最後のキタシロサイ
なぜ絶滅した。
あの巨大な体が、高齢のため筋肉が衰えて立てなくなった。
大きな体の割には小さな目が、
とてもかわいらしい。
その目がケニアの大地に広がる青い空をみつめている。
雲一つない空の向こうに、彼が見ていたものは何だったのか。
(マサイの人々とキタシロサイのオス「スーダン」) APF PHOTO/TONY KARUMBA
罪深い人間。
この渇いた大地の最後の種族になってしまったことに、悔し涙を流していたのか。
もう再びこの大地を風を切って走ることはできないだろう。
スーダンがそう思ったとき、太い首のあたりにかすかな痛みを感じた。
やがて心地よい痺れと痙攣が全身を覆い、サイは静かに目を閉じる。
かつて、俺たちの仲間たちはこのアフリカの大地を、
地響きをたてわがもの顔に駆けていた。
朦朧として意識の薄れていく中で、
最後の一頭になったオスのキタシロサイ・スーダンは生涯を終わった。
朝日新聞(3/22)によると、
安楽死したオスのキタシロサイは45歳の高齢だったが、その重い体重を支えるにはあまりに歳を取りすぎていた。2頭のメスのキタシロサイが生存しているが、最後のオスがいなくなったことで、絶滅は避けられなくなった。キタシロサイはアフリカ中部に広く生息していたが、角がベトナムや中国などアジアで主に漢方薬として売られ、 密猟が横行するなどして激減した。
(つれづれに……心もよう№78) (2018.03.28記)