はぐら瓜の鉄砲漬け
(ウェブ画像)より
夏になるとぼくは崖の上の畑を思い出す
せまくて急な傾斜の道に足をしならせ
何列もの畝に沿ってはぐら瓜を収穫した
瓜は支柱の竹からずり落ちて
みどり児のように敷きわらの上で遊ぶ
緑の光が創る回廊の塑像たちとともに
はぐら瓜 はぐら瓜
背負い籠のなかで束の間の眠りをむさぼれ
母がささやく絶妙の手順を思い描きながら
はぐら瓜の両端を切り落として種を抜く
真新しい土管からは天日が見える
紫蘇や唐辛子の横たわる時空のトンネルだ
母が毎年つくり続けた鉄砲漬けは
甘辛い記憶とともに口中によみがえる
「そは感傷の味ぞ」 涙があふれる
ああ あの瓜が食べたいな
はぐら瓜の鉄砲漬けが食いたいんだ
青みの残った肉厚の鉄砲漬けが脳裏にちらつく
重石の下で鍛えられた青春の日々は
ゆらゆらと揺らめく郷愁の蜃気楼か
防人の居なくなった漬物樽がぽつねんと佇む
変哲もない家系のラセンは繋がったが
鉄砲漬けの継承はとだえた
歯グラでも噛めるというのに甘美な味は脳の中
ああ はぐら瓜の天日干しが食いたいな
ほどよく漬かったはぐら瓜の茶漬けが食いたい
青みの残る肉厚の鉄砲漬けがぼくを手招きする
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それほど美味しそうな詩だ
口中に唾が溜まってきた
言葉だけでそんな気にさせる・・・凄いや
そんな食べ物の記憶を持っている幸せ
いつの時代の誰にでもそれぞれにそういう記憶はあるのでしょうね
人間の五感の中でも、味覚は原始的な器官の一つなんでしょうね。
だから誰でもが、とびきりの記憶に残る食べ物を持っているんだと思います。
そころで、「はぐら瓜の鉄砲漬け」は、ネットでも取り寄せできるらしいのですが、天日干ししているか、人口調味料を使っていないか、そして漬け具合はどうかなど、不安は残ります。
その点、アップした画像の鉄砲漬けは、ほぼ理想に近い漬かり具合です。
これなら、さぞ美味いだろうなと期待できます。
コメントありがとうございました。
”ゆらゆらと揺らめく郷愁の蜃気楼か”の詩を読んだら、子供の頃の味を思い出したくなり、食べたくなりました。
ほんとに美味しかったですよね。
確かに、はぐら瓜のほかに、真桑瓜でも鉄砲漬けを作っていたと思います。
さらに金まくわという黄色の瓜もありました。
こちらはメロンに近い甘さで、果物感覚で食べていました。
どちらも夏休みの楽しさとともに思い出されます。
ありがとうございました。