〇 糖尿や 主治医変われど ヌシ変わらず
〇 デキストリン 医師に教えし こともあり
〇 少食に 慣れし身 時代が追い付いて
〇 自主管理 任せられるや 引継ぎで
〇 ヘモグロビンA1Cの 浮き沈み
〇 律義なり インスリンの多寡 神ほとけ
〇 低血糖 体のサインに 頼りつつ
〇 血糖値 針さす場所の 悩ましく
〇 明年も 明日も同じ 記録つけ
〇 不自由も 喜び 質素に松かざり . . . 本文を読む
荏原伸二は、都心にある巨大企業の社員である。 東大を卒業し、入社まもなくから会社の開発部門の研究者として将来を嘱望されていた。 現在の住まいは、中央区勝どきに竣工したばかりの38階建高層ビルの17階。 入社五年目の2015年、独身者としては贅沢とも思える2LDKの一室に引っ越してきた。 朝は7時20分に起き、40分後に家を出る。 契約している大手のハイヤー会社から迎えの車が来ているので、それに運 . . . 本文を読む
〇 「なんだ、あのブラボーというのは」「ご隠居はベラボーといいたいんでしょ?」
〇 「政府というのはすぐ乗っかるな」「長友を次の公認にしたいんでしょ」
〇 「八咫の鴉が呆れてる」「一羽だけ飛んでますね、ご隠居」 . . . 本文を読む
考古学における新発見を発表した蒲原は、大学時代の同級生だった医師の新谷と詩人の曽根崎を自宅に招いて旧交を温めることになった。 きっかけは曽根崎からのお祝い電話の中で、かつて男子寮で夜通し語り合った「幽霊の正体」について、いまならどう思うかと尋ねられたことにあった。「アハハ、きみはちっとも変っていないな」 蒲原は呆れたように笑い、「・・・・新谷は医者になったというが、元気にやっているんだろうね?」 . . . 本文を読む
〇 「おい、あのいい男は何者だ」「へい、講談師(好男子)です」
〇 「正月に飾る餅を重そうに持ち上げたな」「へい、屈み持ち(餅)ですから」
〇 「鎌倉の人気ももう終わりだな」「はい、今年は(大雪で)カマクラの出番でしょう」 . . . 本文を読む
<千年風呂>の経営者である荷車三吉は、朝から青いため息をついていた。 女房の好恵が昨日とうとう家を出て行ってしまったのだ。 カラオケで知り合った若い男に夢中になり、いくら諌めても言うことをきかなかった。「離婚するのはいいが、原因はおまえにあるのだからビタ一文やらんぞ」 半ば脅して翻意させるつもりであったが、返事はあっさりしたものだった。「こんな借金まみれの風呂屋なんかに、いまさら未練はありません . . . 本文を読む
〇 アルゼンチン メッシ躍動 滅私奉公
〇 サッカーは 見ちゃダメ妊婦 早産危機
〇 エムバペは ハットトリック ハットリくん(動きが忍者のよう)
*エムボマを訂正=エムバペが正解でした。
〇 フランスは 連続ならず ラ・マルセイエーズ(団結の歌から追悼の歌へ)
〇 クロアチア 苦労の末に 国一体(民族紛争の過去)
〇 ネイマール頼みで 寝入った ブラジルサッカー
〇 モロッコが . . . 本文を読む
八百屋の店先で、店主と客のばあさんが大声で話している。「いやあ、まったく油断のならない野郎だ」 七十過ぎの親爺が、たったいま起こった出来事を手ぶりを交えて説明している。「ほんと、素早いんだから・・・・」 ばあさんも負けじと声を張り上げる。「追っかけたけど追いつくわけもない。ほれ、向こうの屋根の上でバカにしたようにこっち見てるだろ?」 店主が商売を忘れて遥か先の瓦屋根を指さす。「なんだか袋みたいな . . . 本文を読む
我が家にやってきた自走掃除機ル〇バ
広々としたフロアを念頭に作られたんだろうに
机や椅子の脚だらけの部屋で
あっちへ行っちゃゴツンこっちを向いちゃゴツン
2~3日ですっかり気の毒になってしまった
おまえ傷つかなかったかい?
ぼくは丸い性格だからぶつかっても大丈夫
相手もぼく自身も傷つかないように設計されているんだ
障害物に引き留められて立ち往生はするけど
動ける隙 . . . 本文を読む
バタンと音がした。 愛犬のトイプードルを追いかけていた庄三の胸が、びくっと反応した。 前方の木々の間に、さびれた別荘が見える。 音は、その建物の蔭から聴こえてきた。 庄三は、太った体を揺すって雑木林の小道を走った。 急いで走っているつもりだが、よたよたした小走り程度のスピードだったかもしれない。「リリー!」 声がかすれていた。 ほとんど悲鳴に近かった。 自分の声が、いやな予感を連れてきた。 (もし . . . 本文を読む
藤原新也の犬にたじろいだのはいつのことだったか
ほんとうに『メメントモリ』のなかだろうか
人間は犬に食われるほど自由だと呟いた男の
年老いた今をNHKのドキュメンタリーで再確認した
しかしニコンの望遠レンズを手動でブラしながら
鉄砲百合を撮っていたのは藤原新也の幻だ
黄色い息をはきながら死にゆくものの気配を嗅ぐ犬
それを己が食われるが如 . . . 本文を読む
晩秋の黄昏どき、銀座八丁目の角に着物姿の男が佇んでいた。 汚れたたっつけ袴に錦半纏をまとい、頭には翁頭巾を載せている。 足元は草鞋を履き、見知らぬ場所で途方に暮れたように目の前の通りを眺めていた。 ここは新橋に近い金春通りのどん詰まり、博品館にも近い一画である。 デパートやブランドショップから流れてきたというより、この一帯を好んでうろつく通行人の姿が見られた。 男の商売は黄表紙などで見かける飴売 . . . 本文を読む
〇 「日本サッカーベスト8逃す」とかけて 「運じゃない能力の差(無限大)とときます」
そのこころは 「PK能力が8との差をを∞にした」でしょう
* ここまでの健闘は見事だったが、クロアチア戦はシュートの力強さ・正確さに欠けた
〇 「銘酒・越乃寒梅」とかけて 「ゴールキーパー権田」とときます
そのこころは どちらも「銘酒(名手〉の誉れが高いが上には上がある . . . 本文を読む
謹厳実直で知られた亭主の塙謙吉が死んだのは一昨年の秋だった。 翌年の年賀状を欠礼し、代わりに歯科医だった謙吉の死を知らせるハガキを三百枚ほど書いた。 当然のことながら、元旦に届けられる郵便物は目立って減り、謙吉あての郵便物は、医療器具メーカーや業界団体からのものを含め十数通となった。 妻の澄子に来た賀状も十枚ほど、出した数より少ないのはいつものことだった。 謙吉が生きていたときは、毎年スチール製 . . . 本文を読む
世の中でサイババがブームになっていたころ
ぼくは身体術に凝っていた彼に誘われて
大学の体育館で身体術のイロハを説かれた
阿吽の動作から手ほどきしてくれたが
なんだかインド的な思想でヨガを連想した
あ・え・い・お・う~~ん
両腕を上にあげて胸を広げ気を吸い込む
胸を掻き抱いて全身に気をめぐらせ
体を小さく折ってう~んと息を吐く
彼と出 . . . 本文を読む