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Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

2018年度刑法Ⅰ(第13回)短答問題(050~052、058~060)

2018-07-03 | 日記
Nо.050 正犯と共犯の区別

 正犯と共犯の区別に関して、学生AからCまでは、それぞれ異なる立場から次の発言をしている。①から⑤までの発言のうち、学生Aの発言として矛盾しないものはどれか。

学生A 僕は、基本的構成要件に該当する行為、すなわち実行行為をみずから行う者が正犯であり、それ以外の行為により犯罪に関与した者が共犯であると解する。

学生B 僕は、自己の犯罪をなす意思で行う者が正犯、他人の犯罪に加功する意思で行う者が共犯であると解する。

学生C 僕は、犯罪結果発生について一定程度の危険性を生じさせる行為あるいは法益侵害の確実性・自動性の認められる行為を行った者が正犯であり、そうでない者が共犯であると解する。



①(   )君の見解を徹底すると、間接正犯、共謀共同正犯はおよそ肯定することができなくなるのではないか。


②僕の見解は、正犯は「犯罪を実行」した者だとする刑法第60条および第61条1項の文言にもっとも適合し、また、区別の基準が明白であるという長所がある。


③正犯行為も、教唆・幇助行為も、同様に結果発生の危険性をもつ行為であるから(    )君の見解では、正犯かどうかを区別することが困難となる。


④財産犯における2項犯罪の場合、法は他人に財産上不法の利益を得させる行為も処罰しているから、(    )君の見解が、この行為は他人のためにする意思で行われているので共犯とするのであれば、現行法の規定と相容れない結論になる。


⑤僕は、結果を惹起したすべての者が本来正犯であり。共犯規定は刑罰制限事由にすぎないと考えているから、正犯も共犯も客観的には同じもので、主観によってのみ区別されるものだと思う。



(1)1個


(2)2個


(3)3個


(4)4個


(5)5個



NO.51

 共犯の従属性に関する次の1から5までのうち、誤っているものはどれか。

(1)共犯従属性説は、教唆犯の成立には少なくとも正犯の実行の着手を必要とする見解である。



(2)共犯従属性説は、教唆犯の成立につき正犯の有責性まで必要するとはかぎらない。



(3)共犯従属性説によれば、教唆の未遂は認められないが、従犯の未遂は理論上認められる。



(4)共犯独立性説は、教唆の成立には正犯の実行を必要としない見解である。



(5)共犯独立性説は、教唆自体の未遂を認める見解である。



NO.52

 共犯の処罰根拠と違法の連帯性に関する次の【記述】中の①から⑤までの(   )内に、後記の【語句群】から適切な語句を入れた場合、(①)および(⑤)に入るものの組合せとして正しいものは、後記1から5までのうちどれか。なお。文章中の「共犯なし正犯」とは、共犯行為が違法でなくても正犯行為は違法とすることをいい、「正犯なき共犯」とは、正犯行為が違法でなくても共犯行為は違法とすることをいうものとする。



【記述】
 「共犯の違法性につき、(①)とする見解がある。これによると、『正犯なき共犯』も、『共犯なき正犯』も認められるということになり、甲が乙に対して自傷行為をするう唆したところ、乙はそれに従いナイフで自分の腕を刺し、全治2ヵ月の傷を負った、という事例Ⅰにおいて甲に傷害罪の教唆犯が成立することになる。しかし、この見解に対しては、(②)という批判がなされている。そこで、共犯の違法性につき(③)とする見解や、(④)とする見解が主張されており、これらによると先の事例では甲に傷害罪の教唆犯は成立しないことになる。ただ、これらの両見解も、甲が乙に対して甲の身体に傷害を負わせるよう頼んだところ、乙はそれに従以降の腕をナイフで刺し、甲に全治2ヵ月の傷害を負わせた、という事例Ⅱにおいては、その結論を異にする。前者の見解からは、『正犯なき共犯』は認められないが、『共犯なき正犯」は認められるということになり、この事例でも甲に傷害罪の教唆犯は成立しない。これに対し、後者の見解からは、『正犯なき共犯』も『共犯なき正犯』も認められるということになり、この事例では傷害罪の教唆犯の成立が認められる。後者の見解は、人による違法の相対性を原則的に否定する客観的違法性論に立って、違法の連帯性を貫徹させるものであるが、この見解に対しては、(⑤)という批判が向けられている。



【語句群】
ア 共犯は正犯者を通して間接的に法益を侵害するものであり、共犯の違法性は共犯行為自体の違法性と正犯行為の違法性の双方に基づく


イ 共犯は共犯者自身がみずから刑法各側で保護されている法益を侵害するものであり、共犯の違法性は共犯行為自体の違法性に基づく


ウ 共犯は正犯が法益を侵害するのに加担するものであり、共犯の違法性は正犯行為の違法性に基づく


エ 必要的共犯で処罰規定がおかれていない者やおとり捜査の不可罰性を基礎づけることが困難になる


オ 真正身分犯に関し、非身分者が身分者に加功した場合に非身分者も身分犯の共犯として処罰される旨を規定する、刑法第65条第1項を合理的に説明できない





NO.058 未遂の教唆

 「甲は、はじめから未遂に終わらせる意図で、致死量の約半分の量の薬物を乙に渡し、その薬物を飲ませて丙を殺害するよう依頼したところ、乙は殺意をもって丙にその薬物を飲ませたが、丙はひどい下痢をしただけで生命に別条はなかった」という事案における甲の罪責に関し、次のⅠおよびⅡの【結論】があるものとして、学生AからFまでがそのいずれかの結論を採ったうえで【意見】を述べている。異なった結論を採っている学生を組み合わせたものとして正しいものは、後記1から5まのでうちどれか。なお、本問では、乙には殺人未遂罪が成立するものとする。



