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雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

「白露」と「中秋」の月、そして特別の日

2014-09-12 22:00:00 | 季節の香り

白露と中秋の月、そして特別の日

 9月8日は、二十四節気でいう「白露」である。

残暑の高い気温が、夜の冷却現象により、地表面の温度が下がり、

透き通った露が植物たちをいきいきとさせ、

秋の気配に虫たちは夜明け間際の時間まで、合唱を続ける。 

 今年は1976年以来、38年ぶりに「白露」と「中秋」が重なる珍しい年回りだとか。

 ススキ、オミナエシ、吾亦紅(われもこう)などを窓辺に飾り、

栗ごはん、けんちん汁、お月見団子を備える。  

 曇天の夜空に星も月も見えない。

 

 かぐや姫の伝説などを思い浮かべ、

迎えに来た殿上人とともに月へ帰っていく姿などを思い、

仰ぎ見る夜空に早逝した孫の翔太郎のことなどを思い、

潮が満ちてくるようにあふれてくる悲しみを妻と二人、

月のない夜空を眺め、目を潤ませました。

 

 大都会東京の空、高層ビルの灯りや自動車のヘッドライトの光の帯を見下ろすように、

孤高の月は「眠らない街」の夜空に君臨しています。

陸前高田の空、流れる雲の間から、

月は「奇跡の松」のモニュメントに昨日と変わらない優しい光を降り注ぐ。

消えることのない悲しみとそれを乗り越えようとする人間の街を静かに照らし、

見守っている。

 津波でさらわれた防風林のうえに、原発に追われた無人の街に、

汚染された海や湖で泳ぐ魚たちに、

月光は昔と変わらない悠久の優しさと慈しみを降り注いでいる。

 

 今日は翔太郎の9回目の月命日です。

「白露」と「中秋」が38年ぶりに重なった記念すべきこの日が「月命日」と重なる偶然に、

この日のことが忘れられない一日としてきっと記憶されていくのでしょう。

 

 人間の一切のいとなみを、仏教の教えは、「無常」という概念で説いています。

とどまることを知らず、流れに漂う木の葉のように、

喜怒哀楽の感情もやがては「無常」という時の流れの中で変化していくのでしょうか。

(2014.9.8)

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中秋の名月

2013-09-23 23:04:30 | 季節の香り

中秋の名月

 9月19日、わが家から眺める「中秋の名月」は、

金色に輝き、まさに「名月」でした。

ススキ、吾亦紅(われもこう)などを窓辺に飾り、赤飯、けんちん汁、お月見団子を備える。

いつものわが家の風景です。

 庭に出て月を仰ぎながら、「爺ちゃん、お月さまのなかでウサギさんが跳ねているよ」と孫。

 私にも、そんな時代があったのだと、

仰ぎ見る満月に、私はかぐや姫の伝説を思い浮かべ、

彼女が唐車に乗って月へ帰っていく姿などを想像していました。

 

 大都会東京の空

高層ビルの明かりや自動車のヘッドライトの光の帯を見下ろすように

孤高の満月は「眠らない街」の夜空に君臨しています。

 陸前高田の空

ゆっくりと流れる雲の間から、月は「奇跡の一本松」のモニュメントに昨日と変わらない優しい光を降り注ぐ。

消えることのない悲しみとそれを乗り越えようとする人間の街を静かに照らし、見守っている。

 

 津波にさらわれた防風林の上に、

原発に追われた無人の町に、

汚染された海や湖で泳ぐ魚達に、

月光は昔と変わらない悠久の優しさと、慈しみを降り注いでいる。

                                          (季節の香り 4)

                                                 

 

