里山を歩く ② 落ち武者の声が聞こえる
晩秋の風が枯葉といっしょに里山の雑木林の中に消えていき、
初冬の寒さが里山に降ってきて、
北のブロ友からは初雪の写真のニュースがめっきり多くなりました。
冬を迎える田圃のあぜ道を抜けて、山間の緩い坂道を上っていくと
古い空気に包まれた古刹の甍に秋の名残りが枯葉にまじって漂っていました。
この境内で数百年の風雪に耐えて生きてきた天然記念ぶっのクスノキを仰ぎ見、
薄暗い本堂に鎮座する慈母観音に手を合わせ、
弘法大師の像に別れを告げ、法螺貝の野太い声に送られて、
林の中の城址に続く道を登っていく。
今となっては城の痕跡の気配も感じられないけれど、
私は、戦いに敗れ落ちていく雑兵や地方武士の叫びを、
林を縫って走る細い道に聞いた気がした。
すっかり葉を落として裸木になった林を抜け、
谷に掛る吊り橋を渡り、小さな湿地帯を抜けて
ほうの木の落ち葉をカサコソと踏みながら
焼き物の里へと続く道に心地よい疲労を感じながら
朝降りた駅への道をゆっくり歩いた。
歩数計が21,281歩を示し、
時計の針は13時10分を少し過ぎるところを指したころ、
駅の時計台が見えてきた。
(こころもよう…№132) (2022.12.12記)
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