かわたれどき
十二月半ばに転勤の辞令が出た。
翌日から皇居をはさんで反対側の郵便局へ出勤することになった。通勤時間は以前より短くなった。
職種が変わった際の規定に従い、二週間ほど局内での職場研修が行なわれることになった。課長が講師になって、保険業務の基礎的な知識を教えられた。
その間に、送別会と歓迎会が相次いで催された。
片や居酒屋チェーン店、他方も寿司屋の二階と似たり寄 . . . 本文を読む
瓢箪から駒
秋の将棋大会で保険課の蜂谷を破ったことが、吉村の予想もしない評判を呼んでいた。
同じ屋根の下に居ながら、自分の所属する課以外の職員に妙な対抗意識を持っている者が少なくないことを、つくづく感じさせられる顛末でもあった。
「あいつ今年も優勝できると思ってそっくり返っていたけど、おまえに負けてへこんでたぞ」
吉村を讃えるというより、蜂谷をくさすことに熱中しているのだ。
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指運
郵便局の公社化を睨んで、集配課への締め付けも更に厳しくなってきていた。民間企業を見学した足での業務研修や、デパート地下売り場での体験実習など、組織の活性化とサービス向上を念頭においてのスケジュールが頻繁に組まれるようになってきた。
流行の自己啓発セミナーにも中堅の職員を参加させ、さらには郵政局のホールに講師を招いて主任クラスの意識改革を図ったりした。
局内では班の編成を . . . 本文を読む