小説の芽に映画の花が咲く
「面白かったよ・・・・」
友人の薦めで、映画『ベンジャミン・バトン』を観に行った。~数奇な人生~というだけあって、確かに意表をつくストーリーが展開され、三時間に及ぼうかという上映時間にもかかわらず最後まで引き込まれてしまった。
80歳にも思える老人の体を持った赤ん坊が生まれるところから話は始まる。
時代は1918年、第一次世界大戦が終わった直後。街に群 . . . 本文を読む
『死ね死ねブルース』を知っていますか
2月15日(日曜日)たいへん残念なことがあった。
毎週のように聴いていた『キンキンのサンデーラジオ』が、突然の終了宣言によってこの日限りで終わることになったからだ。
番組冒頭、パーソナリティー・愛川欣也が涙声で、打ち切りに至った理由の説明をした。
表向きは、景気低迷によってスポンサーが見つからず、3月一杯での終了を上部から通告されたため . . . 本文を読む
噴火後の浅間山
東京で気温が21度を超えるとの予報につられて、土曜日から北軽井沢に行ってきた。
温泉に浸かり、畑の手入れや荷物の整理をしたいとの思いもあったが、2月2日と2月9日に噴火した浅間山の、その後の様子を知りたいというのが第一の理由であった。
軽井沢の町に入って大きく見え始めた浅間の山頂には、予想に反してほとんど噴煙が上がっていなかった.
もともと、こち . . . 本文を読む
カラス君、まだ死なんよ
これだから、カラスは嫌われるんだよ。
テレビのニュースを見てそう思った。
北海道の海か湖で、鹿が氷の割れ目に落ちてしまい、もがけどももがけども這いあがれない。
時間が経過し、鹿が弱ってきたと思うころ、急にカラスが数羽氷上に下り立ち、その中の一羽が嘴で鹿の鼻面をつついた。
窮地に陥った鹿を容赦なく攻撃し、いっそう弱らせようとする意図が見え見えだった。
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新潮名作選<百年の文学>より『家霊』(岡本かの子)
平成八年に刊行された雑誌特集号を、近頃ボチボチ読み始めた。
新刊で買ったまま12年間も放っておいたのは、ひとえに不精ゆえで言い訳のしようもない。
とりあえず短編小説35編を頭から読んでみて、コツンとぶち当たったものを取り上げてみる。
名の知れた作家ばかりで、なんのかんのというのは気が引けるが、まあ当方の好みで押し通す。
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少年たちにとって、マツ子の存在は眩しすぎるものだった。好奇心を最大に膨らませながら、戸惑い、戸惑いの後に排斥のポーズをとった。
学校が終わって家に帰るマツ子を追って、男子生徒たちは後方から囃し立てた。
「メンス、オンス、メンス、オンス」
二組に分かれて、単純な掛け合いを繰り返すだけなのだが、しばらくすると皆気が滅入ったようになって、声が小さくなった。
喜市も、将太や三郎とともに村はずれの雑 . . . 本文を読む
日が傾きかける頃、喜市は川漁師の父と連れ立って、カエル獲りに出かけた。ライギョの生餌にするため、こぶりの青蛙が必要なのだ。
沼に続く湿地には、蛙だけでも何種類も生息している。ニホンアマガエル、ニホンアカガエル、トノサマガエルに、食用蛙とも呼ぶウシガエルもいる。
そのあたりには、他に蛇や蜥蜴もいる。草の実や稲穂が間近にあるから、鼠も隠れている。だが、川漁師の目的は蛙だけである。そのカエル獲りに . . . 本文を読む