行き帰りに見る「紅葉」
今年は紅葉の当たり年だ。早い時期から色づきはじめ、この調子では近辺のスポットも早々に手仕舞いになるかと思っていた。
ところが、いったん中だるみになったあと、朝晩の寒さが幸いしたのか思いがけない復活をとげたのである。
しかも赤みが一段と深くなる。ここ数年の記憶を手繰ってみても、日に日に魅力を増すケースは他に思い出すことができない。
白根山頂で紅葉のはしり . . . 本文を読む
サナエちゃんは、いま「リコン」の危機におちいっていた。
学校から帰ってきて、ドアをあけたとたんに、パパがママをなぐるのを見てしまったのだ。
「あなた、わたしをなぐったわね。わたしやサナエには絶対に手をあげないって約束したのに、ウソついたのね・・・・」
ママはひざを突いたまま、下からパパをにらんだ。
そしてくるりと振りかえり、サナエちゃんを抱きしめた。
「だいじょうぶよ。心配しなくてもだいじ . . . 本文を読む
小布施再び・『高井鴻山記念館』を観る(5)
北斎の下絵をもとに鴻山が描いたとされる画の中で、極彩色の四曲屏風<象と唐人図>はもっとも有名である。
北斎が江戸の見世物ででも見たのであろうか、象の巨大さが驚きと共に表現されている。
樹木との丈比べ、象使いとの大きさ比較、誇張というより目の当たりにした存在感の率直な表現であろう。
その下絵をもとに、鴻山は存分の筆づかいをみせた。
. . . 本文を読む
小布施再び・『高井鴻山記念館』を観る(4)
まずは、井戸についての説明文を再掲する。画像が小さいので、たぶん読み取れないだろうと思うからである。
<小布施は扇状地のため地下水が低く、井戸を掘ることが困難であった。村内の井戸は数える程しかなく、住民は日常川の水を用いた。
高井家の井戸は殊に水量が豊かで「上町の井戸」と呼ばれ、事あるごとに付近の住民に利用された。
ある年、松川の . . . 本文を読む
小布施再び・『高井鴻山記念館』を観る(3)
記念館『脩然楼』は、もともと鴻山の祖父作左衛門が江戸時代に建てた京風建築の隠宅を改築したもので、中庭を囲むようにいくつかの棟がつながっている。
鴻山はこの建物内でさまざまな人物と会い、国の将来像について語り合ったようだ。
幕府の勘定奉行小栗忠順(上野介)に再三資金援助を要請される関係にある一方、過激な尊皇攘夷論者とも会い激論を戦わして . . . 本文を読む
小布施再び・『高井鴻山記念館』を観る(2)
高井鴻山の揮毫による書や幟は勇壮で、地元の民衆を元気づけるシンボル的な意味を持っていたのではないだろうか。
神社の鳥居や寺の山門を背景にはためくさまを想像すると、見上げる人々の心に勇気と希望がふつふつと湧き上がる気がするのである。
その裏づけといおうか、いつも民衆の側に目を向けていてくれる鴻山への信頼が感じ取れる。
北信州の各地に奉 . . . 本文を読む
小布施再び・『高井鴻山記念館』を観る(1)
志賀高原から降りてきて、成り行きで小布施に向かうことになった。
前回寄り損ねた『高井鴻山記念館』を観る機会が、こんなに早く来るとは思っていなかった。
前に写真に撮った東門から、昔風の小路を歩いて黒々とした建物に近づいていった。
入ってすぐのチケット売場で券を買うと、一応順路が示されていて東門は出口に当たることを教えられた。
「どちら . . . 本文を読む
紅葉の志賀草津高原ルートをゆく(5)<山ノ内町>
292号を進んで行くと、かなり前方で立体交差になっているのが見て取れた。
標識から、下を通るのが403号であることがわかった。しかも左へ行けば小布施ではないか。
「決定!」
胸の内で叫んで側道を降りた。
降りてみると、憶えのある風景が飛び込んできた。頭上を通る国道のための橋桁が、妙な圧迫感をともなって語りかけてくるのだ。
そ . . . 本文を読む
紅葉の志賀草津高原ルートをゆく(4)<蓮池・丸池~湯田中温泉>
平地に降りると、下界は夏日になっていた。
オリンピックの恩恵を享受して、快適な舗装道路292号を一路長野市方面へ疾駆する。
右手に湯田中・渋温泉郷らしい川沿いの町が見えてきた。(ああ、あそこだな)と、見覚えのある風景にほっとする。
ところが、かつては川を越えさえすれば簡単に行けたはずなのに、直線道路がドーンと敷かれ . . . 本文を読む
紅葉の志賀草津高原ルートをゆく(3)<渋峠~蓮池・丸池>
志賀高原はスキー場で有名だが、ほかにもハイキングコースやトレッキングコースがあり、若者にも中高年にも人気があるようだ。
今回たまたま通りかかった蓮池の紅葉は、白根から渋峠を越えて堪能してきた山岳ルートの美しさとは別に、点在する池への関心を呼ぶものだった。
ドライブ時点では池の名が判らなかったが、蓮池は文字通り水面に蓮と紅 . . . 本文を読む
紅葉の志賀草津高原ルートをゆく(2)<草津白根>
白根山レストハウス横の駐車場に入り損ねたおかげで、先ほど遠望したクマザサと紅葉のコントラストを下から見上げることができた。
全山紅葉というのも好いが、緑のなかに、ぽっ、ぽっと彩りを配した眺めも心地よい。
草や木の呼吸が、清々しい山の気となって上空の青に吸い込まれていくようだ。
日本にはいろいろなスカイラインがあるが、秋のこのル . . . 本文を読む
紅葉の志賀草津高原ルートをゆく(1)<草津白根>
十月四日(土曜日)前日とは打って変わって抜けるような秋晴れになった。
急遽、飲み物だけ持って草津白根方面へ向かう。
北軽井沢でもウルシやツタの紅葉が始まっていて、今年は全国的に紅葉が早そうだというので、なんとなく気が急いたのだ。
草津経由で292号をゆく。朝早いのにけっこうクルマの出が多い。近県ナンバーが目に付くので、これは情 . . . 本文を読む
信州路寄り道ドライブ(4)<小布施~中野~飯山~野沢温泉村>
小布施を出たのが十二時過ぎ。道草ばかり食っていると、目的地の野沢温泉にはなかなか行き着かない。ルートさえ把握してないのだから、ひたすら過去の記憶を繋ぎ合わせて走るしかなかった。
幸い目移りのする旧跡などに出会わなかったから、目の前の道路を標識頼りにひた走った。
信州中野、飯山といったところを通過していったのだが、正確 . . . 本文を読む
信州路寄り道ドライブ(3)<小布施>
北斎が小布施を訪れ、この地に数多くの肉筆画を残したおかげで、われわれは現在その恩恵にあずかっている。
それもこれも、高井鴻山という資産家で芸術・文化に理解の深い人物が小布施に居たからである。
メディチ家の昔から、芸術・文化の発展にはパトロンが大きく関わっている。
北斎にしても、居心地のいい住まいとアトリエまで提供してくれる高井鴻山は、存 . . . 本文を読む