どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

(超短編シリーズ)28 『誑かすのはおまえだ』

2010-03-27 01:08:37 | 短編小説
     (誑かすのはおまえだ)        人を化かすのはタヌキかキツネ、誑かすのは狡猾なニンゲンと相場は決まっている。  桧枝岐の山奥から東京に出てきた一人の青年、山仕事をしていた時に狐の嫁入りに出逢った経験を持つ。  悲願の上京を果たした際には、上野に着いたとたんに詐欺師の男にたぶらかされた。 「兄ちゃん、誰を探してるんだい?」 「会社の人が迎えに来てるはずなんですが・・・・ . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)27 『竹の花』

2010-03-19 03:16:25 | 短編小説
     (竹の花)  大和の北西に位置する讃吉の郷(現在の北葛城群広陵町あたり)に、とりわけ美しい竹林がひろがる山里があった。  春は筍を掘る村人たちの静かな声が斜面をわたり、夏は山からの涼風を取り込んで竹の梢がさやさやと触れ合った。  秋から冬にかけては竹落葉が散り敷き、山にまつわる言い伝えや昔話をつつみ永らえさせた。  とりわけ月の出が美しい中秋のころは、ススキも萩も競うように風 . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(112) 『「劇画通り」行きつ戻りつ』

2010-03-11 05:06:43 | エッセイ
     (「劇画通り」行きつ戻りつ) 『テスト・コースの青春』を書籍化し、「貸本マンガ史研究」の三宅秀典氏にお送りしたところ、劇画草創期~隆盛期にかけての知られざるエピソードがいくつか浮かび上がってきた。 桜井昌一氏の「東考社」が、国分寺から府中市、埼玉県毛呂山町へと移り、そこで三宅氏と深い関わりができたことも、ぼくは知る由もないことであった。 関わりのあった青林堂編集者T氏から間接的に問い合わ . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(111) 『深大寺だるま市』

2010-03-06 09:30:00 | 行事
     (深大寺だるま市)        3月3日、4日は、深大寺恒例のだるま市だ。  縁日が好きで毎年行くのだが、季節のせいかなかなか快晴というわけにはいかない。  ここ何年か思い出しても、二日のうち一日は雨に祟られる日があったような気がする。  ことしも危ぶまれたが、二日目なんとか降らずにお参りすることができた。                   参道も境内も例年にない賑わい . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)26 『うなぎの夢枕』

2010-03-03 05:25:20 | 短編小説
     (うなぎの夢枕)       所沢方面から国道30号線を通り抜けた先に、レトロな家が軒を連ねる街がある。  埼玉県比企郡小川町、和紙で有名な町だ。  自動車がやっとすれ違える程度の橋を渡り、突き当りを左折したところに<女郎うなぎ>と看板を掲げた木造の店がある。  片側一車線程度の狭い道だが、国道254号の表示もあるから、この通りが旧川越街道だったらしい。  古びた味わい . . . 本文を読む
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