小春奈日和

赤ちゃんは、人間は、どのように言葉を獲得するの?
わが家の3女春奈と言葉の成長日記です。

479 難波と大和と神婚譚⑧

2016年02月12日 00時48分59秒 | 大国主の誕生
大国主の誕生479 ―難波と大和と神婚譚⑧―
 
 
 『日本書紀』が、オオタタネコは大物主の子、としているのに比べて『古事記』の方は、
 
大物主 ― 櫛御方命 ― 飯肩巣見命 ― 建甕槌命 ― オオタタネコと、間に3代を挟ん
でいます。 
 このことは、『古事記』の方が新しい神話を採用しているものと解釈されています。
 
 大物主の子が櫛御方命(クシミカタノミコト)というのは、『先代旧辞本紀』に登場する
天日方奇日方命(アマツヒカタクスヒカタノミコト)のことだと思われます。この奇日方命
(クシヒカタノミコト)が櫛御方命(クシヒカタノミコト)に酷似しているからなのですが、
『日本書紀』には、オオタタネコの母を奇日方天日方武茅渟祇(クシヒカタアマツヒカタ
タケチヌツミ)の娘とする異伝がある、と伝えています。
 
 『先代旧辞本紀』には、事代主が、三島溝杭耳神(ミシマノミゾクイミミ神)の娘の玉櫛媛を
娶って天日方奇日方命と媛蹈鞴五十鈴姫命(ヒメタタライスズヒメノミコト)を生んだとあり、
妹のイスズヒメが神武天皇の皇后になった、とあります。
 その一方で、同じ『先代旧辞本紀』はイスズヒメを「大三輪の大神の子」と記します。
 もっとも、『先代旧辞本紀』は、事代主を大国主の子とした上で、大国主と大物主を
同神しているので決して矛盾はしません。
 このことは『日本書紀』とも一致します。『日本書紀』もイスズヒメを、事代主が三島溝杭
耳神の娘の玉櫛媛を娶って生んだ子とし、またイスズヒメを大物主の子とも記しているの
です。さらに大物主と大国主を同神としている点も一致します。
 
 これらのことから推測するに、成立時期は不明ながら、大物主の子にクシミカタノミコト
もしくはクシヒカタノミコトがいるという伝承が存在したと思われます。
 そして、『先代旧辞本紀』はクシヒカタノミコトを、三輪氏の始祖と記しますが、『古事記』も
『日本書紀』もともに三輪氏をオオタタネコの子孫としています。
 つまり、大物主の子がオオタタネコという伝承に、大物主―クシミカタ―オオタタネコという
系譜ができ、そこに建甕槌(タケミカヅチ)をはさんだ、しかしタケミカヅチをクシミカタの子と
するのに少なからず抵抗があったのでその間に飯肩巣見命を一代挟んだのではないで
しょうか。
 
 もっとも、『先代旧辞本紀』では、事代主 ― 天日方奇日方命 ― 健飯勝命 ― 健甕尻命
またの名を健甕槌命、としており、タケミカヅチがクシヒカタの孫と言う点は一致します。
 ただし、『先代旧辞本紀』と『古事記』の違いは、こちらでは、オオタタネコが、健甕尻命
(健甕槌命) ― 豊御気主命 ― 大御気主命 ― 阿田賀田須命 ― 大田田禰古命、とより
複雑になっているところです。
 
 ところで『先代旧辞本紀』はクシヒカタについて、ニギハヤヒの子、宇摩志麻治命(ウマシ
マジノミコト)とともに、神武天皇より食国(おすくに)の政事を行う大夫に任じられた、と記し
ます。重臣として政務を任されたということです。
 『先代旧辞本紀』はニギハヤヒ系によって記された書ですから、ウマシマジを始祖とする
物部氏にも関係します。だから、この一節にある、三輪氏の祖と物部氏の祖がともに政治を
行ったというのは、ニギハヤヒ系氏族と三輪氏の結びつきを意味することにもなるのです。
 
 三輪氏は神(みわ)氏とも表記され、大の美称を冠して、大三輪氏、大神氏とも称しました。
なお、姓(かばね)は君(きみ)です。その名が示すとおり、大神神社の祭祀氏族でもありま
すが、姓の最高位である君の姓を持つ理由は、この大物主を祭祀するからこそとも考えら
れる、つまりは当時の大和政権はそれほど大物主の祭祀を上位に置いていたと考えられる
のです。
 
 三輪氏は大物主の子孫を称し、大神神社の祭祀を司る。
 太氏も大物主の子孫を称し、多坐弥志理津比古神社の祭祀を司る。
 
 大神神社と多神社の関係が祭祀氏族の関係にもあらわれている形です。
 しかも、太氏は『古事記』では「意富」と表記され、三輪氏の始祖オオタタネコも『古事記』では
「意富多多泥古」と、ともに「意富」と表記されます。
 
 同時に三輪氏はタケミカヅチとも結びつくわけです。
 なぜなら三輪氏の始祖オオタタネコはタケミカヅチの子だからです。このことは同時に
三輪氏と中臣氏、物部氏との結びつきをも意味します。
 その関連性は、
 
 三輪氏。タケミカヅチ(建甕槌命)の子オオタタネコを始祖とする。
 中臣氏。タケミカヅチの祭祀を司る。
 物部氏。タケミカヅチの分身布都御魂を管理する。
 
と、いうものになるわけです。

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