刑法Ⅱ(各論)第8回(11月19日) 個人的法益に対する罪――財産に対する罪(3)
(6)横領罪 (7)背任罪
(6)横領罪
1横領罪の種類
単純横領罪・委託物横領罪(252)、業務上横領罪(253)、遺失物横領罪(254)
財物の占有侵害とその移転を伴わずに(非移転罪)、横領する(自分のものにする)罪(領得罪)
保護法益=財物の占有ではなく、所有権または財産保管義務(横領罪では、本権説が妥当する)
「自己の占有する他人の物」(252) なぜ他人の物を占有しているのか?
委託関係――保管の委託を受けた人(構成的身分者)が保管中の物を横領する行為(受託者横領罪)
保管の委託を受けた業務者(加重的身分者)が横領する行為(業務受託者横領罪)
保管の委託を受けていない人の横領(前2者とは別の独自類型)(非受託者横領罪)
つまり、委託関係=刑法65①の構成的身分(最判昭27・9・19刑集6巻8号1083頁)
委託関係は行為者の身分的性格を特徴づける→委託物横領罪(受託者横領罪)が基本類型
(一般に使われている「委託物横領罪」とは、この「受託者横領罪」のことである)
つまり、
委託物横領 所有権侵害+委託関係侵害(=構成的身分犯) ①基本類型 ②加重類型
業務上横領 所有権侵害+業務委託関係侵害(加重的身分犯)②加重類型 ③加重類型
遺失物横領 所有権侵害(委託関係なし) 独自類型 *①基本類型
(遺失物横領罪=基本類型→委託物横領罪はその加重的身分犯、業務上横領罪はその加重的身分犯)
しかし、条文は「自己の占有する他人の物」(252)→「保管を委託された物」
保管を委託を受けていない物(非委託物)を保管者が横領(遺失物[非委託物]横領領罪) →①基本
保管を委託された物(委託物)を保管者が横領(委託物横領罪) ②加重
保管を委託された物(委託物)を保管中の業務者が横領(業務上・委託物横領罪) ③加重
→「身分犯」の問題ではないと解することができる
2委託物横領罪(252)
自己の占有する他人の物・公務所から保管を命ぜられた占有下にある自己の物
親族に関する特例 親族関係は横領者・委託者(委託物横領・業務上横領の場合)・所有者の関係
3行為客体と行為主体
自己が事実上占有する他人の物(有体物)または法的に占有する他人の物(不動産)
委託に基づく占有 委託を受けた者(受託者)による横領(判例:刑65①の構成的身分)
占有の根拠→法令・契約、事務管理、慣習などの委託関係に基づく場合
銀行に預金された金銭は誰が占有しているか(預金者が占有:大判大1・10・8刑録18輯1231頁)
誤振込された預金の引き出し(銀行が占有:最決平15・3・12刑集57巻3号322頁→詐欺・窃盗)
共有物の占有(自己が占有する他人の物:大判明44・4・17刑録17輯587頁)
二重売買の問題 AがBに動産を売却。引き渡し前に、それをCに売却し引き渡した。
不法原因給付物の横領(積極(「自分の所有物ではない」):最判昭23・6・5刑集2巻7号641頁)
4横領行為
委託者の横領 越権行為説と領得行為説(通説・判例)の対立(遺失物横領の場合は領得行為)
売買・贈与・質入れ・抵当権の設定・着服・拐帯・抑留、これらの意思を外部に発現する行為
不法領得の意思
委託の任務に背いて、所有者しかできない処分行為をする意思(最判昭24・3・8刑集3巻3号276頁)
一時使用の意思や一時使用後、補てん意思がある場合(使用横領)
保管中の自転車(大阪高判昭46・11・26高刑集24・4・741)、保管米(最判昭24・3・8刑集3・3・276)
毀棄・隠匿の意思 文書の持ち出し・隠匿(大判大2・12・1刑録19・1440)
委託者のために処分する意思
5共犯
委託関係のない者(非身分者)が委託関係のある者(構成的身分者)による横領に関与した場合
→非身分者には刑65①を適用し、非身分者と非身分者は「委託物横領罪」の共同正犯・共犯
しかし、遺失物横領罪が「基本類型」と解すると、
非身分者には刑65②の適用し、遺失物横領罪の共同正犯または共犯が成立
