成人の日 はなむけの言葉
8日、国道で見た風景
国道の横断歩道を渡り終えた私の後ろで、信号が青に変わり車が一斉に走り出す。
車の騒音が高くなった。
マフラーの破れた爆発音が高くなり、耳を覆うばかりの音。
爆音と共に奇声を発する2台のオートバイ。
どちらも二人乗りだ。
白い羽織袴に身を包み、これは和製の特攻服というイメージである。
爆音をまき散らし国道を我が物顔に、
戦場で足軽が背中に背負うような旗を振り回して、
車を縫うようにジグザク走行して追い越し、去っていった。
午後に開催される市主催の「成人の集い」に参加する新成人だ。
未来を担う若者の姿としては何ともおぞましく、情けない新成人の姿だった。
一方、この日を真摯に受け止め、誓いを新たにする新成人が大勢いることも確かだ。
60年前、田舎から東京に出てきた私は、帰省するのも面倒で成人式に参加しなかった。
洋服を新調するでもなく、下宿先の部屋で本を読みながら、
普段と変わらない一日を過ごした。
翌日、当時流行っていたロストジェネレーションの一人と言われていたヘミングウェイ
の全集を購入した。
青春の入り口に立った私の懐かしい思い出だ。
伊集院静のはなむけの言葉
水のようにまぶしい君になれ
新成人おめでとう。
今日から大人だと言われても、自分のどこが? 何が大人なの
かわからないだろうネ。私たちも皆同じだった。懸命に生きる
うちに大人になった。大人なりの考えも身についた。
自分だけがイイのはダメだ。働くにしても、歩くにしても、自
分だけがラクするのはダメだ。金を得ることだけが目的なら、
早々自分を失うものだ。その仕事は誰かのために汗を流してい
るか。さうして共に笑える日が見えるか?
去年んの春から大人は十八歳になった。なぜ急にふたつも若く
なったのか? それは信頼できる、可能性を信じて生きている
大人を一人でも増やしたいからだ。
この国はアジアの中で、いや世界の中で、美しい水に満ち、美
味しい水にあふれ、素晴らしい自然に恵まれている。その国の
上を平然と兵器が飛ぶことを許してはいけないのだ。断じて許
さない。そういう大人になろう。誇りを捨てるな。
今までの大人のやり方ではダメなんだ。
さあ立ち上がろう。新しい日本人になるために。苦しくともと
もに歩き出そう。立ちはだかる山も、挑めば必ず光が差す道は
見えてくる。美しい一本の渓流が乾いたのどを潤してくれる。
いつか命の水を育て、乾杯しよう。その日まで君たち新しい大
人を私たちは応援し続けるから。
気張らずに、難しいことをいうわけでもなく、淡々と新成人に語り掛ける雰囲気がいい。
さて、これはある会社のイメージ広告のキャッチコピーです。
この文章の欄外に活字体で印字された文字は、
『水と生きる SUNTORY』とあり、ウイスキーのサントリーのイメージ広告かと知れば、
文中の水へのこだわりも納得がいく。
新成人よ、自分の頭で考え、自分の足で行く先を決め、自分の手で
自分の未来をつかんでほしい。
『寄らば大樹の陰』みたいな、安易な人生は歩んでほしくない。
もっとも、大樹の陰で生きるのも、競争のつばぜり合いや理不尽な要求などもあり、
神経をすり減らし安穏な場所ではないことを知ってほしい。
あなたたちが歩んでいく未来は、
戦いのための日常ではなく、
自分のための、そして隣人のための豊かな日常であることを祈念します。
(つれづれに…№135) (2023.01.13記)
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