八手の花
(季節の花300)より
雨も降った 風も吹いた
山も噴いた 土砂も流れた
いつの年にもあったことだが
今年は特別だったと呟く者がいる
ハンパじゃなかったよ
なんで俺なんだと・・・・
生きるか死ぬかの瀬戸際で
身の不運を嘆いたのだが
降ってきたのは 怒りの雨
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秋の高空に、忘れ柿が三つ浮かんでいた。
山梨県の長坂町に建てた別荘に妻を移り住ませて、二年目に見る風景だった。
「みゆきさん、あれを見てごらん」
松村は道端にサイドカーを停め、傍らの妻に指差してみせた。「・・・・ほら、柿の実が陽を受けて輝いているよ」
すると、ぽうっと空を見上げていた妻が突然側車から降り、柿の木に向かって右手を挙げ小さく弧を描き始めた。
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ユウガギク
(城跡ほっつき歩記)より
カチューシャの花って知ってますか
汚れのない少女が髪飾りに付ける花のことです
カチューシャの花の香が五月の風に乗り
おじさんたちの青春を揺り起こすのです
カチューシャに付ける花は何がいいですか
薔薇にひなげしにマーガレット
たくさんの花弁は夢の数でしょうか
色 . . . 本文を読む
鬼灯
(季節の花300)より
お嬢さんがた 夕闇の中で鬼灯を鳴らさないで
赤い実を指先で揉みながら 種を取り出さないで
熟れた実を包む袋を いたずらに破かないで
緑から紅に変身する瞬間を うかつに摘み取らないで
時間を逆行することはできないと承知の上で
あなた方の無知を言い募るのは
根気よく抜 . . . 本文を読む