ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

彼女たち―性愛の歓びと苦しみ

2008-12-27 18:57:44 | Weblog
J.B.ポンタリス著、辻 由美訳。みすず書房刊。

フランスの精神分析学の長老であるポンタリスによる39編の「愛」の物語。
精神分析学者による本ではあるけれども、性愛の分析ではなく、エッセイ。

フランス人と日本人の違いは多少あるかもしれないけど、
「男性は、こんなふうに感じているんだ。へえ」という感じだった。
プルーストの『失われた時を求めて』は、どうも感覚的にしっくりこなくて、
しかも恐ろしいほど長いから、結局途中で読むのをやめてしまったのだけど、
この本のように短編なら面白く読むことができる。

私は、高校生のとき『源氏物語』を読み、
「通い婚」こそが結婚の理想の姿ではないか、と思って、実は今でもそう思っているのだけど、
この本を読んで、ますますそう思うようになった。

本当にありのままの相手を愛することはとても難しい。
愛することじたいが、幻想と現実の混淆なわけだし、
そもそも安定した愛情の状態の持続って、あまり想像できない。
制度としての結婚の持続は、なんとなく想像ができるのだけれど。

人は多かれ少なかれ、みなナルシストなわけだから、
うまく、その世界にひたったほうが幸せなんだろうと思う。
でも、他人を愛することによって、その円環にほころびができて、
時たま、すごくハマってしまうことがある、と。

つくづく、男性よりも女性のほうが、生命力があるなあ、と感じるのは、
単に、私に生命力があるというだけなのだろうか。