活動をした。(朝日新聞2023.7.31記事を要約)
                                                                                                                        (つづく)

                          (語り継ぐ戦争の証言№32)  (2023.8.19記)

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