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河合雅雄『森林がサルを生んだ・原罪の自然誌』(その4):「第6章」群れ型社会での文化伝播と文化の呪縛性!「第7章」人類の道具使用は「武器」でなく、まず「食物獲得」から由来する!

2021-06-26 22:18:09 | 日記
※河合雅雄(1924-2021)『森林がサルを生んだ・原罪の自然誌』1977年(53歳)

第6章 文化の発生(113-128頁)
(7)「群れ型社会」では文化(Ex. イモ洗い文化)の伝播がなされる!
G 社会型には、「単独生活社会」(Ex. イタチ、ヒョウ、オランウータン)、「ペア型社会」(Ex. ナキウサギ)、「群れ型社会」(複数の雄雌の「複雑群」、1頭の雄に数頭の雌と子どもの「単雄群」、「ワンメール・ユニット」が複数集まった特殊な社会型)が区別できる。(115頁)
G-2 「単独生活社会」、「ペア型社会」(子どもは成長すると離脱)は「文化」の維持・継承が難しい。「文化」を持つことが困難。(116頁)
G-3 「群れ型社会」では新しく獲得された行動つまり「文化」(Ex. イモ洗い文化)の伝播がなされる。母子、さらに兄弟、仲間関係のチャンネルによって伝播する。(117頁)とりわけ血縁が重要だ。(119頁)Ex. ゴリラが毒性の植物を食べないのは、子どもが「母親が食べるもの」を見て学習するからだ。(120頁)

(7)-2 人間社会では「言語」の使用によって「食物タブー」が形成された!
G-4 人間社会では、「ある食物を食べてよいとか食べていけない」ということは「言語」で伝えることができる。かくて食物に関する「タブー」が形成される。(124頁)
G-4-2 「食物タブー」については「宗教」が最も強力なタブーを強いる。Ex. イスラム教は「豚」を食べない。
Ex. 「断食」:エチオピアのキリスト教では「人はパンだけで生きるものではない」とのマタイ伝の言葉に従い1年間に240日、断食(1日1度豆と水のみ食べる)する。(125頁)

(7)-3 「文化の呪縛性」(Ex. 屋久島のニホンザルの群れの死)! 
G-4-3 「文化の呪縛性」:犬山市の大平山に、屋久島のニホンザルの群れが離された。だが植生が全く違うのに、サルたちは「屋久島の植物にもとづく食文化」に呪縛され、何を食べてよいかわからず、雪が降った時、飢えと寒さで、ばたばた死んだ。(126-127頁)

第7章 道具の使用と製作(129-150頁)
(8)「自分の身体以外の物質」を使って生活の用にあてるだけでは「道具使用」でない!(Cf. 「道具」は「生得的」習性でなく、「文化」現象だ!)
H 「人類とは道具を使う動物である」(Homo faber、道具人、ホモ・ファーベル)は誤りであり、チンパンジーも道具使用と製作を行う。もちろん「ヒトから道具をとりあげてしまえばヒトでなくなる。」(Cf. ホモ・サピエンス。)(131頁)
H-2 エジプトハゲワシは「石」をダチョウの卵に落し堅い殻を割り、ラッコは「石」で貝を叩き割る。だがこれは「道具使用」だろうか?「外界にある物質を材料に使い生活に役立てる」ことを「道具使用」と言ってよいのか?(132-133頁)
H-2-2 ハタオリドリは「木の枝や草を使って巣を作る」。白アリは「土と唾液」でアリ塚を作る。「木の枝や草」「土」は「道具」か?「道具」ではない。Cf. 人間も「土と水」で土壁の家を作る。だが「土と水」は「道具」でない。(132-133頁)
H-2-3 「自分の身体以外の物質」を使って生活の用にあてるだけでは「道具使用」でない。それでは動物界では「道具使用」は普通のことになってしまう。(132-133頁)

(8)-2 「生得的」習性に基づき使用される「自分の身体以外の物質」は「道具」でない!「道具」は「シンボル化」の過程を前提し、かつ「文化」現象でなければならない!
H-3  エジプトハゲワシが「石」をダチョウの卵に落し堅い殻を割ること、また、ラッコが「石」で貝を叩き割ることは、どの個体にも備わっている「生得的」習性かもしれない。(134頁)
H-4 エジプトハゲワシにとって「石」が「道具」と呼ばれるためには、(a)「シンボル化」の過程が含まれねばならない。「卵を割る」という嘴が持っている意味を抽出し、その意味を「石」に付与するという「シンボル化」の過程を含むことによって、「自分の身体以外の物質」(「石」)は「道具」となる。(135頁)
H-4-2 また「石」が「道具」と呼ばれるためには、(b)「石」の使用が、「文化」現象でなければならない。つまり(「シンボル化」の過程を遂行した上で)最初ある一羽がこの行動(「石」で卵を割る)を「発明」し、その行動を見た他の個体が「学習」し(つまり他の個体に「伝播」し)、かつ世代を越えて「伝承」されねばならない。(135頁)
《感想》エジプトハゲワシが「石」をダチョウの卵に落し堅い殻を割ること、また、ラッコが「石」で貝を叩き割ることは、「生得的」習性か、「文化」現象か、河合雅雄氏は、結論を出していない。

