The flowering gene SINGLE FLOWER TRUSS drives heterosis for yield in tomato
Krieger et al. Nature Genetics (2010) 42:459?463.
doi:10.1038/ng.550
雑種強勢は農作物の収量増加等に広く利用されているが、そのメカニズムは十分に解明されていない。イスラエル ヘブライ大学のZamir らは、単一のヘテロ接合性遺伝子から強勢が生ずる超優性(overdominance)モデルを検証する実験を行なった。33種類の様々なトマトの変異体と変異のない親品種(M82)を交配してヘテロ接合となった変異体の収量を比較したところ、6種類のヘテロ接合体で雑種強勢が見られた。最も強い雑種強勢は、シロイヌナズナのFLOWERING LOCUS T のオーソログをコードするSINGLE FLOWER TRUSS (SFT )遺伝子のミスセンス突然変異のヘテロ接合のものであった。この雑種強勢は、SFT 遺伝子の他の変異対立遺伝子のヘテロ接合でも起こり、その収量は商品化されているハイブリッドトマトAB2と同等であった。SFT のヘテロ接合による収量の超優性は頑強であり、異なる遺伝的背景や環境条件でも起こった。sft /+ ヘテロ接合体はM82に比べて花序数、花序あたりの花数が多く、花序の増加が頭打ちとなる時期が遅かった。トマトの栽培品種は有限花序を示し、これはシロイヌナズナTERMINAL FLOWER1 (TFL1 )のオーソログであるSELF PRUNING (SP )の変異による。SP の機能している無限花序のM82ではSFT のヘテロ接合による雑種強勢が見られないことから、sft /+ ヘテロ接合体ではsp が誘導する成長終結が抑制されて雑種強勢が起こるものと考えられる。今回の知見は、単一のヘテロ接合性変異で農作物の生産性が向上する可能性を示唆している。