中秋の名月
9月19日、わが家から眺める「中秋の名月」は、
金色に輝き、まさに「名月」でした。
ススキ、吾亦紅(われもこう)などを窓辺に飾り、赤飯、けんちん汁、お月見団子を備える。
いつものわが家の風景です。
庭に出て月を仰ぎながら、「爺ちゃん、お月さまのなかでウサギさんが跳ねているよ」と孫。
私にも、そんな時代があったのだと、
仰ぎ見る満月に、私はかぐや姫の伝説を思い浮かべ、
彼女が唐車に乗って月へ帰っていく姿などを想像していました。
大都会東京の空、
高層ビルの明かりや自動車のヘッドライトの光の帯を見下ろすように、
孤高の満月は「眠らない街」の夜空に君臨しています。
陸前高田の空、
ゆっくりと流れる雲の間から、月は「奇跡の一本松」のモニュメントに昨日と変わらない優しい光を降り注ぐ。
消えることのない悲しみとそれを乗り越えようとする人間の街を静かに照らし、見守っている。
津波にさらわれた防風林の上に、
原発に追われた無人の町に、
汚染された海や湖で泳ぐ魚達に、
月光は昔と変わらない悠久の優しさと、慈しみを降り注いでいる。
(季節の香り 4)