(8)-3 「武器」としての道具使用は霊長類で極めて貧困だ!「人類の道具使用」は「食物獲得」に基盤を置いたはずだ!
H-5  霊長類は「道具」を敵対行動で使う。言わば「武器」としての道具の使用だ。ゴリラ、チンパンジー、ホエザルなどは、外敵に対し「棒」を振り回し、「木の枝」を投げ、「石」を蹴飛ばす。(136頁)
H-5-2 だが彼らが「武器」を使用することはめったにない。「武器」としての道具使用は霊長類でも極めて貧困だ。初発的な「武器文化」を形成するまでに至らない。(138頁)
H-5-3 「人類の道具使用」が「武器使用」から始まったとは考えにくい。「人類の道具使用」は「食物獲得」に基盤を置いたはずだ。(138頁)

(8)-4 「人類の道具使用」は「食物獲得」に基盤を置く!アリ釣りの「釣り棒」!アブラヤシの実の殻を割るための「叩き台の石」と「握り石」! 「人類の道具使用」が「武器使用」から始まったとは考えにくい!
H-6 チンパンジーは食物採集として、アリの巣穴に「釣り棒」を差し込み、アリを釣る。チンパンジーはアリ釣りをするため「釣り棒」を製作する。木の蔓など材料を「選択」し、さらに歯や手を使って「加工」する。(138-139頁)
H-6-2 チンパンジーは「今日はアリ釣りをしよう」と思い立つと、「釣り棒」を作り、それを持ってアリ塚まで出かけていく。しかも釣り棒は数本用意されている。意図的計画的な道具使用だ。(140頁)
H-6-3 またチンパンジーは、アブラヤシの実の殻を割るために、「叩き台の石」の上に実を載せて「握り石」をで叩き割り中の胚珠を食べる。「叩き台の石」と「握り石」は何度も使うので、この二つはいつもアブラヤシの木の下に置いてある。(140-141頁)また「叩き台の石」と「握り石」は身のまわりにある石を拾って来たものだ。(144頁)

(8)-5 チンパンジーの道具使用や製作は特定のチンパンジーの集団が発明したものだ!つまり文化現象だ!
H-7 アリ釣りの「釣り棒」や、アブラヤシの実の殻を割るための「叩き台の石」と「握り石」は、全てのチンパンジーに見られるものでない。これらは特定の集団にのみ見られる。つまりチンパンジーの道具使用や製作は、特定のチンパンジーの集団に発生した、その集団が発明したものだ。(142頁)
H-7-2 そして「シロアリ釣り」「アブラヤシの種子割り行動」は母親から子に伝播し、世代を越えて伝承される。チンパンジーの道具使用・製作は文化現象だ。(142頁)(Cf. 発明・伝播・伝承、135頁)

(8)-6「道具が道具を作る」(道具の2次製作)という段階に至って「道具文化の世界が確立される」と言える!「道具の2次製作」の有る無しが人類と霊長類(※サル類)を区別する!
H-8 「道具の1次製作」:身体要素を使って道具を作ること。チンパンジーの道具製作過程はすべて歯や手で作られている。(Ex. アリ釣りの「釣り棒」。)(142-143頁)
H-8-2 「道具の2次製作」:道具を使って道具を作る。(Ex. 棒の先を石で削って尖らす。)チンパンジーでは「道具の2次製作」観察されていない。「道具の2次製作」の有る無しが、人類と霊長類(※サル類)を区別する大きな決め手の一つだ。「道具が道具を作る」という段階に至って、「道具文化の世界が確立される」と言える。(143頁)

(8)-7 原初人類にも「無加工道具」や「1次製作段階の道具」使用の時代があったはずだ!
H-9 人類学者や考古学者は「加工した証拠」(2次製作された道具)がないと道具と認めない。(144頁)
H-9-2 これに対して霊長類学者は、原初人類は「身のまわりにある棒や石を拾って道具に使い」つまり「加工しない物体を道具として使い」、また一部は「1次製作した道具」を使ったと考える。(144頁)
H-9-2-2 原初人類にも「無加工道具」や「1次製作段階の道具」使用の時代があったはずだ。Ex. 「小さな尖った石を拾い、皮の脂肪とりに使う」。(以上、河合雅雄氏の見解!)(145頁)