6罪数
横領物の横領 自己が占有する他人の土地に無断で抵当権を設定し、
その後、第三者に売却して所有権の移転登記を行なった(最大平15・4・23刑集57巻4号467頁)
7業務上横領罪(253)
委託物横領罪(構成的身分犯)の加重的身分犯(「業務者性」は、委託物横領罪を加重する身分)
業務 社会生活上の地位に基づいて継続・反復して行なわれる、他人の委託に基づく者の保管行為
8遺失物横領罪
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物(それを委託を受けずに占有し、横領する行為
(7)背任罪
1背任罪(247)
他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り、又は本人に損害を加え
る目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加える行為(全体財産に対する罪)
背任 権限濫用説(代理権の濫用による財産侵害)か、背信説(信任関係違背による財産侵害)か
2主体
他人のためにその事務を処理する者(構成的身分犯) 会社法上の特別背任罪(加重的身分犯)
事務処理の委託――契約・法令上の地位、慣習・事務管理などが根拠
他人の事務――本来であれば、その他人本人が行なうべき事務
3任務違背行為
誠実な事務処理者であれば、行なうべきであると法的に期待される任務に違反する行為
法律行為(売買・処分)だけでなく、事実行為(第三者が運搬するのを阻止しない)も含まれる
4財産上の損害
任務違背行為→財産上の損害(全体財産に対する犯罪――全体として財産状態が不良的に悪化)
回収の困難性を認識しながら、無担保で融資――法律的財産概念と経済的財産概念
5故意と図利加害目的
事務処理者であること、任務違背行為を行なっていること、財産上の損害が発生することの認識
自己または第三者に利益を図る目的または事務の委託者(本人)に損害を加える目的(損害発生の認識)
本人図利目的があった場合(消極:大判大15・4・20刑集5巻136頁)
本人図利目的と自己・第三者図利目的とが併存する場合(積極・最判昭29・11・5刑集8巻11号1675頁)
6委託物横領罪との関係
委託物横領罪と背任罪――共通する要素としての委託関係(物の保管の委託と事務処理の委託)
委託物横領罪(領得行為説) 委託を受けて人が保管中の物を領得する行為
背任罪(背信説) 委託を受けた事務処理者がその任務に背く行為
客体が物の場合、その所有権を侵害する行為(領得行為)が行なわれれば、委託物横領罪が成立。
物の質権の侵害や二重抵当による抵当権の侵害の場合、「物」の領得行為はない。背任罪が成立。
他人の事務処理者が、事務処理にあたって保管している他人の「物」を不法に処分した場合で、
自己の利益を図る目的で処分した →横領罪
自己以外の第三者の利益を図る目的で、自己の名義で行なった →横領罪(第三者横領)
自己以外の第三者の利益を図る目的で、事務の委託者(本人)の名義で行なった →背任罪
第8回講義 練習問題
(1)横領罪について
1二重売買
骨董商Aは、顧客Xとの間において骨董品の売買契約を締結し、翌日にそれを引き渡す約束をした。
その日の夕方にYが店に訪れ、その骨董品を高値で購入することを申し出た。AはYにそれを売却し、
その場で引き渡した。Aの罪責を論じなさい。
2不法原因給付と横領罪
Aは、Xから「密輸出のための金[ゴールド]の地金の購入資金」を預かった。
Aは、それを持って逃走し、遊興費にあてた。Aの罪責を論じなさい。
Bは、Yから「与党の国会議員の買収工作資金」を預かった。Bは個人的な借金の返済に迫られて
いたため、後に補てんする意思で、「資金」の一部で借金を返済した。
Cは、Zと「妾関係」(愛人関係)を維持するために、マンションを贈与する契約を結んだ。
Zは、贈与されたマンションの登記手続を行った。その後、ZはCに疎遠な態度をとったので、
