（超短編シリーズ）１２１ 『月夜と黄金虫』

  　小市の家では、ジイちゃんの寝床を囲んで家族のものが不安そうに顔をよせている。 「もうそろそろ町田先生が来てくれる頃なんだが・・・・」と父。 「ずいぶん苦しそうね。見てるのつらいわ」と母。「・・・・ヨシコ、お前はもう小市を連れてリビングに戻りなさい」 　うながされて、ヨシコは一瞬とびのくように跳ねた。 　立ったまま覗き込もうとしていたところなので、重心の掛け方がちぐはぐにな . . . 本文を読む

ポエム214 『キウイに捧げる紫綬褒章』

  　　　　　キウイ・フルーツ     　秋は実りの季節　だが 　厄災の季節　でもある 　 　いざ収穫と心待ちしていた　その日 　とつぜんの気絶で　収穫されかけた   　くら～い　くら～い　明るい 　気持ちいいだろう　と　ピコ太郎が笑う   　これはきっと　リスの仕業にちがいない 　隕石に見せかけて　両手でツブテを投げた . . . 本文を読む

どうぶつ・ティータイム（２１８）『紅葉・太子堂・峠・廃墟・浅間山』

    　　　　北軽から　　　　鬼押し出しへ   　１０月の末に北軽井沢の家で１週間ほどのんびりした。 　紅葉はかなり進んでいたが、王領の森近くのグラデーションがきれいだったので、クルマを停めて大急ぎで撮った。 　このまま進むと鬼押し出し有料道路にぶつかるのだが、無料の側道を通って国道１４４号へ出た。 　大津から草津への坂道をたどり、途中から六合村へ通じ . . . 本文を読む

ポエム213 『かやつり草は何思う』

  　　　　　蚊帳つり草     　かやつり草が道端で末枯れていた 　子供たちに人気があったのはいつ頃だったかな 　秋の初めには寄ってたかって引きちぎり 　茎を割いて蚊帳にしたり絡ませて引っ張り合ったり   　ところがね　近頃じゃ誰も興味を示さないから 　青々とした三角形の茎が崩れ 　切れ味のいい葉っぱも枯れ始めてしまった 　うしろの . . . 本文を読む