(8)-8 チンパンジーの道具使用・製作は「食物獲得」の手段として発達した!ただし「肉食」の比率が極めて低くチンパンジーは「狩り」に際して「道具」を使わない!かくて外敵の防御や攻撃のための「武器」もほとんど使わない!
H-10 チンパンジーの道具使用・製作は「食物獲得」の手段として発達してきた。チンパンジーは外敵の防御や攻撃のためには、つまり「武器」としては道具をほとんど使わない。(145-146頁)
H-10-2 食物獲得について、「ヒト化」の問題を考える上で最も重要な出来事は「狩猟」だ。霊長類(※サル類)は「植物食」が主なのに(動物食は昆虫・卵に限られる)、どうしてヒトだけが「肉食」をするのか、長年の謎であった。(146頁)
H-10-3 だが実は霊長類も「肉食」をする。今日ではチンパンジーの「肉食」の報告が相次いでなされている。(146頁)
H-10-3-2 チンパンジーは狩りをする。1頭でイノシシやレイヨウの子どもを捕るときもあれば、数頭で協同して捕えることもしばしばだ。だが「狩りに道具を使わない」。(146頁)
H-10-3-3 チンパンジーは食物の獲得(肉食)のために狩りをしたというより、遊びの傾向が強い。(「狩りによる肉食」の比率は極めて低い。)(146-147頁)
H-10-3-4 チンパンジーが「狩りに際して道具を使わない」のは、「肉食」が彼らの食物生活の中に占める割合が少ないためだ。(数パーセント以下だ。)(146頁)
H-11 「狩猟と肉食」は雄において圧倒的によく見られる。「アリ釣り」は雌の方が雄より圧倒的に多い。(これは雄と雌の狩猟と採集の分業の問題に強くかかわる。)(147頁)

(8)-9 チンパンジーには「脳味噌嗜好」がある!うまいものを食べたいとの嗜好品への欲求が狩り・肉食の動因となった!
H-12 現在の狩猟民であるボツアナのブッシュマンは、食物摂取量の80%が植物、20%が狩猟による動植物だ。動植物は「御馳走」であり「贅沢品」だ。つまり「嗜好品」だ。「うまいものを食べたい」との嗜好品への欲求が狩猟の動因だったかもしれない。(148頁)
H-12-2  他方、チンパンジーには「脳味噌嗜好」がある。かくて、「うまいものを食べたい」との嗜好品への欲求が狩り・肉食の動因となったと言える。(148頁)
(a)チンパンジーがヒヒや他のサルを狩る場合、一番の好物は脳らしい。
(b)チンパンジーは大後頭孔を歯でかじって大きく開け、指や棒を突っこんで食べたり、葉を入れて丹念にふきとって食べたりする。
H-12-3 サル類の食物は非常に種類数が多く、融通性が強い。食物の選択は「味による嗜好性」が大きいと思われる。チンパンジーほどのサルになると、「うまい物を食べたい」という欲求がかなり強いと考えられる。(148頁)

(8)-10 原初人類において「動物を攻撃するための武器」(狩りのための道具)は「自分たちの仲間(※人間)を攻撃する武器」となった!
H-13 原初人類においても「おいしい物を食べたい」という欲求が、彼らを「狩り」に向かわせたと考えうる。(148頁)(※これはただし「採集」によって得られる食物が極めて多い場合だ。)
《感想》河合雅雄氏は、熱帯雨林に住むチンパンジーにおいて「狩猟」の比率が低いので、原初人類においても「狩猟」の比率が低いと考えているが、この点は、何とも言えない。原初人類が「採集によって得られる食物が少ない北方」で住む場合は、「狩猟」の比率が高まるはずだ。単に「おいしい物を食べたい」という欲求が、彼らを「狩り」に向かわせるわけでない。
H-13-2  「狩猟」が生計活動の中に組み込まれると「狩り」のために道具を使うようになる。この道具は「動物を攻撃するための武器」だ。原初人類はこうして「武器のもつ攻撃力・破壊力」を知る。(148-149頁)
H-13-3  そして「動物を攻撃するための武器」が「自分たちの仲間(※人間)を攻撃する武器」となった。(149頁)
H-13-4  武器は、人間同士の「闘争」から生まれたのでなく、元来は「食物獲得の手段」(「狩り」のための道具)に由来すると言える。(※河合雅雄氏の見解!)(149頁)
H-13-5 いったん武器の持つ攻撃力が認識されると、「自分たちの仲間(※人間)を攻撃する武器」は、常に「高能率」を目指す技術(「道具の2次製作」の体系)の自己運動のうちで、ますます「殺戮」の効率を高める。(149頁)
H-13-6 「自分たちの仲間(※人間)を攻撃する武器」の出現は「悪の世界」の基盤だ。武器は「殺戮」の効率を高めていく。また他の人間を「殺戮することに快感を覚える」という「残虐性の世界」をも出現させる。(149頁)
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