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論文)ジベレリンによる花成促進の分子機構

2021-09-04 07:16:57 | 読んだ論文備忘録

DELLA degradation by gibberellin promotes flowering via GAF1-TPR-dependent repression of floral repressors in Arabidopsis
Fukazawa et al.  Plant Cell (2021) 33:2258-2272.

doi:10.1093/plcell/koab102

ジベレリン(GA)は花成統合遺伝子の発現を活性化して花成を促進するが、その分子機構は明らかではない。広島大学深澤らは、DELLAタンパク質と相互作用をする転写因子GAI ASSOCIATED FACTOR 1(GAF1)およびGAF1との相同性が高いINDETERMINATE DOMAIN 1(IDD1)が機能喪失したシロイヌナズナgaf1 idd1 二重変異体は短日条件下で花成が遅延し、GAF1 過剰発現個体は花成が促進されることを見出しており、GAによる花成制御にGAF1が関与しているのではないかと考え解析を行なった。GAF1 過剰発現個体は花成統合遺伝子のFTSOC1LFY の発現量が増加し、gaf1 idd1 二重変異体では減少していた。GAF1はGA存在下で転写抑制複合体を形成するので、花成統合遺伝子の発現量増加はGAF1による花成抑制遺伝子の発現抑制によってもたらされていることが示唆される。そこで、RNA-seq解析でGAF1の標的遺伝子を探索したところ、花成抑制遺伝子ELF3TEM1TEM2SVP がGAF1による発現抑制を受けていることが判った。そしてこれらの遺伝子のプロモーターはGAF1-DELLA複合体によって活性化され、GAF1とコリプレッサーTOPLESS-RELATED 4(TPR4)との複合体によって抑制された。また、GAF1はこれらの遺伝子のプロモーター領域のIDDファミリー転写因子結合モチーフに直接結合することが確認された。FTSOC1 の発現はGA処理によって誘導されるが、gaf1 idd1 二重変異体では発現誘導は見られなかった。また、ELF3TEM1TEM2SVP の発現はGA処理によって抑制され、この抑制はgaf1 idd1 二重変異体では観察されなかった。したがって、GAによるFTSOC1 の発現誘導は、GAF1とIDD1によるELF3TEM1TEM2SVP の発現抑制を介して引き起こされていることが示唆される。FT およびSOC1 の発現はTEM1およびSVPによって抑制され、elf3 変異体ではFT の発現量が増加していた。elf3 変異体は花成が促進され、eif3 gaf1 idd1 三重変異体においても促進された。よって、ELF3はGAF1やIDD1の下流で花成に作用していることが示唆される。ELF3はDNA結合モチーフを有していないが、ELF4、MYB転写因子のLUXとともにEvening Complex(EC)という転写抑制複合体を形成する。ECはFT プロモーターと相互作用をしてFT の発現を抑制することが確認された。以上の結果から、ジベレリンはGAF1-TPR複合体の形成を誘導し、ECを構成するコリプレッサーのELF3TEM1SVP の発現を抑制することで、葉におけるFT の発現を活性化すると考えられる。また、茎頂では、GAF1-TPR複合体がSOC1 の抑制因子として働くSVP の発現を低下させ、葉から輸送されたFTを介したSOC1 の発現活性化により花成が促進されると考えられる。

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