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雪に埋もれた温泉宿

2011-03-11 08:11:40 | 季節の香り

 北へ向かって走る鈍行列車で4時間半、駅に着いて迎えの車に乗って50分。

目的の温泉地は今年も期待通り、静かに雪の中に埋まっていた。

 見渡す限りの雪が宿を覆い、人間の腕ほどもあろうかと思われる氷柱(つらら)が鋭利な刃物のように先を尖らして軒先を飾っている。

  3月の上旬、里には梅の香りが漂い、春の息吹が感じられるのに、ここはまだ厳冬の寒さが支配し、木々を眠らせ、鳥たちのさえずりもない。

  ただひたすら雪の舞い落ちる露天の湯につかる。

  時折、松の梢に積もった雪が落ちてきてほてった体を冷やしてくれる。

 

  あまりに豊かになりすぎ、便利になりすぎた私たちの社会が、この見せかけだけの繁栄の中の幸せと引き換えに、失い、犠牲にしてきたものは少なくない。

  私たちの先人が築いてきた、幸せを育む社会が、生きずらい社会に傾斜していったのはいつの頃からなのだろう……。

 

  鈍行列車と厳冬の秘湯は、さまざまのことを思い起こさせ、疲れた気持ちをリフリッシュさせてくれる貴重な旅となります。

                                                                       季節の香り(3)

                     

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夢花火

2010-08-28 11:16:48 | 季節の香り
 午後七時
 大会開始の時間である
 対岸の東の空に
 合図の花火が威勢よく打ちあげられる

 夏の夜空に
 西の空の一番星がひとつ薄暮の中にキラリと光る

 川面を渡って
 葦原(あしはら)の葉をさやさやとなびかせ
 土手を這いあがってくる晩夏の夜風は
 どこかに秋の匂いを感じさせる

 長い経済不況と雇用不安を反映してか
 今年のテーマは
 「夜空に輝く 祈願のひかり」である

 「幸せになりたい、幸せでありたい」と誰もが願う

 幸せというささやかな希望を乗せた観衆の願いを
 花火師は夜空にむかって打ち上げる

 それぞれの思いを込めて
 夜空に散華する大輪のひかりの華は
 人の心をとらえて離さない

 会場の雑踏から遠く離れ
 花火の合間の静寂を縫って
 秋の訪れを告げる虫たちの演奏が
 夜のしじまの中を流れていく
 
 星も 月も 花火も
 自然という舞台の中で
 夏の終わりの祭典を彩る
 小道具になって
 夜は静かに帳(とばり)を厚くしていく
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残暑の朝顔

2010-08-11 15:41:48 | 季節の香り
 今日も暑くなりそうな 残暑の中を
 
 セミしぐれが 降ってきます

 朝露をいっぱいあびた

 朝顔が

 涼しげに あるかなしかの

 風に ゆれています


       今年も我が家の庭の片隅に、ひっそり咲いてくれた朝顔に
       感謝。例年鉢に植えたり、軒下に植えて日よけにしたりするのですが、
       今年は、まったくの放任。庭の隅にこぼれた種が芽を出し、
       けなげに咲いてくれたことに感謝です。

         (残暑見舞いのはがきをブログ用に編集して記載)
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7月 立葵・梅雨があけました

2010-07-17 23:24:22 | 季節の香り
 立葵は、6月初めごろから咲き始め、露のさなか徐々にみな丈を伸ばし、
 下の方から上に向かって順々に花をつけていきます。

 決して先を急がず、開花の順番を待ち
 茎や葉っぱの大きさに見合った花をつけていく。

 田んぼのあぜ道
 路地裏の小路
 華やかな花ではないが、
 遠慮をするように
 そういう場所で毎年花をつけて
 スキッと立っている

 梅雨空に映えるアジサイに人気をさらわれ、
 目立たない花ですが
 花期は長く8月の炎天下にも咲いている。

 やがて
 いちばん高い所に花をつける頃になると
 梅雨があけるといわれています。

 季節の移ろいの目安になる花です。
 今日、気象庁は関東地方などの梅雨明け宣言をしました。

 いよいよ、
 本格的な夏の季節になります。
 
 立葵のように
 スキッとまっすぐに立って
 夏を乗り切りたい。  
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七夕

