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河合雅雄『森林がサルを生んだ・原罪の自然誌』(その3):「第4章」個性の伸長を獲得したサル類・人類の「文化」の基礎!「第5章」サル類におけるポピュレーションの自己調節!

2021-06-25 15:44:46 | 日記
※河合雅雄(1924-2021)『森林がサルを生んだ・原罪の自然誌』1977年(53歳)

第4章 遊動生活は個性化を強めた!(73-91頁)
(5)サル類の遊動生活&気ままな生活:移動は「群れ」に従うが、採食や休息は「個体」の自由!
E サル類は豊かな森で遊動生活をする。ここから個性が発達した。個性は一方で社会を崩壊させる契機となるが、他方で社会の内容を高度にする。(75頁)
E-2 森で暮らすサル類の群れは、決まった泊り場を持たない。地上で暮らすゴリラも、行き当りばったりの生活だ。(76-77頁)
E-2-2  サル類は生活のリズム(※規則性)を持たない。気ままに食べ、腹いっぱいになれば寝る。(Cf. ヒトにおいて、狩猟採集時代はおそらく放恣な生活だった。生活に決まったリズムが登場したのは農耕牧畜社会になってからだろう。)(78-79頁)
E-2-3 サル類は、群れからあまり制約を受けない。移動は群れに従うが、採食や休息は個体の自由だ。(79頁)
E-2-4  なぜサル類は遊動するのか?栄養的に色々な種類の食物(植物)を食べる必要があった。(80頁)栄養のバランスをとるためにサル類は遊動の生活様式をとる。Ex. ゴリラ。(85頁)

(5)-2 サル類は森林で「すみ分け」がほとんど必要でないから、嗜好によって自由に食物が選択でき、これは「主体」の確立の基盤のひとつとなった!
E-3 サル類は食物に対して好き嫌いを持ち、それに基づいて食物を選択している。Ex. ゴリラは甘いもののほか、苦みのあるものが好きだ。(86頁)
E-3-2 他の生物or動物が「すみ分け」=「食い分け」するのに対し、サル類は森林で「すみ分け」がほとんど必要ないから嗜好によって、自由に食物が選択できる。これは「主体」の確立の基盤のひとつとなった。(87頁)

(5)-3 「個性の伸長」を獲得したサルたち!個性の発達は人類社会でその極に達した!
E-4 豊かな森の中での樹上生活が基盤になって「個性の伸長」を獲得したサルたちは、高度な社会を作るための素地を与えられた。(89頁)
E-4-2 個性の発達は人類社会でその極に達した。個体関係の調整が必要となり、集団を統合するための秩序や制度が要求された。かくて人類は独自の社会制度や文化を創り上げてきた。そこでは集団が個人の欲求に優先された。こうして個性と社会の相克の人類の歴史が生まれた。(90頁)
E-4-3 個性は生きがいの源流であり、創造の源泉だが、英雄・王など権力者の強烈な個性が、欲望と結合すれば、多くの人を圧殺する「悪」が生まれる。(90頁)

第5章 文化を支える生物的基礎(93-111頁)
(6)「文化」は、(ア)社会の中で誰かによって作りだされること(発明)、(イ)他個体による学習(伝播)、(ウ)その行動型の継承と維持(伝統)によって成立する!
F (ア)社会の中で作り出され(自然のままでなく個体が発明する)(Ex. 砂を落とすためにサルがイモを洗う)、(イ)社会を構成するメンバーによって分有され(Ex. イモ洗いを他のサルたちも行うようになる)、(ウ)社会的習慣として社会に定着し伝承される(Ex. 生まれてくる子供はすべてイモ洗いを行う)生活様式が、「文化」である。(98頁)
F-2 つまり「文化」の成立には、(ア)社会の中で誰かによって作りだされること(発明)、(イ)他個体による学習(伝播)、(ウ)その行動型の継承と維持(伝統)が必要だ。(98頁)

