ASKθ, a group-III Arabidopsis GSK3, functions in the brassinosteroid signalling pathway
Rozhon et al. The Plant Journal (2010) 62:215-223.
DOI: 10.1111/j.1365-313X.2010.04145.x
シロイヌナズナのブラシノステロイド(BR)シグナル伝達経路において、GSK3/shaggy-likeタンパク質キナーゼのBRASSINOSTEROID INSENSITIVE 2(BIN2)は、負の制御因子として機能している。シロイヌナズナにはBIN2 のようなGSK3/shaggy-likeタンパク質キナーゼ(ASK)をコードする遺伝子が10個存在しており、4つのグループ(Ⅰ~Ⅳ)に分類されている。BIN2はグループⅡに属しており、同じグループに属しているASKιとASKζもBRシグナル伝達に関与していることが明らかとなっている。オーストリア グレゴール・メンデル植物分子生物学研究(GMI)のJonak らは、ASKキナーゼの新たな機能を探索することを目的に、グループⅠ、Ⅲ、ⅣのASKを過剰発現させたシロイヌナズナを作出して表現型を解析し、グループⅢのASKθを過剰発現させた個体は、極度のわい化、色が濃く巻いた葉、稔実率の低下、花成の遅れといった形態異常を示すことを見出した。この表現型はBR受容体の変異体bri1 と類似しており、ASKθキナーゼ活性はbri1 変異体やBR生合成の変異体cpd で高くなっていた。よって、ASKθキナーゼ活性はBRによって負に制御されている。ASKθ過剰発現個体は、bri1 変異体と同様に、BRに対する感受性が低く、アブシジン酸(ABA)に対する感受性が高くなっていた。また、BR生合成酵素をコードするDWF4 、Br6OX2 の発現量、内生のBRとその前駆体量が増加し、BR応答遺伝子のBEE3 の発現量が低下していた。また、ASKθタンパク質はBES1/BZR1ファミリーに属するBRシグナル伝達転写因子BEH2と相互作用を示し、主に核に局在することが確認された。さらに、ASKθキナーゼはBEH2、BZR1、BES1を直接リン酸化し、自己リン酸化されることがわかった。以上の結果から、ASKθはBES1/BZR1ファミリー転写因子を基質としているタンパク質キナーゼであり、BIN2と同様にBRシグナル伝達の負の制御因子として機能していると考えられる。