元零戦パイロットの苦脳
元零戦パイロット原田要さん(98)の証言。
20代で零戦に乗り、誇りにかけて敵機を撃ち落とす。
だが、70年以上たっても、墜落していく敵の操縦士の表情が忘れられない、
と語る原田さんはインド洋上やミッドウェー海戦で19機を撃墜した強者(つわもの)だ。
「自分の命は差し出して働く覚悟」があった。
戦時下に青年期を迎えた多くの若者が抱いたであろう「覚悟」を持って、
零戦のパイロットになった原田さん。
そして、「あやめなければ自分がやられる」。
強者の左腕には敵の弾にえぐられた傷跡が今も残っている。
「どんな善良な人間だって、戦争というものの中に入れば最悪の人間になる。……お分かりになりますか」
「お分かりになりますか」と問われ「えゝ、あなたの辛い気持ちは十分にわかりますよ」等と答える人がいれば、
それは偽善者だ。
それほどこの「お分かりになりますか」と問いかける原田さんの経験は重く苛酷だ。
記者はこの心の葛藤を次のように表現する。
[罪悪」という言葉を繰り返す原田さんが70年間苦しんできた罪の意識。
一方で、若き日々を国に捧げた零戦乗りの「誇り」……… 。
(これは、朝日新聞2015.8.3夕刊 継ぐ記憶 私たちに戦争を教えてください③を参照にしました)
原田さんの心の葛藤は戦後70年たった今でも、
「誇り」と「罪の意識」の狭間で揺れ続け、 永遠に解決できない自問として残っていくのでしょう。
生き残り、今を生きる人にとっても、戦死し遺族となった家族にも、
それぞれの戦後があり、決して忘れてはいけない戦争の愚かさを語り伝えなければならない。
(2015.8.7記)