CはZにマンションを返還するよう訴えた。裁判では、「妾関係」の維持を目的とする贈与契約は、
公序良俗に反し無効であるので、そのような違法な原因に基づいて贈与されたマンションについては、
Cには返還を請求する権利はないと判断された(最大判昭45・10・21民集24巻11号1560頁)。
そこで、CはZを横領罪で告訴した。Zの罪責を論じなさい。
3横領罪の共犯と身分
委託物横領罪、業務上横領罪、遺失物横領罪の3種の横領罪の関係について論じなさい。
AはXからボストンバッグの保管を委託された。Aは保管中に中身が気になり、開けたところ、
大量の米ドル札が入っていた。「これは不可解だ」と思い、警察に連絡した。駆けつけた警察官Oは、
そのバッグを確認し、「Xにここに来てもらうよう連絡してください。それまで二人でバッグを保管
しましょう」と指示した。Aは携帯電話でXに連絡したが、Xは感づかれたと思い、電話を切って逃
走した。Oは捜査の手法の誤りが上司に知られるのを恐れて、Aに対して保管中の米ドル札の半分を
口止め料として渡し、残りを自分のものにした。
AとOの罪責を論じなさい。
BはYから自動車の保管を委託された。Bの家に遊びに来た恋人Pがその自動車を見て、ドライブ
に行こうと誘った。BはPと数時間ドライブをして、自動車を元の場所に戻した。
BとPの罪責を論じなさい。
自動車修理工CはZから自動車の修理と保管を委託された。Cの工場に遊びに来た恋人Qは、
その車を見て、ドライブに行こうと誘った。CはQと数時間ドライブをして、車を元の場所に戻した。
CとQの罪責を論じなさい。
(2)背任罪について
1背任罪が「全体財産に対する罪」として分類される理由を述べなさい。
2権限濫用説と背信説の違いが背任罪の成否に与える影響について、具体的な例をあげて述べなさい。
3寺の住職Aが寺の修繕費用を捻出するために、保管中の仏像を許可なく売却した。Aの罪責は。
4横領罪と背任罪の区別
横領罪と背任罪の区別基準について、判例の見解をまとめなさい。
(6)横領罪 (7)背任罪
(6)横領罪
1横領罪の種類
単純横領罪・委託物横領罪(252)、業務上横領罪(253)、遺失物横領罪(254)
財物の占有侵害とその移転を伴わずに(非移転罪)、横領する(自分のものにする)罪(領得罪)
保護法益=財物の占有ではなく、所有権または財産保管義務(横領罪では、本権説が妥当する)
「自己の占有する他人の物」(252) なぜ他人の物を占有しているのか?
委託関係――保管の委託を受けた人(構成的身分者)が保管中の物を横領する行為(受託者横領罪)
保管の委託を受けた業務者(加重的身分者)が横領する行為(業務受託者横領罪)
保管の委託を受けていない人の横領(前2者とは別の独自類型)(非受託者横領罪)
つまり、委託関係=刑法65①の構成的身分(最判昭27・9・19刑集6巻8号1083頁)
委託関係は行為者の身分的性格を特徴づける→委託物横領罪(受託者横領罪)が基本類型
(一般に使われている「委託物横領罪」とは、この「受託者横領罪」のことである)
つまり、
委託物横領 所有権侵害+委託関係侵害(=構成的身分犯) ①基本類型 ②加重類型
業務上横領 所有権侵害+業務委託関係侵害(加重的身分犯)②加重類型 ③加重類型
遺失物横領 所有権侵害(委託関係なし) 独自類型 *①基本類型
(遺失物横領罪=基本類型→委託物横領罪はその加重的身分犯、業務上横領罪はその加重的身分犯)
しかし、条文は「自己の占有する他人の物」(252)→「保管を委託された物」
保管を委託を受けていない物(非委託物)を保管者が横領(遺失物[非委託物]横領領罪) →①基本
保管を委託された物(委託物)を保管者が横領(委託物横領罪) ②加重
保管を委託された物(委託物)を保管中の業務者が横領(業務上・委託物横領罪) ③加重
→「身分犯」の問題ではないと解することができる
2委託物横領罪(252)
自己の占有する他人の物・公務所から保管を命ぜられた占有下にある自己の物