(6)-2 サル類は人間と同じように「二次的に巣に坐っているもの」で、「母子の強いきずな」が母から子への行動の伝承を容易にしている!( Cf. 「文化」成立の要件:(イ)伝播(エ)伝統!)
F-3 アドルフ・ポルトマンは、哺乳類を「巣だつもの」(離巣性:生まれてすぐ独立して生活できる・巣を持たない、Ex. シカ、ウマ)と「巣に坐っているもの」(就巣性:巣を持つ・赤ん坊は目が見えず赤裸、Ex. ネズミ、ウサギ)に分類する。(99頁)
F-3-2 ポルトマンはサル類を「巣だつもの」に分類した。(99頁)
F-3-3 これに対し人間はどちらにも分類されず「二次的に巣に坐っているもの」とポルトマンは述べた。「人間はほとんど1年早すぎて誕生する」(ポルトマン)。(99-100頁)
F-3-4 だが河合雅雄氏は、サル類も人間と同じように「二次的に巣に坐っているもの」だと述べる。(100-101頁)
Ex. ニホンザル:80日目頃まで母乳のみで育つ。母からの独立は次の子が生まれた時で、生まれなければ2歳でも母親の乳をしゃぶるものがいる。
Ex. チンパンジー:生後半年まで母親に抱かれている。離乳は2-4歳、自力で長距離の移動をするのは4-5歳、母から離れ単独行動するのは7-8歳の思春期だ。
F-3-5 要するに、サル類は人間と同じように「二次的に巣に坐っているもの」で、「母子の強いきず」なが母から子への行動の伝承を容易にしている。(102-103頁)

(6)-3 サル類におけるポピュレーションの自己調節:(a)「子どもを1頭しか生まない」、(b)「子どもの成長速度が遅い」、(c)「妊娠期間」が長い、(d)雌は子どもを生み終わると死亡する者が多い、(e)「病気」による「幼児死亡率」が高い!
F-4 サル類は1回に「子どもを1頭しか生まない」し、また「子どもの成長速度が遅い」。(103頁)
F-4-2  サル類は生物経済学的に「個体数と食物量の関係」から見て、ポピュレーションの自己調節のために、「子どもを1頭しか生まない」また「子どもの成長速度が遅い」と考えられる。(103頁)
F-4-3  「出来るだけゆっくり成長」すれば、(a)「食物摂取量は体重に関係する」から集団としての食物摂取量が減るし、また(b)「性的成熟」が遅くなり「一生に産む子供の数」が少なくなり、ポピュレーションの増大を抑制できる。(105-107頁)また
F-4-4 「体重の重い」類人猿は「妊娠期間」・「授乳期間」が長く、生まれる個体数が少ない。(106-107頁)
F-4-5 「サル類の幼少期が長いこと」は、「病気」による「幼児死亡率」を高め、ポピュレーションの調節に役立つ。(109頁)
F-5 「サル類の雌は子どもを生み終わると、死亡する者が多い」。サルたちは「むだ食いの能無し」になると、さっさと死んでゆく。かくて生態系の効率が高まる。(107頁)

(6)-4 人類のポピュレーションの自己調節:「赤ん坊殺し」(まびき)と「姥捨て」というやむなき悪業!
F-6  サル類はポピュレーションの自己調節のいくつかの方法を編み出した。人間は、自然生態系から脱却するにしたがって、別の調節法を作り出さねばならなかった。それが「赤ん坊殺し」(まびき)と「姥捨て」だ。(Cf. なお日本では「姥捨て」は、話は多いが、実際に行われたことはないと言われる。)(108-109頁)
F-6-2  「赤ん坊殺し」(まびき)と「姥捨て」は、サル類におけるポピュレーションの自己調節を受け継いだ人類の「止むなき悪業」だ。
《感想》人類における農業・牧畜業の開始(紀元前1万年頃)と発展、その後、とりわけ西洋近代科学(医学)・技術の発展(特に産業革命以後)で、人類の人口は爆発的に増えた。紀元前7000-6000年約500-1000万人(この頃以降、農業・牧畜業の発展)→紀元元年約2-4億人→1650年約5億人→1800年約8-11億人→1900年約15-17億人→1950年約25億人→1970年約37億人→1990年約53億人→2010年約69億人→2020年78億人。これを見ると「サル類におけるポピュレーションの自己調節」を人類が受け継いだという議論は無意味だ。
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