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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)もしフィトクロムがなかったらどうなるか

2010-03-13 16:07:53 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis thaliana life without phytochromes
Strasser et al.  PNAS (2010) 107:4776-4781.
doi:10.1073/pnas.0910446107

植物は光を光合成のエネルギー源として、そして自分の置かれている環境の情報源として利用している。赤色/遠赤色光を感知するフィトクロムは、種子発芽から花芽形成まで植物の様々な生理現象を制御している。もしこのフィトクロムがなくなったらどうなるか。アルゼンチン ブエノスアイレス大学のCerdán らは、シロイヌナズナに5つ存在するフィトクロムアポタンパク質をコードする遺伝子(PHYA - PHYE )が機能喪失した五重変異体をflowering locus Tft )変異体バックグラウンドで作出し、解析を行なった。フィトクロム五重変異体の種子は発芽率が非常に低いが、ジベレリン(GA4)を与えたところ通常と同程度の発芽が見られた。したがって、種子発芽にはフィトクロムによるGA生合成の誘導が必要である。芽生えに赤色光を照射することでプロトクロロフィリドのクロロフィリドへの変換が起こることから、フィトクロム五重変異体は完全に赤色光に対して反応しないというわけではない。しかし、赤色光では子葉ステージ以降へ成長は進まず、さらに先の段階へ成長を進ませるためには青色光照射が必要であった。青色光照射により変異体芽生えの下胚軸伸長抑制や子葉の展開と緑化が見られ、クリプトクロムやフォトトロピンはフィトクロムがなくても機能することが示唆される。白色光下で育成した変異体植物を赤色光で育成すると、展開葉が急激に老化し、新しい葉の展開が起こらなくなった。フィトクロム五重変異体の概日時計は、やや間隔が短くなるが正常に機能していた。

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