親族に関する特例 親族関係は横領者・委託者(委託物横領・業務上横領の場合)・所有者の関係
3行為客体と行為主体
自己が事実上占有する他人の物(有体物)または法的に占有する他人の物(不動産)
委託に基づく占有 委託を受けた者(受託者)による横領(判例:刑65①の構成的身分)
占有の根拠→法令・契約、事務管理、慣習などの委託関係に基づく場合
銀行に預金された金銭は誰が占有しているか(預金者が占有:大判大1・10・8刑録18輯1231頁)
誤振込された預金の引き出し(銀行が占有:最決平15・3・12刑集57巻3号322頁→詐欺・窃盗)
共有物の占有(自己が占有する他人の物:大判明44・4・17刑録17輯587頁)
二重売買の問題 AがBに動産を売却。引き渡し前に、それをCに売却し引き渡した。
不法原因給付物の横領(積極(「自分の所有物ではない」):最判昭23・6・5刑集2巻7号641頁)
4横領行為
委託者の横領 越権行為説と領得行為説(通説・判例)の対立(遺失物横領の場合は領得行為)
売買・贈与・質入れ・抵当権の設定・着服・拐帯・抑留、これらの意思を外部に発現する行為
不法領得の意思
委託の任務に背いて、所有者しかできない処分行為をする意思(最判昭24・3・8刑集3巻3号276頁)
一時使用の意思や一時使用後、補てん意思がある場合(使用横領)
保管中の自転車(大阪高判昭46・11・26高刑集24・4・741)、保管米(最判昭24・3・8刑集3・3・276)
毀棄・隠匿の意思 文書の持ち出し・隠匿(大判大2・12・1刑録19・1440)
委託者のために処分する意思
5共犯
委託関係のない者(非身分者)が委託関係のある者(構成的身分者)による横領に関与した場合
→非身分者には刑65①を適用し、非身分者と非身分者は「委託物横領罪」の共同正犯・共犯
しかし、遺失物横領罪が「基本類型」と解すると、
非身分者には刑65②の適用し、遺失物横領罪の共同正犯または共犯が成立
6罪数
横領物の横領 自己が占有する他人の土地に無断で抵当権を設定し、
その後、第三者に売却して所有権の移転登記を行なった(最大平15・4・23刑集57巻4号467頁)
7業務上横領罪(253)
委託物横領罪(構成的身分犯)の加重的身分犯(「業務者性」は、委託物横領罪を加重する身分)
業務 社会生活上の地位に基づいて継続・反復して行なわれる、他人の委託に基づく者の保管行為
8遺失物横領罪
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物(それを委託を受けずに占有し、横領する行為
(7)背任罪
1背任罪(247)
他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り、又は本人に損害を加え
る目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加える行為(全体財産に対する罪)
背任 権限濫用説(代理権の濫用による財産侵害)か、背信説(信任関係違背による財産侵害)か
2主体
他人のためにその事務を処理する者(構成的身分犯) 会社法上の特別背任罪(加重的身分犯)
事務処理の委託――契約・法令上の地位、慣習・事務管理などが根拠
他人の事務――本来であれば、その他人本人が行なうべき事務
3任務違背行為
誠実な事務処理者であれば、行なうべきであると法的に期待される任務に違反する行為
法律行為(売買・処分)だけでなく、事実行為(第三者が運搬するのを阻止しない)も含まれる
4財産上の損害
任務違背行為→財産上の損害(全体財産に対する犯罪――全体として財産状態が不良的に悪化)
回収の困難性を認識しながら、無担保で融資――法律的財産概念と経済的財産概念
5故意と図利加害目的
事務処理者であること、任務違背行為を行なっていること、財産上の損害が発生することの認識
自己または第三者に利益を図る目的または事務の委託者(本人)に損害を加える目的(損害発生の認識)