2010-07-07 22:13:32 | 季節の香り
 七夕の夜。
 あいにくの梅雨空は雲が厚く、一片の星も見えない。

 むかし、少年だった頃
 竹を切ってきて、七夕飾りを作り、短冊に「願い事」を書いて
 軒先に飾った。
 油性のペンなんてなかった時代だから
 里芋の葉っぱに溜まった朝露をとってきて、それで墨をすり
 筆で字を書くと字が上手になるといわれていた。

 子どものいる家ではどの家でもそんな光景がみられる七夕の夜である。

 さて、少年のころ短冊に書いた「願い事」は、何と書いたのか。
 これが、いっこうに思いだせない

 さやさやと風に揺れる笹の葉の葉ずれの音が
 昨日のことのように、記憶の底から湧きあがってくる
 と、同時に優しかった母の面影が浮かんでくる。

    晴れていれば、夜空には夏の大三角形と呼ばれる三つの明るい星が見えるはず
    です。いちばん高いところで輝く星がこと座のペガで、日本名を「織姫星」と
    いい、七夕伝説の主役となる星です。
     その下を流れる天の川を隔てて、三角形の右下に輝く星が、わし座のアルタイル
    で、日本名を「彦星」といい、七夕伝説のもう一人の主役です。

     この梅雨空の下では、おそらく星空を見るのは難しいでしょう。
     新暦七月七日に織姫と彦星にあえなかったら、旧暦の七夕(八月十六日)
     の夜空に期待するのもよい。

      昔は、私が子どもの頃は七夕は夏休みの半ばごろ、つまり旧暦で行なわれた      
     行事なのでむしろ、旧暦の方がよく見えるかもしれない。
 
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6月の風

2010-06-15 21:10:56 | 季節の香り
6月の風

 6月の風は気まぐれである
 どこかに
 初夏の若葉の匂いをかすかに残し
 ときには
 やさしいあじさいの匂いと一緒に
 雨を運んでくる

 梅雨の切れ目には
 はっとするような夏の匂いを漂わせて
 6月の風は
 えりあしをなでて通り過ぎていく

 水田にすくっと立ったイネの葉先をゆらしながら
 浮気な仔猫のように
 田園の村々を通り抜けていく

                 (ウォーキング日誌より転載)
 

 

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初夏の匂い

2010-06-02 14:28:20 | 季節の香り
 田んぼのあぜ道
 金色に輝く大麦や小麦が初夏の風に揺れて、サヤサヤと優しい音を立てている

 刈入れ間近の穂の上を渡ってくる風の匂いは、枯れ草の匂い

 子どもの頃
 麦笛を鳴らし
 虫籠を編み
 田んぼに野積みにされた麦わらに乗って遊んだ記憶

 懐かしい思い出と匂いは、
 みんな枯れ草の匂いがする

 とうとうと流れる用水の水が、田植えの終わった田んぼに引き込まれていく
 
 カエルの鳴き声。
 集落の林でウグイスが鳴く
 ツバメがえさを求めて 水稲の葉すれすれに見事な滑空を披露する
 
 のどかな6月の始まりである

                           (ウォーキング日誌より転載)
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花の舞

2010-04-26 22:31:53 | 季節の香り
 桜の花が満開になり
 人も小鳥も蝶さえも
 爛漫の春を満喫し

 花冷えの気候は
 花の命を幾分長持ちさせたようです

 私は
 咲く花よりも
 散っていく花のほうに
 魅力を感じています

 あるかなしかの風に揺られて
 はらりと散る最初の花びらの一枚
 
 秒速5センチで落ちて揺らいでいく落下の舞に
 命のはかなさを予感し
 春の終わりの
 そこはかとないもののあわれを観るような思いで
 次に続く花吹雪の乱舞を予期してしまう

 その不安定な心情が好きなのです
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