ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

ギリシアの泉

2008-12-13 13:54:55 | Weblog
シモーヌ・ヴェーユ著 冨原 眞弓訳 みすず書房刊。

最初にこの本を読んだのは、今から7~8年前。
先日、ギリシャのアテネに行き、パルテノン神殿を見た後、その麓にあるアゴラを散策していたとき、
ふとヴェーユの著作が思い出された。

ギリシャの神話や哲学について、何かを語るほどの知識はないし、
ヴェーユの思想について何かが書けるとも思っていない。

ただ、もし、会うことがかなうなら、ぜひ会ってみたい人の一人はシモーヌ・ヴェーユだ。
もしかしたら一番会ってみたい人かもしれない。
残念ながら1943年に亡くなっているので無理だけど。

ヴェーユは、ギリシャ語原文からの翻訳や、ギリシャ思想の研究を遺している。
この本は、それを集めたもので、 いつもどおり冨原さんの訳文はとても読みやすく、
私のように体系だって学んだことのない人間でも、ちゃんと読み通せる。

しかし、やはり感覚的にわからないところが多くて、
最初に読んだ時は、ぜひギリシャに行って、そこの空気を吸ってみたいと思ったものだった。

今回、実際に行って、ギリシャの偉大な哲学者たちが哲学を育てた、
まさにその建物群があったところに自分の足で立ったとき、
なんだかすごく偉大なものに、ほんの少しだけ触れることができたような気がした。
そして、少しずつながら、ヴェーユと会話をする準備ができつつあるような気もした。

私がヴェーユを読むとき、まるで亡き母と話しているような錯覚を覚える。
残念ながら私は母と学生時代に話ができなくなってしまったので、
社会人になってから、「労働」について、話をする機会がもてなかった。

以前、仕事について悩んでいたとき、ヴェーユが遺した「労働」についての省察を読んで、
まるで母と「働くこと」について話しているような気になった。
そして自分の中で、少しずつ整理ができるようになった。
いま私は自分の仕事が大好きで、働くことじたいが大好きだけれども、
それは、ヴェーユの著作に出会ったおかげかもしれない。

ヴェーユのギリシャ関連の本も、これを機会にもう一度読み直してみよう。