(誑かすのはおまえだ)
人を化かすのはタヌキかキツネ、誑かすのは狡猾なニンゲンと相場は決まっている。
桧枝岐の山奥から東京に出てきた一人の青年、山仕事をしていた時に狐の嫁入りに出逢った経験を持つ。
悲願の上京を果たした際には、上野に着いたとたんに詐欺師の男にたぶらかされた。
「兄ちゃん、誰を探してるんだい?」
「会社の人が迎えに来てるはずなんですが・・・・ . . . 本文を読む
(竹の花)
大和の北西に位置する讃吉の郷(現在の北葛城群広陵町あたり)に、とりわけ美しい竹林がひろがる山里があった。
春は筍を掘る村人たちの静かな声が斜面をわたり、夏は山からの涼風を取り込んで竹の梢がさやさやと触れ合った。
秋から冬にかけては竹落葉が散り敷き、山にまつわる言い伝えや昔話をつつみ永らえさせた。
とりわけ月の出が美しい中秋のころは、ススキも萩も競うように風 . . . 本文を読む
(「劇画通り」行きつ戻りつ) 『テスト・コースの青春』を書籍化し、「貸本マンガ史研究」の三宅秀典氏にお送りしたところ、劇画草創期~隆盛期にかけての知られざるエピソードがいくつか浮かび上がってきた。 桜井昌一氏の「東考社」が、国分寺から府中市、埼玉県毛呂山町へと移り、そこで三宅氏と深い関わりができたことも、ぼくは知る由もないことであった。 関わりのあった青林堂編集者T氏から間接的に問い合わ . . . 本文を読む
(深大寺だるま市)
3月3日、4日は、深大寺恒例のだるま市だ。
縁日が好きで毎年行くのだが、季節のせいかなかなか快晴というわけにはいかない。
ここ何年か思い出しても、二日のうち一日は雨に祟られる日があったような気がする。
ことしも危ぶまれたが、二日目なんとか降らずにお参りすることができた。
参道も境内も例年にない賑わい . . . 本文を読む
(うなぎの夢枕)
所沢方面から国道30号線を通り抜けた先に、レトロな家が軒を連ねる街がある。
埼玉県比企郡小川町、和紙で有名な町だ。
自動車がやっとすれ違える程度の橋を渡り、突き当りを左折したところに<女郎うなぎ>と看板を掲げた木造の店がある。
片側一車線程度の狭い道だが、国道254号の表示もあるから、この通りが旧川越街道だったらしい。
古びた味わい . . . 本文を読む