※映画『ハウンター』Haunter(2013年、加仏合作)
(1)
父、母、リサ、弟、4人家族の写真。ひどい霧の日。反抗的なリサ。洗濯すると服が1着、毎日なくなる。朝食はパンケーキ。毎日、16歳の前日。明日が来ない。リサが反抗的なのは、自分の周囲で起きる出来事が、昨日と全く同じであることに気づいたからだ。しかも霧に「閉じ込められて、出られない」とリサは苛立つ。だが、リサを、父・母・弟は理解しない。
《感想1》リサは狂っているのか?父・母・弟は、リサを病気と思っている。あるいは反抗期と思っている。
《感想1-2》それでいて父・母・弟は、「同じ日が繰り返され続けていること」に気付きもしない。しかも彼らは、家に閉じ込められ、外が霧で何も見えないことも疑問に思わない。彼らの方が狂っているのかもしれない。
(2)
翌日も霧。翌日になったのに誕生日が来ない。車は今日も故障しており、父が今日も、昨日と同じように修理している。またリサは、母に命じられ今朝も同じように洗濯機をかける。夜、部屋で奇妙な音がした。リサに無言電話がかかってきた。「リサ」と呼ぶ声がする。また服がなくなる。また同じ一日。リサが泣く。真夜中。誰かが部屋の外にいる。それは1:14amだった。
《感想2》リサは、自分が暮らす家が呪われているのではないかと考えて調べはじめる。(Cf. 映画の題名“Haunter”は《家に取り付く幽霊》の意味だ!Cf. 幽霊屋敷は“Haunted Mansion”だ。)
(3)
次の朝、リサが地下室で秘密のドアを見つける。その夜、2階で音がした。物置に昔のビデオがあった。そのビデオは、リサの家族4人が、この家に引っ越してきた日のビデオだった。新しい我が家。ところがビデオの中で、その家の窓に「誰か」が写っていることにリサは気づく。
《感想3》リサはこの家に「幽霊」が住んでいるのではないかと、ますます疑う。
(4)
真夜中、リサの部屋。1:14am、死んだ女の子の霊が来る。ドアの外で音がする。その日、電話会社の男(作業員)が来るが、目が髑髏。男が、「いつから気づいてたんだ」とリサに聞く。「霊とコンタクトするな」とリサに警告した。
《感想4》電話会社の男(作業員)は、この世の者でないか、あるいは、あの世(死の世界)からの使者のようにリサに思われた。リサは恐怖する。
(5)
翌朝、いつもタバコを吸わない父親が、タバコを吸っていた。リサは驚く。リサは父親に止められたのに、霧の中、出かける。霧の中に、もうひとつの別の父親と家が現れる。驚いて元の家にリサ、帰る。
《感想5》時間が行ったり来たりして、過去、煙草を吸っていた父が、現在に貫入してきたとも思われるが、実は後でわかるが、タバコを吸わない父親がタバコを吸っていたのは、幽霊(Haunter)が父親に乗り移っていたのだった。
(5)-2
その日の夜、リサは再び霊に出会う。その時、リサはふと気づく。「生きてるのはあなたで、死んでるのは私」とリサが霊に言う。「なぜ私が死んだかわからない」とリサ。
《感想5-2》なぜかリサは「自分がすでに死んでいる」と気づく。リサが霊(幽霊)と思って出会うその「幽霊オリビア」が、実は「現実の人間」なのだ。リサが「幽霊」だ。
(6)
次の日の夜、リサのベッドに誰かがいる。それはもう一人のリサだった。自分であるリサと、もう一人のリサは同一化し、リサの父・母がこれまでと別人となり(※また後でわかるが弟でなく、妹がいる)、リサは「オリビア」と呼ばれる。
《感想6》リサは幽霊だ。リサの家にはすでに現実の世界の4人家族が移り住んできている。その女の子が「オリビア」だ。幽霊のリサが「オリビア」に乗り移っているが、オリビアの父親には、リサでなく「オリビア」本人に見えている。だからリサは「オリビア」と呼ばれる。
(6)-2
翌朝、リサの部屋の床下に、隠された部屋があることをリサは発見する。(※このリサは実は「死んでいる」、つまり幽霊だ。)リサはその部屋でスクラップブックを発見する。1953年、消えた少女フランシス・ニコルズの記事。1954年、また一人行方不明。さらに10代の少女、行方不明。さらにもう一人、もう一人と・・・・約20人が行方不明になっている。しかし1972年、迷宮入り。さてその後、リサは、ある鍵を見つける。
《感想6-2》約20名の行方不明の少女たち。誘拐されおそらく、この家で殺された。今は1985年。少女の誘拐事件は1953年から1972年、毎年ほぼ1名ずつ起きている。
(7)
