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河合雅雄『森林がサルを生んだ・原罪の自然誌』(その6):「第10章」サル類の「なわばり制」は平和的!樹上から地上生活になり「なわばり制」消滅!ヒトの「なわばり制」は攻撃的だ!

2021-06-28 13:36:37 | 日記
※河合雅雄(1924-2021)『森林がサルを生んだ・原罪の自然誌』1977年(53歳)

第10章 ヒト、なわばりを復活させたもの(190-206頁)
(11)サル類は群れを安泰に維持する、つまり群れ同士の争いを避けるために「なわばり」を持つ!
「なわばり制」が「攻撃性と排他性」を中心とするという見解(R. アードレイ)は誤り!
K  劇作家ロバート・アードレイ(『アフリカ創世記:殺戮と闘争の人類史』1961年)は、サルからヒトへの進化においては、サル類の「攻撃性と排他性を中心とするなわばり制」が原動力となっているとする。かくて「闘争と殺戮の歴史」がヒトの進化と進歩をなしとげたと主張する。(198頁)
K-2  だが森に住むつまり樹上生活のサル類における「なわばりを持つ集団」は出会った場合、「対峙や転移行動」が普通で、「相手を傷つける行動」は少ない。サル類は群れを作るが、「群れを安泰に維持する」ため、つまり「群れ同士の争いを避ける」ために「なわばり」を持つ。(198-199頁)

(11)-2 「森林からサバンナへ進出した霊長類」は「地上生活」で「なわばり制を放棄した」!
K-3 「樹上生活」のサル類は「なわばり制」を持つが、「地上生活」のサル類は「なわばり制」を放棄した。「地上生活」のサル類は、少ない「水場」・「採食地」・「泊り場」(安全なねぐら)を共有せざるを得ず、「なわばり制」を放棄した。(202頁)
K-3-2 「ヒト化を促進させた重要な決め手」は「霊長類(※サル類)が森林の生活を捨て、サバンナへ進出した」ことにある。そして「森林からサバンナへ進出した霊長類」は「なわばり制を放棄した」。(203頁)

(11)-3 ヒトは狩猟採集社会では「なわばり」を持たない平和な生活を送った!牧畜農耕社会になって物の所有、土地所有、財の蓄積が生じ、再び強い「なわばり制」(Ex. 国家)が発生し、ヒトは殺戮や戦争を開始した!
K-4 「ヒトは狩猟生活をしている間は、なわばりを持たない平和な生活を送っていた。ところが牧畜農耕革命によって人間は再び強いなわばり制(Ex. 国家)を持つに至った。」(206頁)
K-4-2 牧畜農耕社会になって物の所有、土地所有、財の蓄積が生じると、再び強いなわばり制(Ex. 国家)が発生し、ヒトは殺戮や戦争を開始した。(206頁)
K-4-3  牧畜農耕革命後の、物質文化の進歩、所有概念の発生と強化、財の蓄積にともなう物欲と権力のとめどのない増幅作用が、殺戮・戦争を発生させた。かくてそれらは人間に「悪の深淵」をのぞかせ、「悪魔の所業」をプログラムさせるに至った。(206頁)

《感想》「なわばり制」は、もとは森に住むつまり樹上生活のサル類の「すみ分け」的、平和的なものだった。ところがヒトが復活させた強い「なわばり制」(Ex. 国家)は、殺戮や戦争を伴い、さらに物欲と権力のとめどのない増幅作用という「悪魔の所業」をもたらした。
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