今週は京成・常磐線シリーズだなんて
豪語しておきながら、再び得意の忙しいが出てしまった。
今日は2日間の空白の後ろめたさを
しっかりと挽回させていただきたい。
立石。
先日、ゴールデンウィークと引き換えに
銀の塔でシチューをご馳走になった話をしていたが、
そのお客さんが一段落したので一杯やるかと
誘ってくださった。
この無言のありがとうという気持ちが
何とも嬉しいのだ。
立石にいいお店があると呼び出されたのだが
正直、この土地に足を踏み入れるのは初めて。
下町情緒あふれる街なのだろうとイメージはしていたが、
ここまで溢れているのかと目を丸くさせられてしまったのだ。
この街にはイトーヨーカドーがあるそうだが、
地元の商店街の繁盛ぶりは逆転現象の起きている他の街とは
いったい何が異なると言うのだろうか?
今回はお酒を飲みながら
その謎を紐解いて行こうという訳だ。
京成立石駅を降りると
至近に仲見世商店街という
昔ながらの商店街がある。
その中腹に丸忠蒲鉾店と名乗る
おでんのタネを売るお店があるのだが、
そのお隣には二毛作と書かれた
おでんと一品料理を出す飲み屋が・・・
スジの良い方ならばこの2つのお店は
同系なのだろうとピンと来るのだろうが、
実は両親の蒲鉾屋の隣で息子さんが
おでん屋を始めたというのが事実だそうだ。
既に饒舌になりながら
待ち構えていたお得意先と合流し、
今宵の宴がスタートした。
何を頼もうかと黒板に目をやると、
一瞬にして心を奪われたものがあった。
おじんとうでん。
牛スジがしみ込んだおでんの汁で
おじやを作ったからおじん。
同じようにうどんを作ったからうでん。
10代、20代の方はコイツを
ネーミングの妙だとは感じないのだろうが
私のような30代は親父ギャグに近い
この食べ物はド真ん中のストレート。
思わず最初の一品にしてしまおうかと
腕組みをした程のものなのだ。
最初に頼んだのは中オチ¥500。
実はここに来る前に
お店の日記をチェックしてから来たのだが
このお店には御歳80を越えるマグロの仲買人の家に生まれた
マグロの達人が生マグロを仕入れ、卸し、実際に
喰いに来ているそうだ。
自信の生マグロだと聞かされれば黙ってはいられない。
何も浸けずにいただいた・・・
うん。まずまずだ。
冷蔵庫に入れられていたのだろうから
15分程置いてから食べた方が美味しいのだろうと
再チャレンジをしてみると・・・
旨い。
山葵を舐めながら
醤油に漬けずに食べられる
なかなかのマグロだった。
続いてさつま揚げの炙り¥400。
練り物系はおでんダネの本領。
パクリとやってみると・・・
こちらは期待が大きすぎた。
練り物は魚丸出しな
鹿児島の地のものが好きな私にとっては
好みや嗜好の違いというだけなのだが、
ちょいと大人しく感じてしまった。
続いて牛のスジ煮込み¥400。
おでんの出汁ベースのスジ煮こみの色。
こいつは旨そうだ。
あっさりしすぎるなよと念じながら口に運ぶと・・・
う、旨い!
昆布の方が鰹よりも強いおでんの出汁に
どれほどの具材の味が染み出ているのだろうか?
複雑な味の交じり合いを鰹が慣らし、
昆布が纏め上げたこの味は芳醇という
二文字がぴったりだ。
この出汁に及第点以上の牛スジの味だけならば
ここまで大騒ぎをしてはいないのだろうが、
見た目は湯葉のように思えたペロンとしたホルモンが
内側に携えるコラーゲン。
口の中でジュワっと広がる旨みが堪らないのだ。
あまりに旨すぎて四の五の言わず
おかわりを頼んでしまった。
続いておでん。
最初に頼んだのは大根、ジャガイモ、
がんもにツミレ、はんぺん、ちくわぶだ。
普段ならば玉子を頼む私なのだが
先述のおじんにうでん。
こいつに卵が使われていたので
自粛をさせていただいた。
おでんの中で心を特に奪い去ったのは大根だ。
この定番具材。
大根のエグ味の消し方といい
味のしみ込み方、また、染み込んだ出汁の味といい
手本や鏡と呼ぶに相応しい素晴らしいものだった。
続いて煮麦いか¥400。
立石という土地柄もあるのだろうが
何もかにもが総じて安い。
こいつも食べるのに間を置かなければ
ならない冷たさが残念ではあったが、
味付け、ゲソをいか飯の如く腹に詰め込んだ
見た目の楽しさ、値段、
三拍子揃っている。
値段のついでに飲み物を言っておくと
ビールはアサヒなのが私好みではないが¥350。
えっ!という声が聞こえてきそうだが
これには訳がちゃんとある。
350ml缶なのだ。
ただし、冷やしてグラスと場所代で¥350
というお値段は十分に納得できる費用。
とても良心的であると私は捉えさせていただいた。
ちなみにマッカランやラフロイグといった
スコッチが¥500。
カクテルも¥500程度。
安いでしょ?
