どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(115) 『ムクドリの巣立ち』

2010-06-23 13:03:39 | 小鳥
     (ムクドリの巣立ち)  先日、近所の小父さんに呼び止められた。 「お宅の戸袋のあたりにムクドリが巣を作っているみたいですよ」  見上げると、二階の小庇の上に虫をくわえたムクドリが周囲の様子を窺っている。 「ほう・・・・」  自分の家のことなのに、ぼんやりしていたことを指摘されて、内心あわてたような思いがあった。  同時に、よその人はよく観察しているものだと、自分の日頃の無 . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)37 『氷解の時』

2010-06-17 03:06:03 | 短編小説
     (氷解の時)        夜中の十二時に先輩の友野が、いきなりぼくに質問をした。 「きみ、最近なにか怖いことにでも出合った?」 「そうだなあ、うちの親父が急に出てきて、もう一度一緒にやり直そうって言われたことですかね・・・・」 「出てきたって、田舎から?」 「いや、闇の中からです」 「と、いうと・・・・」 「ええ、死んでもう十五年になる親父なんです。顔も忘れかけていた . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)36 『排水溝からの植物』

2010-06-08 00:52:45 | 短編小説
     (排水溝からの植物)      東京のあるマンションの駐車場で、ぼくは不思議な植物を発見した。  コンクリートが地面を覆いつくす無機質空間に、あってはならない緑の葉が姿を現したのだ。  そこには、五十台ほど収容できる広いスペースが広がっていた。  その駐車場のど真ん中に、植物が姿を見せた。  といっても、植物がコンクリートを割って出現したわけではない。  駐車場には水は . . . 本文を読む
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