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論文)種子発芽におけるアブシジン酸とジャスモン酸のクロストーク

2020-12-28 06:52:49 | 読んだ論文備忘録

Molecular Mechanism Underlying the Synergetic Effect of Jasmonate on Abscisic Acid Signaling during Seed Germination in Arabidopsis
Pan et al.  Plant Cell (2020) 32:3846-3865.

doi:10.1105/tpc.19.00838

アブシジン酸(ABA)は、シロイヌナズナの種子発芽と発芽後の成長を抑制し、ジャスモン酸(JA)はABAの抑制機能を強める。しかしながら、ABAとJAのシグナル伝達経路間のクロストークの分子機構はほとんど解明されていない。中国 雲南大学のYu らは、JA受容体のF-boxタンパク質COI1の機能喪失変異体coi1 は種子発芽と発芽後成長におけるABA感受性が低下していること、JAシグナル伝達の抑制因子として作用するJAZタンパク質をコードする遺伝子の多重集積変異体(jazQjazD )はABA感受性が高いことを見出した。JAZ を恒常的に過剰発現させた形質転換体種子の発芽や芽生え子葉の緑化はABAの有無に関係なく野生型と同等だが、Jasドメインが欠失してJA非感受性となったJAZ-ΔJas を過剰発現させた形質転換体はABA非感受性となった。これらの結果から、JA経路は種子発芽におけるABAシグナル伝達に積極的に関与していると考えられる。JAZタンパク質はABAシグナル伝達を正に制御している転写因子ABSCISIC ACID INSENSITIVE3(ABI3)と物理的に相互作用し、乾燥種子はJAZ1JAZ5JAZ8 の転写産物が多く含まれていた。ABI3とABI5は種子発芽と芽生えの成長の際のABAシグナル伝達を制御しており、abi3 変異体、abi5 変異体はABAやJAアナログのコロナチン(COR)およびABAとCORの同時処理をしても野生型よりも発芽成長が早くなった。よって、JAによるABAシグナル伝達の活性化にはABI3、ABI5が関与していると考えられる。coi1 変異体やJAZ1-ΔJas 発現系統の種子休眠の程度は野生型と同等であることから、COI1/JAZによるJA経路自体は種子休眠に関与していないことが示唆される。JAZはABI3やABI5と直接相互作用をしてこれらの転写因子の転写活性化機能を抑制していることが確認された。coi1 変異体やJAZ1-ΔJas 発現系統はJAZタンパク質がABI3やABI5の転写活性化活性を抑制するために種子発芽でのABA感受性が低下しているが、ABI3 を過剰発現させることによってABA感受性が高まった。以上の結果から、JAはABI3/ABI5と相互作用をするJAZタンパク質を分解することでABAシグナルを高めていると考えられる。

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