【結論】
Ⅰ 甲に殺人未遂罪の教唆犯が成立する。

Ⅱ 甲に傷害罪の教唆犯が成立する。



【意見】
学生A 僕は、共犯の処罰根拠について因果的共犯論を採るので、教唆犯の故意が成立するためには、結果発生の認識が必要だと思うけれど、そこにいう結果とは、法益侵害の危険をも含めて考えることができるから、そのような危険の発生を認識していれば、教唆犯の故意が成立するということができるよ。


学生B 共犯の実行従属性については共犯従属性説が妥当だよ。だから教唆行為は実行行為ではなく、「実行行為を生ぜしめる行為」であり、この点についての認識があれば教唆犯の故意が認められると思う。


学生C 僕は、共犯の実行従属性については共犯独立性説を採り、教唆行為自体が1つの実行行為であると考えるので、教唆犯の故意については、正犯の場合と同様の認識あるいは予見が必要だと思うよ。


学生D 共犯の処罰根拠については責任共犯論が妥当であるが、未遂に終わらせる意図で協賛した場合も、他人を堕落させる意思があり、教唆犯の故意に欠けるところはない。


学生E 僕は、共犯の実行従属性については共犯独立性説を採るけれど、この見解の実質は、正犯の実行の着手がなくても共犯を未遂として処罰しうるという考え方であるかた、「犯罪行為に引き込む認識」があれば、共犯の故意は存在すると考える。


学生F 僕は、共犯の処罰根拠について因果的共犯論を採るので、結果発生の認識がなければ教唆犯の故意は認められないと考える。そこにいう結果には、法益侵害の危険も含めて考えることができるから、危険は生じるが結果は発生しないという認識があるときには、正犯の場合ならば故意があるとはいわない以上、教唆犯の場合も故意はないと解すべきである。



(1)AとB


(2)BとD


(3)CとE


(4)CとF


(5)DとE




Nо.059 幇助犯

 幇助犯に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。


ア 従犯が成立するためには、従犯者に、正犯の行為を認識してこれを幇助する意思があるのみでは足りず、従犯、正犯間の相互の意思連絡を必要とするが、このような相互の意思連絡は、正犯行為についてなんらかの意思連絡があれば認められる。


イ 従犯が成立するためには、犯罪の遂行に便宜を与え、これを容易ならしめることで足り、その遂行に必要不可欠な助力を与えることを必要としない。


ウ 甲が、乙またはその得意先が公然陳列するであろうことを知りながらわいせつ映画フィルムを乙に貸与したところ、乙の得意先である丙が乙から当該フィルムの貸与を受けて、上映により公然陳列した場合であっても、甲の行為は丙の犯行に直接関与するものではないから、甲にわいせつ物公然陳列財の従犯は成立しない。


エ 幇助罪の個数は正犯の罪の個数によって決定されるが、幇助罪が数個成立する場合に、それらが刑法第54条第1項にいう1個の行為によるものであるか否かは、幇助行為それ自体についてみるべきである。


オ 乙が強盗の目的でAを殺したことを知りながら、甲がその後の乙の強取行為を幇助した場合、あくまで甲は強盗罪の幇助をしたにとどまり、殺人については何ら幇助をしていないのであるから、甲に強盗殺人罪の従犯は成立しない。




Nо.060 幇助犯の因果関係

 次の【事例】について、後記アからウまでの各【見解】を採って、甲乙の行為とABの死亡結果との間に因果関係があるかどうかを検討した場合、甲、乙の両者に因果関係を認める【見解】として正しいものは、後記1から5までのうちどれか。



【事例】
 Xは、Aの自宅に侵入して同人を殺害し、金品を強奪する計画を立てた。この計画を知ったAの家政婦・甲は、Aに恨みをいだいていたため、Xの犯行を助けようと同人にA宅の合鍵を手渡した。翌日深夜、合鍵を得て犯行への意を強くしたXがA宅のドア前まで赴いたところ、たまたまAがドアの鍵を閉め忘れており、ドアには鍵がかかっていなかったため、XはそのままA宅に侵入してAを殺害し、金銭等を奪った。
 さらに後日、Xは、Bを宝石取引名目で誘い出して同人所有の普通乗用車に同乗させ、走行中の車内においてBを殺害して現金等を奪うことを企てた。たまたまXの計画を知ったBの秘書乙は、Bの人使いの荒さから同人に対して恨みをいだいていたため、Xの犯行を助けようと考え、Xには秘密で、Bが普段から持ち歩いているお茶の入った水筒に睡眠薬を混入した。BはXに会う直前に水筒のお茶を飲んだことにより意識が朦朧としていたため、ほとんど抵抗することもできないままXに刺殺された。



【見解】
ア 幇助行為が正犯の実行を物理的または心理的に容易にし、または促進したと認められる場合に因果関係が認められる。片面的幇助については、物理的因果性が存在する場合には肯定される。



イ 幇助の因果性の内容は意思の疎通による心理的因果性であり、従犯と正犯との間に意思の疎通があれば因果関係は認められる。



ウ 幇助行為と正犯結果との間に因果関係が必要であるが、その因果関係の内容としては。事後的に見て危険の増加が認められることで足りる。