どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設19年目を疾走中。

ポエム369 『真綿色のシクラメン』

2023-12-31 01:12:00 | ポエム
  繭玉   (画像はウィキペディア)より   真綿って見たことありますか 真綿色したシクラメンほど清しいものはない、と 小椋佳が詞にしたあの真綿です   真綿は蚕が作る繭玉のうち生糸にできない品質のものを 苛性ソーダなどで処理し水洗いの後 繭の繊維を伸ばして重ねたものです   色はやや黄色みが乗った白とでも言いましょうか 真珠の色に近いかもし . . . 本文を読む
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思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(8)

2023-12-29 01:48:00 | 連載小説
      キリキリシャン 今年こそ結婚をと誓いあった矢先に、久美の祖母が亡くなった。何年かぶりの寒波に見舞われた二月半ば、一週間ほど臥せったあと入院して三日目に還らぬ人となった。 最期は呼吸困難に陥り、正視できなかったと久美が涙ぐんだ。医師が示す肺のレントゲン写真は、壊死した細胞の墓場と化していた。酸素吸入でも軽減できない肺炎の苦しみが、久美の話から想像できた。「ごめんなさい、つい取り乱してしま . . . 本文を読む
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ポエム368 『トマートー』

2023-12-27 01:33:00 | ポエム
我が家の隣人の外国人が 何を思ったか9月頃トマトの種を播いた   市場ではそろそろ品薄になる時期で 露地栽培のトマトは撤収の最中だろう   ちょっと外人さん 今ごろ種からというのは遅過ぎませんか   言葉が出てこないので 胸の内だけの思いである   ところが何週間か過ぎると トマトの種がビッシリと芽吹く   早く間引い . . . 本文を読む
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思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(7)

2023-12-25 00:00:20 | 連載小説
      草津にて なぜ、そんな気になったのだろう。湯もみを見ようなどという気に・・・・。 湯畑をひとめぐりしたとき、右手の古びた小屋から入場開始を告げるアナウンスがあり、鼻にかかった案内嬢の呼び込みに好奇心をくすぐられたという面はたしかにあった。 吉村は、祭りや見世物に人一倍の興味を持っていた。 ただ、人ごみの隙間に仄見える影のようなものを意識する癖があって、子供のころから手放しで騒ぐといった . . . 本文を読む
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紙上『大喜利』(42〉

2023-12-23 00:10:00 | 大喜利
〇 「とうとう東京地検の強制捜査が入ったな」「久しぶりに特捜が本気を出しましたよ」   〇 「安倍派だけかと思ったら二階派もやられたぞ」「アベの陰に隠れてうまくやっていたのにね」   〇 「屋上屋を重ねるというのはこのことだな」「土台がしっかりしてないのに無理に建て増ししたからですか」   〇 「ついこの前までは最大派閥でキングメーカーだったから倍安心(安 . . . 本文を読む
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思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(6〉

2023-12-21 03:27:05 | 連載小説
      飛ぶ 四月二十日の逓信記念日に永年勤続を表彰された課長代理が、問われるまま苦労話を披露した。報告がてら職場巡りをしている最中だった。「勤続四十年とは驚きました。いろんなことがあったんでしょうね」 水を向けられると、もう止まらない様子だった。「当時はね、臨時補充員という身分で入って、一年間じっくりと勤務態度を見られたもんだ。まあ見習い期間だから、必死に働いたなあ。・・・・きみらのように採 . . . 本文を読む
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思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(5〉

2023-12-19 02:17:17 | 連載小説
     日々是好日 マリオン・クロックの前は、人ごみでごった返していた。 有楽町駅から流れてくるJR利用客と、真近の地下鉄銀座駅から湧き出てくる乗客が一緒になって広場にあふれていた。 久美はこの場所なら待ち合わせに最適と考えたのだろうが、吉村は人出の多さに不安を感じていた。 待ち合わせ時刻の十一時までに、久美の姿を見つけることができるだろうか。 吉村は車道と歩道を隔てる金属フェンスに寄りかかって . . . 本文を読む
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思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(4〕

2023-12-17 00:31:00 | 連載小説
     逃げる 朝から霙もようの天候になっていた。 ここ数年暖冬が続いていて今年も例外ではなかったが、ときおり寒い日がやってきて人々をあわてさせた。 吉村は朝一番の速達を配達し終えて、次の便に備えていた。濡れた合羽は腰高の丸椅子にかけてある。室内の暖房によって少しずつ乾きはじめていたが、床に滴った雫がその染みを拡げていた。 窓外に目を転じると、近くを通る首都高速道路の入口がスキーのジャンプ台のよ . . . 本文を読む
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思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(3〉

