どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

(超短編シリーズ)114 『銀が泣いている』

2015-10-30 01:01:19 | 短編小説
   ぼくは田中くんと湖岸のホテルにいた。  20年前まで同じ職場にいて、ともに将棋が好きという趣味を通しての友だちだった。  昼休みになると、食事のあとの30分ほどで早指し将棋をさす。  勝負は互角と言いたいところだが、3回に1回ぐらいしか勝たせてもらえなかった。  職場での関係は、田中くんが突然退職し、郷里の長野に帰ったことで途絶えたが、その後も年に一度ぐらいは連絡を取り合 . . . 本文を読む
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ポエム109 『幻惑のカラスアゲハ』

2015-10-21 00:59:33 | ポエム
      カラスアゲハ     (昆虫エクスプローラ)より      あの蝶をたしかに見たと あの男は言い張るのだが 入江に打ち寄せる筏や丸太の上で ぴちゃぴちゃと跳ねる波の煌きではなかったのか   罰当たりにも女を組み敷いて 終わりのないパイル打ちに励むなか 股をひらいたままの女が あの蝶を見たかと問うたのだ   海の底から . . . 本文を読む
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ポエム108 『ねんねの合歓の木』

2015-10-13 00:25:58 | ポエム
       合歓の花     (季節の花300)より     夢見るような六月の夕暮れ 白い猫が空き地を横切っていった 縄張りを見回った帰りなのか それとも夕餉に間に合わせるためか   白い猫を見送ったのは今が盛りの合歓の花 吉原中の花魁に配れるほどの化粧刷毛を手に持ち 夜に向けて艶かしい時を用意する そのくせ眠くて眠くて瞼が閉じ . . . 本文を読む
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ポエム107 『ヒメオドリコソウの唇』

2015-10-07 02:19:11 | ポエム
       ヒメオドリコソウ     (城跡ほっつき歩記)より        ドガの踊り子は暗い表情をしているが ヒメオドリコソウは陽をいっぱい浴びて匂い立つ 唇に似た花びらは蝶やミツバチ用 春を迎えた歓びの合唱用   ほら 歓喜の歌が聞こえないか ベートーベンの第九ほど高らかではないが キュートな歌い手が輪になって 生きものの共 . . . 本文を読む
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