どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設19年目を疾走中。

松谷みよ子の『現代民話考』⑩最終回

2022-06-07 18:52:40 | 名作いいとこ取り
松谷みよ子さんが長年にわたって収集した日本の民話の数々の中から、その一部を紹介させていただいた。 初回では、歴史家色川大吉氏の推薦文「現代の民衆の心意現象を表現」を引用して、松谷みよ子さんの成し遂げた仕事の重要性に注目したが、実は他に二名の方が推薦の辞を寄稿しているので、末尾で劇作家木下順二氏の推薦文も引用して『現代民話考』12巻(立風書房刊)の拾い読みの〆としたい。 まずは<河童考>の続きで . . . 本文を読む
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松谷みよ子の『現代民話考』から⑨

2022-06-05 13:59:01 | 名作いいとこ取り
<河童考>つづき 公害を教えてくれた河童の話が続いたが、今度は「河童のお礼」という話を紹介する。 ①茨城県鹿島郡諏訪村安房(現鉾田町)の話 <明治二十年ごろのこと、どじょう取りの祖父は蝮(マムシ)に噛まれた時の用意にと毒消しを持って田んぼに出ていた。さっぱりどじょうが取れなくなったのでやめようかと思って畔を歩いていると、のたうちまわっている河童に出会った、蝮に噛まれたから助けてくれと手を合わ . . . 本文を読む
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松谷みよ子の『現代民話考』から⑧

2022-05-29 01:04:17 | 名作いいとこ取り
<河童考>つづき <田の神が山に入って山の神となり、再び里へ降って田の神となるという信仰と、河童の伝承はなんとよく重なることだろう。この伝承は九州に多いが、秋田の昔話に爺さんが山で火を焚いて河童をあたためてやる話があって、東北の河童も山へ入るのである。秋田の話の中では、冬山の河童もやはり河童と呼ばれているが、九州では冬、山に入るとヤマワロなどと呼び名も変わる。このヤマワロについては、もう十余年前 . . . 本文を読む
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松谷みよ子の『現代民話考』から⑦

2022-05-23 02:52:41 | 名作いいとこ取り
<河童考>つづき 前回は、河童が身をもって公害の危険性を村人に伝えた話であった。 当初、村人は河童が発した重大なシグナルを見落とし、田畑の汚染が続いたことでやっと気づいたという顛末だったが、そもそも河童の正体は何なのか。 <河童とは、その源は水神と聞く。長い歳月の間に零落して妖怪になったとはいえ、人間に、水がおそろしい、水をきれいにしてくれえと訴えるとは、なんと哀れなことであろうか。穴馬にあ . . . 本文を読む
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松谷みよ子の『現代民話考』から⑥

2022-05-17 00:37:31 | 名作いいとこ取り
<河童考>から 前回は<天狗による神かくし>から面白そうなところを拾い読みしてきたが、日本民話の代表的な存在として「河童」も長い間語り継がれてきた。 今回は、全国で採集されたたくさんの民話の中から、めぼしいものをいくつか紹介してみよう。 <1974年、すっぽりと雪に閉ざされた富山の利賀村に探報に入ったが、そのとき同行の金沢市在住の作家かつおきんや氏から、公害を告げに来た河童の話を聞いた。 . . . 本文を読む
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松谷みよ子の『現代民話考』から⑤

2022-05-09 02:27:56 | 名作いいとこ取り
<天狗による神かくし>から 〇次の話は、近県の埼玉県入間郡。名栗の森河原の浅見常次郎さんは、実家の青場戸へ行った帰り、夜道になって豆口峠上に来ました。すると見上げるような大きなお坊さんいて、ついてこいと言うのでゆくと、岩上に立って向こうの山まで飛んでみろ命令するのです。浅見さんはもし飛ばなくてもどうせ殺されるかもしれないので、死んだ気になって飛んでみるとアラ不思議、鳥のように軽々と飛べるのです。 . . . 本文を読む
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松谷みよ子の『現代民話考』から④

2022-05-07 02:06:00 | 名作いいとこ取り
<天狗による神隠し>から 前回は秋田県の阿仁町で採集された話だったが、今回の話もユニークで面白い。 〇福島県南会津。星盛氏という人の親類の人が神隠しにあったので山々を捜し歩いたが見つからない。四、五日して親類の者が一人古峯神社へ詣って許される事を願った。ちょうど代参の者が古峯山へ着いたと思われる頃、村近くの山に蒼ざめて立っているのを発見された。その人の後の話に、夜は村の山にいたが夜明けごろにな . . . 本文を読む
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松谷みよ子の『現代民話考』から③

2022-05-05 02:16:00 | 名作いいとこ取り
<天狗による神かくし>から 神かくしと言えば、天狗のかかわりを示唆するものが少なくない。 ここでは、はっきり「天狗」にさらわれたといった例を取り上げてみた。 <昭和四十七年の旧暦七月二十五日、この日は地獄の窯の蓋のあく日で、「山川せられん」というのに子供は暑いので、前の谷川でボシャボシャはしゃいでいた。家の孫も六つで豊というのが行こう行こうというので連れていった。なかなか遊びをやめんので田の . . . 本文を読む
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松谷みよ子の『現代民話考』から②

2022-04-29 01:10:46 | 名作いいとこ取り
 <第三章「神かくし考」より> もう一つ、高知の郷土史家である寺石正路さんの「土佐郷土民俗譚」から、次の一章を取り上げている。 「かかる時は失せ人を捜す方にて近所隣並はいふまでもなく町内村中総出を以て昼は鉦太鼓夜は炬火(タイマツ)にて野山残る隈なく探す其の月暗く風寂しき夜半鉦鼓の音陰に響き失せ人の名を叫ぶ声幽かに聞ゆる時は物凄き思ありて婦人小児等は恐れて夜出する能はぬこともあり。・・・・」 . . . 本文を読む
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松谷みよ子の『現代民話考』から①

2022-04-27 13:30:49 | 名作いいとこ取り
民話収集家の松谷みよ子さんが、意を決して著わした『現代民話考』(12巻)という本の最初の1巻だけ買ってあったので読み返してみた。 さっそく紹介したいのだが、まずは先達の歴史学者色川大吉氏の推薦文から引用させていただく。 <いつか誰かがやらなくてはならない仕事だと思っていた。その重要性は心ある人が思い続けていたものだが、その重量に圧倒されて、手を着けかねていた。現代の民俗、現代の民話の全体像を見 . . . 本文を読む
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