2023-12-15 00:12:00 | 連載小説
    舟艇暮色 十月のある一日、吉村は休みをどのように過ごそうかと迷ったあげく、スポーツ新聞に載っていたレース・ガイドに誘われて多摩川競艇に出かけることにした。 山男の彼とギャンブルの間に、親和するものがあるようには思えなかった。しかし相性はともかく、彼自身は遥か以前から賭け事に惹かれる自分の性質に気付いていた。「おれだって、破れたり崩れたりすることはあるよ・・・・」 金銭だけの賭博ではなく、人 . . . 本文を読む
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思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(2〉

2023-12-13 00:36:36 | 科学
     紫陽花 郵便配達中の職員が犬に咬まれたというので、集配課は大騒ぎになっていた。 広いフロアの窓に面した課長席を取り巻いて、三人の男たちが声高に話し合っている。真ん中で受話器に向かって頭を下げているのは、定年間近の課長である。断片的に聴こえるやり取りから察すると、総務課長の指示を仰いでいるらしかった。 吉村はその日二度目の速達を配達して、ちょうど戻ったところだった。次の便まで若干の手空き時 . . . 本文を読む
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思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(1)

2023-12-11 00:32:00 | 連載小説
     黄金の紐「郵便屋さん、そりゃないよ」 遠くから凛とした声がひびいた。 春とはいっても、まだ寒気が緩むまえの朝十時である。その滞った空気を貫いて、容赦をしない女の声がぴしりと飛んできた。 吉村はおもわず歩みを止めて、からだを固くした。二十センチほどの細い銀線が背後で煌き、彼の後頭部を光のように射貫いていったのを、はっきりと意識した。(なるほど、神様の目は誤魔化せないな) それが女の声だとわ . . . 本文を読む
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紙上『大喜利』(41)

2023-12-09 02:54:00 | 大喜利
〇 「国民をなめ切ってるな」「ご隠居、ご立腹ですね、もしかして政治資金のことですか」」   〇 「ノルマ以上にパー券売った分はポッポに入れてもいいことにしたんだと」「もともと緩い政治資金規正法が独り歩きを始めたみたいですね」   〇 「暗部派の幹部3人はそれぞれ1年で1000万円のキックバックを受けていたらしいな」「通算1億円以上ですからね、甘い汁とはこのことでしょうか . . . 本文を読む
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ポエム367 『地球は借り物』

2023-12-07 02:35:00 | ポエム
いつも拝見するブログの記事の中に 地球は子孫からの借り物です・・ という石碑の写真が掲載されていた   ふと思い出したが誰の言葉かわからない 地球を汚さずに子孫に渡すようにという願いだが 大型台風や洪水・山火事など地球を汚した罰をすでに受けている   気候変動と化石燃料に関係性はない 御用学者の説を持ち出したトランプを グレタさんが睨みつけた   . . . 本文を読む
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川柳復活12 『じじいの時事ばなし』

2023-12-05 02:05:30 | 川柳
〇 さあCOP28(首脳級閣僚会議〉 メンツそろって成果出た?(化石燃料使用削減については具体策決まらず〉 〇 COP28 再生可能エネルギー発電量 3倍に(2030年までに110か国誓約〉 〇 温室効果ガス排出 売り買いしても 効果なし(その場しのぎの削減〉 〇 まだ間に合う 悲痛な叫びも 馬耳東言(グレタさんの声も届かなかった〉 〇 愚低レス(グテーレス国連事務総長)と 侮る世界の 地 . . . 本文を読む
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川柳復活11 『じじいの時事ばなし』

2023-12-03 00:18:00 | 川柳
〇 つつがなく 過ぎし日 ガザは筒だらけ(日本は平和なの?) 〇 逃げ惑う ドッジボールの 敵味方(ハマスはイスラエルの攻撃で一方的に逃げ惑うのか) 〇 阪神は アレ?で頂点(日本シリーズ) 大賞(流行語)も 〇 岡田(監督)さん 掛布・バースを しのぐ締め(大ホームラン) 〇 大相撲 弱い大関の 生き残り(大関・霧島が面目保つ) 〇 熱海富士 あたふた突っかけ 自滅する(対霧島の事実上 . . . 本文を読む
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