本人図利目的があった場合(消極:大判大15・4・20刑集5巻136頁)
本人図利目的と自己・第三者図利目的とが併存する場合(積極・最判昭29・11・5刑集8巻11号1675頁)
6委託物横領罪との関係
委託物横領罪と背任罪――共通する要素としての委託関係(物の保管の委託と事務処理の委託)
委託物横領罪(領得行為説) 委託を受けて人が保管中の物を領得する行為
背任罪(背信説) 委託を受けた事務処理者がその任務に背く行為
客体が物の場合、その所有権を侵害する行為(領得行為)が行なわれれば、委託物横領罪が成立。
物の質権の侵害や二重抵当による抵当権の侵害の場合、「物」の領得行為はない。背任罪が成立。
他人の事務処理者が、事務処理にあたって保管している他人の「物」を不法に処分した場合で、
自己の利益を図る目的で処分した →横領罪
自己以外の第三者の利益を図る目的で、自己の名義で行なった →横領罪(第三者横領)
自己以外の第三者の利益を図る目的で、事務の委託者(本人)の名義で行なった →背任罪
第8回講義 練習問題
(1)横領罪について
1二重売買
骨董商Aは、顧客Xとの間において骨董品の売買契約を締結し、翌日にそれを引き渡す約束をした。
その日の夕方にYが店に訪れ、その骨董品を高値で購入することを申し出た。AはYにそれを売却し、
その場で引き渡した。Aの罪責を論じなさい。
2不法原因給付と横領罪
Aは、Xから「密輸出のための金[ゴールド]の地金の購入資金」を預かった。
Aは、それを持って逃走し、遊興費にあてた。Aの罪責を論じなさい。
Bは、Yから「与党の国会議員の買収工作資金」を預かった。Bは個人的な借金の返済に迫られて
いたため、後に補てんする意思で、「資金」の一部で借金を返済した。
Cは、Zと「妾関係」(愛人関係)を維持するために、マンションを贈与する契約を結んだ。
Zは、贈与されたマンションの登記手続を行った。その後、ZはCに疎遠な態度をとったので、
CはZにマンションを返還するよう訴えた。裁判では、「妾関係」の維持を目的とする贈与契約は、
公序良俗に反し無効であるので、そのような違法な原因に基づいて贈与されたマンションについては、
Cには返還を請求する権利はないと判断された(最大判昭45・10・21民集24巻11号1560頁)。
そこで、CはZを横領罪で告訴した。Zの罪責を論じなさい。
3横領罪の共犯と身分
委託物横領罪、業務上横領罪、遺失物横領罪の3種の横領罪の関係について論じなさい。
AはXからボストンバッグの保管を委託された。Aは保管中に中身が気になり、開けたところ、
大量の米ドル札が入っていた。「これは不可解だ」と思い、警察に連絡した。駆けつけた警察官Oは、
そのバッグを確認し、「Xにここに来てもらうよう連絡してください。それまで二人でバッグを保管
しましょう」と指示した。Aは携帯電話でXに連絡したが、Xは感づかれたと思い、電話を切って逃
走した。Oは捜査の手法の誤りが上司に知られるのを恐れて、Aに対して保管中の米ドル札の半分を
口止め料として渡し、残りを自分のものにした。
AとOの罪責を論じなさい。
BはYから自動車の保管を委託された。Bの家に遊びに来た恋人Pがその自動車を見て、ドライブ
に行こうと誘った。BはPと数時間ドライブをして、自動車を元の場所に戻した。
BとPの罪責を論じなさい。
自動車修理工CはZから自動車の修理と保管を委託された。Cの工場に遊びに来た恋人Qは、
その車を見て、ドライブに行こうと誘った。CはQと数時間ドライブをして、車を元の場所に戻した。
CとQの罪責を論じなさい。
(2)背任罪について
1背任罪が「全体財産に対する罪」として分類される理由を述べなさい。
2権限濫用説と背信説の違いが背任罪の成否に与える影響について、具体的な例をあげて述べなさい。
3寺の住職Aが寺の修繕費用を捻出するために、保管中の仏像を許可なく売却した。Aの罪責は。
4横領罪と背任罪の区別
横領罪と背任罪の区別基準について、判例の見解をまとめなさい。