リサは、見つけた鍵で秘密の地下室に入る。有毒のエーテルの瓶がある。1:14amで止まった古い腕時計を発見する。リサは火の中で焼かれる女の子フランシス・ニコルズの幻を見る。(※その時計はフランシス・ニコルズのものだ。リサのもとに1:14amにやって来るのはフランシス・ニコルズの霊だった。)
《感想7》リサは、この家で約20名の行方不明の少女たちが、殺されたと確信する。彼女らはエーテルで気絶させられ、生きたまま焼かれたのだ。
(8)
翌朝、リサに電話がかかってきて電話会社の男(幽霊)から「出しゃばりはやめろ。ここは俺の家だ。ドアを開けるな」と言われる。その直後、食事室に行くと、席に見知らぬ男の子エドガー(※実は《家に憑りつく幽霊》=《家の元の所有者》の若い姿)が座っている。しかし消える。(父・母・弟には見えない。)その男の子エドガーが突然、また現れる。「お前にしか見えない」とリサに言う。その直後、父・母・弟のロビーが食卓に座ったまま死ぬ。やがて時間が経ち、彼ら全員が朽ちてぼろぼろになり、骨になり風化する。
《感想8》電話会社の男は、実は家に取り付く幽霊。エドガーはその若い頃の姿。父・母・弟そしてリサはこの家に引っ越してきたので、家の主である幽霊に殺されたのだ。
(9)
リサが泣く。だが過去の死の幻が消え、時間がもとにもどり、父・母・弟がいつも通り食卓にいる。3人がリサに「大丈夫か」と尋ねる。洗面所の鏡に女の子オリビア(※今、この家に住む女の子)が写る。(その子は鏡から抜け出し、リサと話し、また鏡の中に戻る。)リサは、隠された部屋でブルース(父)、キャロル(母)、リサ(自分)、ロバート(弟)の遺体が発見された1985年の新聞記事を発見する。4人は一酸化炭素中毒で死んだ。
《感想9》リサは死の世界にいる。オリビアは現実の世界(生者の世界)にいる。一瞬、リサの死者の世界とオリビアの生者の世界が交錯した。
《感想9-2》リサは、家族ともども殺されたのだとわかる。実は、リサの誕生日の前日に4人とも殺された。4人は、死んだ日から日付けが永遠に進まない。
(10)
突然、死者リサが生者オリビアになる。(生者オリビアに乗り移る)違う父親。違う母親。リサは、気を失い倒れる。リサは元のリサに戻る。元の父・母に戻る。「明日はリサの誕生日!」と父が言う。リサは、オリビアを探す。弟ロビーが「エドガーと遊んでいる」(屋根裏部屋)と携帯電話で連絡あり。リサが地下室に行くと、そこは骸骨だらけだった。
《感想10》死者の世界のリサと生者の世界のオリビアの交錯。死者の世界で、リサは生者の世界のオリビアを探し、死者の世界で弟ロビーが、エドガー(実は《家に憑りつく幽霊》=《家の元の所有者》の若い姿)と遊ぶ。家の地下室には殺された約20人の少女たちの骸骨があった!
(11)
リサがガレージに行くと、そこには、ガレージに閉じ込められていたフランシス・ニコルズ(1953年、最初に誘拐された女の子、ただし死者)がいて外に出ようとしていた。「外には何もない」とリサが言った。(※ここは死者の世界で、家の外の生者の世界に行けない。)「家に帰らないと」とニコルズが言う。「あなたは1953年に、すでに死んでる。今は1985年!もうずっと長い時間が経った」とリサが言う。「誘拐した女の子たちを、あいつ=《家に憑りつく幽霊》が地下室で殺して焼いた。」「私があなたの指輪に触ったら、あなたがよみがえった」とリサが言った。「あいつは怪物よ」とリサ。
《感想11》死者のリサと、同じく死者のニコルズ、二人の会話だ。生者からすれば、奇妙な会話!実は、この映画に、生者は登場していない。(ビデオの画面に映った生前のリサの家族4人のみが生者だ。)
(12)
リサは突然叫び気を失う。気づくと、ニコルズは消え、いつもの母がいる。「みんなガレージで死んだ。パパが怪物だ!」とリサが言う。「私たちはみんな死んで、ここは現実の世界でない」とリサ。弟のロビーが「今朝、それを知った」と言う。「死んだ夜にかけていた眼鏡が、机の下にあったのを発見し、自分が死んでいることを知った」とロビーが言った。「ゲームの迷路と同じようにこの家にずっといる、そうエドガー(《家に憑りつく幽霊》の少年時代の姿)が言った」とロビー。
《感想12》実は、リサの家族4人が死んだ時、《家に憑りつく幽霊》=Haunterがリサの父親に乗り移り、エーテルで母・リサ・弟ロビーを眠らせ、車内に乗せ、ガレージで車のエンジンをかけ一酸化炭素中毒で殺した。そして父親自身も死んだ。
(13)
