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論文)青色光照射によるクリプトクロム1の分解

2022-04-29 15:21:55 | 読んだ論文備忘録

Differential photoregulation of the nuclear and cytoplasmic CRY1 in Arabidopsis
Liu et al.  New Phytologist (2022) 234:1332-1346.

doi: 10.1111/nph.18007

Arabidopsis cryptochrome 1 undergoes COP1 and LRBs-dependent degradation in response to high blue light
Miao et al.  New Phytologist (2022) 234:1347-1362.

doi:10.1111/nph.17695

青色光受容体のクリプトクロム(CRY)は植物の様々な成長過程を制御している。シロイヌナズナにはCRY1とCRY2の2種類のクリプトクロムが存在し、CRY1は強光受容体で核と細胞質に局在すること、CRY2は弱光受容体で核のみに局在することが知られている。また、CRY2は青色光照射によってリン酸化され、このリン酸化はCRY2のユビキチン化とユビキチンリガーゼによる分解を引き起こすが、CRY1の光誘導分解は知られていない。

中国 福建農林大学のWang らは、シロイヌナズナ黄化芽生えに強度の異なる青色光を照射し、高フルエンス(100 µmol m-2s-1)の青色光を照射するとCRY1タンパク質量が減少することを見出した。この時、リン酸化したCRY1量も増加していた。強青色光を4時間照射するとCRY1量は半減するが、CRY2量は20分の照射で半減した。このことから、CRY1量は青色光によって負に制御されるが、この光応答はCRY2のそれと比べて感度が一桁低いと考えられる。CRY1は核と細胞質に局在するが、青色光に応答して存在量が減少するのは核局在CRY1であった。また、FADと相互作用をしないために光応答を喪失した変異型の核局在CRY1は青色光照射しても減少しなかった。したがって、核局在CRY1量の減少は青色光によって誘導されていると考えられる。核局在CRY1の青色光照射による減少は26Sプロテアソーム阻害剤MG132を処理することで抑制された。また、CRY1は青色光下で核内においてphotoregulatory protein kinase 1(PPK1)によるリン酸化を受け、ポリユビキチン化されることが判った。CRY2はCul4COP1/SPAs E3ユビキチンリガーゼによって分解されることが知られており、ppk123 三重変異体、spa134 三重変異体、cop1 変異体でCRY1のリン酸化量が少なく安定性が増していることが判った。これらの結果から、強光青色光照射によって励起された核局在CRY1は、PPKによってリン酸化され、リン酸化されたCRY1はE3ユビキチンリガーゼCul4COP1/SPAsによってユビキチン化され、26Sプロテアソームによって分解されると考えられる。CRY1は、CRY2と同じように、青色光照射によってフォトボディーを形成し、CRY1フォトボディーはCOP1と相互作用をすることが確認された。CRY1のフォトボディー形成や分解は、CRY調節タンパク質のBIC1、BIC2(blue-light inhibitor of cryptochromes)によって抑制された。以上の結果から、核局在CRY1は、CRY2と同じように、青色光に依存したリン酸化や分解を受けていると考えられる。

上海師範大学のYang らは、シロイヌナズナ黄化芽生えに強度や波長の異なる光を照射してCRY1量、CRY2量の変化を調査し、高フルエンス(100 µmol m-2s-1)の青色光(HBL)照射によってCRY1はリン酸化され分解されることを見出した。HBL照射はCRY1をユビキチン化し、26Sプロテアソーム経路による分解をもたらしており、この過程にはE3ユビキチンリガーゼのCOP1とLight-Response Bric-a-Brack/Tramtrack/Broad(LRB)が関与していた。また、CRY1は青色光に依存してBIC1と相互作用し、CRY1の二量体/オリゴマー形成を阻害することが確認された。そして、このBIC1によるオリゴマー形成阻害はCRY1のリン酸化と分解を抑制していた。以上の結果から、CRY1はCOP1、LRBs、BICsによって安定性が制御されており、CRY1は強青色光下で自身のシグナルを減衰させて光形態形成の最適化を行なっていると考えられる。

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