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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ストリゴラクトン生合成経路のメチル化酵素

2022-04-25 09:05:50 | 読んだ論文備忘録

A carlactonoic acid methyltransferase that contributes to the inhibition of shoot branching in Arabidopsis
Mashiguchi et al.  PNAS (2022) 119:(14) e2111565119.

doi:10.1073/pnas.2111565119

ストリゴラクトン(SL)は、生体内においてβ-カロテンからカーラクトン(CL)やカーラクトン酸(CLA)を経由して合成される。また、SL受容体のDWARF14(D14)と相互作用をするCLAのメチルエステル体のカーラクトン酸メチル(MeCLA)がシロイヌナズナから見いだされている。京都大学 化学研究所山口らは、CLAからMeCLAを生成する酵素がSL生合成経路の解明に重要であると考え、メチル化酵素の探索を行なった。植物ホルモンのメチル化は、SABATHファミリーに属するメチルトランスフェラーゼによって触媒されている。シロイヌナズナゲノムには24のSABATH ファミリー遺伝子が含まれており、これらのうちAt4g36470がS-アデノシルメチオニン(SAM)をメチル基ドナーに用いてCLAのメチル化を触媒することが判った。そこで、At4g36470をCLAメチルトランスフェラーゼ(CLAMT)と命名し、生理学的機能解析を行なった。シロイヌナズナclamt 変異体は、野生型と比較してCLA含量が高く、MeCLA含量が大きく減少していた。また、clamt 変異体は腋芽シュート数が増加していた。clamt 変異体にGR24やMeCLAを処理することで枝分かれの表現型は解消されたが、CLAの添加は効果がなかった。これらの結果から、CLAのメチル化はシュートの枝分かれを阻害する植物ホルモンを生成する過程において重要であることが示唆される。CLからCLAを生成するMAX1(CYP711A1)の変異体max1clamt 変異体を用いて接ぎ木試験を行なったところ、clamt 変異体の台木にmax1 変異体の接ぎ穂をすると、max1 変異体の枝分かれ増加の表現型が解消することが判った。よって、根で生成されたCLAは地上部へ輸送されてCLAMT活性を介して生物活性のあるSLに転換されると考えられ、CLAMTはMAX1の下流で機能していることが示唆される。野生型植物の台木にclamt 変異体の接ぎ穂をしても枝分かれ増加の表現型に変化が見られないことから、CLAMTの生成物は地上部に輸送されないと考えられる。CLAMT は根で強く発現しており、根のMeCLA含量も地上部よりも高くなっていた。CLAMT は維管束組織、花、茎生分枝基部、長角果でも発現していた。CLAMT は若い腋芽でも強く発現しており、このことから、CLAMT は芽の成長を局所的に抑制していることが示唆される。SL生合成は負のフィードバック制御を受けていることが知られているが、CLAMT の発現量は内生SL量による制御を受けていなかった。以上の結果から、CLAMTによるCLAのメチル化はシュートの枝分かれを抑制するホルモンを生成するための重要な過程であることが示唆される。

京都大学化学研究所 研究トピックス
植物の枝分かれ調節ホルモンの合成メカニズムを解明
―植物ホルモンを活性化する酵素タンパク質を発見―

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