どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(45)

2008-04-30 01:48:23 | 温泉
    端午の節句にサクラ満開  かつて弘前公園で見たサクラは、桜花の耀きが違っていた。  関東のソメイヨシノとは種類が異なるのか、白色の艶が匂うようだった。  色は光の表情だから、清らかでみずみずしい古木の佇まいは、城山を包む空気と歴史の反映かと思われた。  白砂川の橋を渡ってすぐの集落に見つけたサクラは、群集に誉めそやされることはなくても誇らしげに咲いていた。  この家の繁栄を祝福し、代 . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(44)

2008-04-29 02:55:21 | 温泉
     六合村が美しいわけ  四月最後の日曜日に重伝建にも指定されている六合村赤岩地区を通り過ぎた。  いつもの春のように、足元にはポピーや水仙、シバザクラ、目の高さに海棠、山吹、れんぎょう、レンゲツツジ、木々の奥には咲きかけの辛夷と山桜。  自然環境に恵まれたいい村だと思っていた。  だが、この日通りかかって、休日の午前中から村人が総出で道沿いの整備に精を出しているのに出食わした。  あ . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(43)

2008-04-22 07:16:08 | 紀行文
    大吉&クーペ  四月半ばに前期高齢者三人で春の房総を旅した。  もう一人の仲間だった男がこよなく愛した上総一の宮の旅館に泊まり、彼の遺影を飾ってささやかな追悼の宴を催したものだった。  文芸雑誌の新人賞をとって前途を有望視されながら、作家として大きく花開くことはなかった。  なにが原因かは分からないが、才能がありながら彼は上手く時流に乗り損ねたようだ。    もっとも読まれることが才 . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(42)

2008-04-16 01:43:54 | 音楽
          『ダメ親父』のその後  四月十三日、NHKホールで「クーペ & Shifo」コンサートを観た。3000人収容のホールがほぼ満員だったから、人気のほどが分かろうというものである。  古くさい言い方だが、老いも若きも思い思いの楽しみを期待して集まる気楽な会場風景だった。  第一部はShifoさん中心のステージ。  日本レコード大賞の金賞に輝いた「気分上々↑↑」を初めてナマで聴か . . . 本文を読む
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行旅死亡人

2008-04-04 16:05:52 | 短編小説
 官報を見ていると、私はときどき粗い印刷用紙の中に吸い込まれていくのを感じるときがある。  頬杖をついた掌がうっすらと汗ばむ五月の半ば、誰も居ない事務所で小さな活字の群れに向き合っている。  私は自分に与えられた仕事を逸脱して、知らず知らず紙面の一角に注意を奪われているのだった。  政令や告示といったものがある。  叙位、叙勲といった華やかな字句もゴシック活字で黒々と刻印されている。  だが私の目 . . . 本文を読む
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