続いてこいつ。
あぁ~あ~醤油をそんなに入れてと
叱責が漏れそうだが、
こいつの正体はうに醤油。
つぶ貝の刺身¥500をこのうに醤油に漬けて・・・
バクリとやる。
贅沢だ!
つぶ貝は生のものだが
臭みも肝の苦味も上等なもの。
うに醤油ではなく、そのままうにをのっけて、
もっと贅沢をさせてくれても良かったかもしれない。
甚平のヤロ~どの口が言ってやがんだ!と
お叱りが聞こえてきそうなのでこのへんで・・・
おでんをおかわりした。
白滝や昆布、油もんの多さに
普通は順番が逆だろとツッコミを受けそうだが、
大根の旨さに引かれたことや、
あぁ、結局玉子を我慢できなかったのねと
写真一枚でいろいろなことを
語ってくれている。
トイレで席を立ち、
商店街の端に位置する共用トイレに赴くと
とんでもないものに出くわした。
監視小屋だ。
このシロモノ。
別に皆さんの用を足す姿を監視するものではない。
立石の夜は予想以上に早い。
飲み屋の閉まりも二毛作のように9時を超えるお店よりも
8時や9時で閉めてしまうお店の方が
多いように感じる程だ。
23時を過ぎると夕方の
喧騒が嘘のように静まり返った商店街の傍らで
事件や事故がないようにと寝ずの番をする方が
この中に入るそうなのだ。
お得意先は老後はこの中に入る仕事に着きたいなどと
笑って言っていたが、静まり返った商店街の見張り役。
大変だろう。
いよいよ終盤戦。
まずはうでん¥700だ。
アクのように映っているのは
落とし玉子の白身が広がったもの。
そう2個目の玉子なのだ。
蓮華で掬うと
揚げと一緒に饂飩が絡む。
うどんはアツアツの出汁に負けない
讃岐系のツルツルシコシコしたものだ。
出汁の話は散々してきたので
お判りの通りの私の反応は・・・
やはり、旨い。
さらにおじん¥500。
おでん出汁に
牛スジとモツの旨みエキスの染み出たおじや。
はんなりと黄色いものは
嫁が怖くてキーボードが打てない。
口に入れると・・・
ふわ~っと旨い。
このおじん。
米の仕上げも心憎い。
汁をできるだけ吸い込まないようにと
硬めにパラッと意識して炊いているのだろう。
店じまいを始めた
丸忠蒲鉾店で嫁ようのお土産をお願いした。
写真が母上様にあたる方なのだが
大根の仕上げの秘訣を聞いてみると、
単純明快な答えが帰って来た。
家庭では無理よ。
立石に住んでいる大勢の人のために
沢山仕込むから色んな具の旨みを
大根が吸ってくれるのよ。と。
なるほど。
おでん屋の方を切り盛りする息子さんは私と同世代。
地元の先輩後輩と私のような一見さんが
和気藹々と集っているのをお隣の母上様が
誇らしげに見守る姿。
いいですねぇ。
冒頭の店先の写真は
数名程度の空いたものだったが
20時には満席御礼の笑いが飛び交っていた。
店先を通り過ぎる知った顔に
おう!だとか元気かよと投げかけられる言葉を見ると
地元の良さを改めて感じさせられるのだった。
美味しいごはんをご馳走様でした。
二毛作
葛飾区立石 1-19-2
03-3696-6788
14:00~22:00
牛スジの煮込み ¥400
甚平満足度 ★★★★★
甚平満腹度 ★☆☆☆☆
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それでは明日もお会いしませう