リサ(死者)がクラリネットを引くと、リサは1953年にすでに死んだ別の女の子(フランシス・ニコルズ)と入れ替わる。リサは、その死んだ女の子の家、部屋にいて、その女の子の服装になる。フランシス・ニコルズのメッセージがパソコンにあった。リサはそれを再生する。そのメッセージが言った。「リサの家は、その前、エドガー・マリンズ(《家に憑りつく幽霊》=Haunter)の家だった。その男は何人もの少女を殺し1983年に死んだ。あなたは1985年に死んでる。」
《感想13》《家に憑りつく幽霊》は1983年に死んでいた。その後に、リサの家族が引っ越してきた。それが気に入らず、その《家に憑りつく幽霊》がリサの父親に乗り移り、リサの家族4人を1985年に殺した。
(14)
リサが気づくと、リサの本来の父親でない(別の)父親が怒っている。それはオリビアの父親だ。リサはオリビアになって居る。妹エミリーが「怖い」と言う。(別の)母アンが困っている。突然、(別の)父親と入れ替わって、エドガー・マリンズ=《家に憑りつく幽霊》が出現する。リサが逃げる。「幽霊は住んでいる家を離れない」とエドガーが言う。リサは気を失う。
《感想14》リサたちが死んだあと、オリビアの家族(父・母アン・妹エミリー)が引っ越してきて、この家に住んでいる。幽霊のリサが、オリビアに乗り移る。
(15)
リサは元の家のベッドで目が覚める。そこにはいつもの元の母がいた。そして元の母が言った。「わたしにもわかったの。」「パパこそ殺人鬼だった。そして逃げようとしたけど、うまくいかなかった。逃げるために、あなたの服を毎日こうしてトランクに入れていたの!」
《感想15》1985年に父親に殺されるとき、父親が《家に憑りつく幽霊》に乗り移られていることに、リサの母は気づいていたが、結局、一酸化中毒死させられた。
(16)
リサが父親に真相を問いただす。エンジンの始動に使うスパークプラグを父親は隠していた。それを父親が、隠し場所から取り出す。エンジンに戻す。エンジンをかける。こうして父親は何があったかを思い出した。「エーテルをお前に嗅がせた。ロビー(弟)とママにも嗅がせた。3人を車に運んだ。エンジンをかけ4人全員、一酸化中毒死した。パパは、ほかの奴=《家に憑りつく幽霊》に操つられていた。」
《感想16》死者の世界の内で、死者のリサが、死者の父親に真相を問いただしている。奇妙な場面だ。彼らは生者でない。
(17)
今、リサの家族全員がそろって居る。その時、家が揺れ始める。4人が外に出ようとする。弟ロビーが霧の中の太陽に向かって走る。母キャロルが追う。二人を、さらに父が追う。「行こう。大丈夫だ」と父がリサを誘う。「愛してる」とリサは行かずに扉を閉める。
《感想17》父・母・弟ロビーは、家の呪縛から解放された。だがリサは家から去らない。「今の住人であるオリビア一家を救いたい」と、死者のリサは思ったからだ。
(18)
真夜中1:14am、時計が止まる。リサは、少年エドガーが家族二人(父と兄)を殺すのを見る。(※これは過去の幻だ!)「私の家から出て行け」と少年エドガー=《家に憑りつく幽霊》がリサに言った。少年エドガーは、中年の電話会社の男(エドガー・マリンズ)に変化する。「コレクションを手に入れた」と男。「オリビア!」とリサは呼ぶ。
《感想18》すべては死者の世界の出来事。エドガーは《家に憑りつく幽霊》(電話会社の男)の若い頃の姿。死者の世界で、時間は戻ったり進んだり自由に流れる。今や、《家に憑りつく幽霊》は新たな居住者オリビアたち4人の家族を殺そうと考えている。
《感想18-2》今《家に憑りつく幽霊》は、かつて生者=少年エドガーであった時から、狂った殺人鬼だった。家族2人を殺し、その後少女たち約20人を殺し、さらにリサの家族4人を殺した。今さらにオリビアの家族4人を殺そうとしている。リサはオリビアを救いたい。
(19)
死者であるリサは死んだ女の子たちの霊を呼び出す。「力を合わせてあの男を地獄に送るのよ!」と訴える。男=《家に憑りつく幽霊》によって、リサ、エーテルで気を失わせられる。(※死者がエーテルで気を失うのは不思議な気もするが・・・・)生者のオリビアも男に捕まる。危機一髪。だが約20人の霊たちがよみがえる。男=《家に憑りつく幽霊》は破壊され・破滅する。
《感想19》死者リサ、生者オリビア、約20の死者が、《家に憑りつく幽霊》と戦う。死者生者が混在する幻想世界の戦いだ。
(20)
生者オリビアの家族4人が助かる。そして、死者リサに誕生日が来る。再びリサの家族4人が再会した。家の外にはもはや霧はなく、輝く光だけがあった。(※だが実は4人はすでに死んでいる。)
《感想20》30人近い死者たちの霊は、今や呪われた死者の世界を去り、また生者の世界に幽霊として出現することもやめ、天上に至る。(※仏教的に言えば、「成仏」した。)