雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書案内「老人と海」ヘミングウェイ著

2011-07-14 21:39:35 | 読書案内

老人と海

 

サンチャゴ老人の四肢は痩せこけ、うなじに刻み込まれたシワは赤銅色に輝いていた。

だが、眼だけは違っていた。

「海と同じ色をたたえ、不屈な生気をみなぎらせている」眼の色だ。

 

 漁をしながら老人はたった一人の小舟の上で語りかける。

 

太陽や月や海に、大きな声で語りかけ、ときには自分自身を励まし激励するために

大きな声でひとりごとを言う。

 

 カジキマグロが餌に食らいつき、

4日間の老人と魚の死闘の末、老人は獲物を仕留め、

帰港する小舟の脇にそれをくくりつける。

老人の小さな船からはみ出すほど、戦利品はあまりに大きく、堂々と威容をさらしていた。

 

 サメが襲う。

 

戦利品の獲物に食らいつき鋭い歯で、肉を咬み切る。

老人は、あらん限りの力で棍棒を振り下ろすが、サメの攻撃は衰えを見せず、

カジキマグロは頭と背びれと尾びれを残す残骸になってしまう。

 白い骨をさらし、今はただ小舟と一体になって波にたゆたう姿ではあるが、

4日間の老人との死闘を想像するには十分な大きさであった。

 

 夜の闇に包まれた港に帰りついたとき、

老人は初めて疲労の深さを知り、粗末なベットに倒れこみ、

アフリカ海岸で潮騒の響きにたわむれるライオンの夢を見る。

なつかしい若いころのアフリカの夢だった。

体力もあり、希望もあり、生き生きとしていた遥かな時の彼方に

老人はゆったりと身を横たえて、眠り続ける。

 

「人間は負けるようには造られていないんだ。そりゃ、人間は殺されるかもしれない。

けれど負けはしないんだぞ」。

大魚を相手に4日間の闘いで自分に語りかけた老人の言葉である。

 

自然と対峙し、年老いた自分を励まし、

危機的な困難を乗り越えていく人間のたくましさが浮かんできて、

東北震災の罹災者の姿がオーバーラップしてきた作品でした。

   老人と海:ヘミングウェイ著(1966年)昭和41年新潮文庫刊。  作品に「我らの時代」、「日はまた昇る」、「男だけのの世界」、「武器よさらば」、  「キリマンジャロの雪」等があり、ロスト・ジェネレーション世代を代表する作家である。1952年「老人と海」を発表、ヒューリッツア賞を受賞。1954年ノーベル文学賞を受賞。1961年、猟銃で自殺。「老人と海」は映画化(1958年・ワーナーブラザーズ)もされています。原作を忠実に再現してあり、一見の価値あり。

 

    

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