ホセ・クーラは現在、中東オマーンの首都マスカットにある王立歌劇場マスカットで、レオンカヴァッロの道化師のリハーサル中です。
2月いっぱいピーター・グライムズの公演でモナコで過ごし、その後、ドレスデンのオテロにピンチヒッターとして急きょ出演。ようやくマドリードの自宅に帰った3日後には、もうオマーンに出発するというハードスケジュールでした。相当疲労もたまっているでしょうし、欧州を襲った寒波のなか、クーラの体調を心配していましたが、元気にリハーサルをしている様子が伝わってきました。
今回の公演は、イタリアのローマ歌劇場による引っ越し公演で、ゼッフェレッリ演出のプロダクションです。そのためローマ歌劇場がHPやファイスブックで情報を発信してくれていますので、そこに掲載された画像や共演者、関係者のSNSの情報をお借りして紹介したいと思います。
→(告知編)では、総大理石造りの豪華な劇場の様子も紹介しています。
ローマ歌劇場HPのツアー情報ページに掲載された案内
(告知編)でも紹介しましたが、クーラはマスカット王立歌劇場ははじめてで、今回が劇場デビューです。クーラの父方の祖父母は、オマーンとは距離が離れていますが同じ中東のレバノン出身で、クーラのこの地域への思いは深いものがあるのではないでしょうか。
今回の共演者、トニオ役のバリトン、マルコ・ヴラトーニャは、プッチーニのエドガールやオテロ(メトやリセウ)などで何度も一緒に歌っています。指揮者のパオロ・オルミ氏は、新国にも何度か出演しているベテラン、イタリアを中心に活動されているので、クーラとも共演しているのではないかと思います。
≪ローマ歌劇場の画像より≫
どの場面かはっきりわかりませんが、クーラ演じるカニオが舞台の中心で歌っています。後方にネッダがいて、まわりを人々が取り囲んでいるので、オペラ後半、劇中劇の場面から、カニオの「おれはもう道化師ではない」あたりでしょうか?
こちらは劇場がインスタにアップした画像。ドラマの最終局面に向かって、カニオが妻の不貞を確信し、激高して相手の名前を言えと詰め寄っているシーンのようです。
そしてトップに掲載したこの写真は、興奮して妻の浮気相手シルヴィオを刺し殺した(この演出では妻も殺害したようです)カニオが、我に返り、呆然と立ちつくすラストシーンだと思われます。
以下は、マスカット王立歌劇場で、ゼッフェレッリが演出、設計した舞台の立ち上げ中の様子。
ローマ歌劇場のフェイスブックです。
ローマ歌劇場のインスタグラム
こちらは劇場関係者と思われる方のインスタ
共演のシルヴィオ役のゲジム・ミシュケータがアップした、クーラとの写真。
ピーター・グライムズ用に伸ばしていた髪と髭を切って、とてもすっきり、爽やかな笑顔のクーラです。ハンサム(?)なカニオになりそうですが(笑)、メイクでどう変わるのでしょうか。舞台姿も楽しみです。
今回、クーラたちが公演するオマーンは、とても治安が安定しているといわれています。豪華な歌劇場、中東屈指のオーケストラ、イタリアからのオペラの引っ越し公演・・今回の道化師の公演にあたっても、子どもたちを対象にした事前ワークショップを開くなど、とても文化に力を入れている国のようです。
しかし中東全体は、現在も激動と混乱のさなかにあります。隣国イエメンは内戦が続き、飢餓、伝染病蔓延などで重大な人道的危機に瀕していると報道されています。シリアでは今この瞬間も激しい空爆で、大勢の子どもたちが犠牲になっています。クーラにとっては祖父母のルーツに近い中東の国々、そして平和と社会正義をつよく願い、アーティストの役割は「平和の種を蒔くこと」という信念をもつクーラにとって、今回のツアーは、特別な意味をもつものになりそうです。
公演が無事に成功することを祈るとともに、とにかくクーラとローマ歌劇場の一行が何事もなく無事に帰国できること、そして1日も早く中東全体の平和と安定が実現し、人々の幸せな日常が戻ることを願わずにはいられません。